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WBCの広告的価値とは? 「視聴率40%超」の裏側を紐解く

デジタルインテリジェンスの戸村です。
WBCが連日話題を集めていますね。本日のメキシコ戦で劇的なサヨナラ勝ちを収め、決勝に駒を進めた侍ジャパンへの注目は一層高まっています。
 
侍ジャパンの活躍とあわせて話題を集めているのが「視聴率」です。テレビやネットニュースで「視聴率40%超!」なんていうニュースを見た人も多いと思います。
 
では、WBCの広告的価値はいったいどうなのでしょう。
 
今回は、WBCの視聴率データを分析し、その広告的価値を考えてみたいと思います。

WBC第1次ラウンドの日本戦の視聴率は?

まず、第1次ラウンドの日本戦4試合の「世帯視聴率」を確認していきましょう。

初戦の中国戦以降、日本代表の連勝もあいまって視聴率は右肩上がりに推移しています。ただし、初戦の中国戦は木曜日であり、第2戦以降は週末だったことも影響していると考えられます(マスコミが使うビデオリサーチ社調べの世帯視聴率では「40%超え」という報道もありましたが、数字はリサーチパネル構成の違いにもよるため、ここではその違いには触れません)。
 
なお、多くの方が勘違いしていますが、「世帯視聴率」とは「100人中何%の人がその番組を見ていたか」を表す数字ではありません。ある番組の総放送時間に対して、番組が視聴された総時間のシェアを表したものです。
 
そのため、中国戦とオーストラリア戦を比較した場合、オーストリア戦のほうが約3%多くの人に見られたというわけではないのです。正しくは、「約3%、総視聴時間が増えた」ということになります。

前回大会と比べて世帯視聴率は2~3倍に

ここで、2017年の前回大会の世帯視聴率も振り返ってみます。

初日は3月7日(火)から始まり、日曜を迎えるオランダ戦まで順調に視聴率は伸びています。一方で、2023年大会と比較すると2~3倍近くの差が生まれています。
 
これは、大谷選手、ヌートバー選手などのスター選手の存在が大きいでしょう。また、昨年開催されたサッカーワールドカップにおける日本代表の活躍も、同じ“代表戦”への期待感を高め、従来の野球ファン以外の層も巻き取ったはずです。

WBCのメイン視聴者は50代、60代以上

 
では、次に「個人視聴率」を見ていきます。個人視聴率とは、調査世帯に住む一人ひとりにスポットを当てた視聴率です。
 
下の表は、男女10歳刻みで比較した、初日の中国戦の個人視聴率です。中国戦の世帯視聴率は27%でしたが、個人視聴率の平均は15.1%で、この平均を上回るのは男女共に50代以上です。また、もっとも高い視聴率を出しているのが60代以上となります。また、平日ということもあり、男性30〜40代は女性を下回ります。

では、平日と比較して在宅率の高い週末の試合(チェコ戦)を見てみましょう。
 
ここでは、30代以外ではすべて男性のほうが高くなっています。中国戦と比較しても概ね2ポイント以上伸び、(連勝という結果の影響もあるとは思いますが)週末にかけては男性比率が高まっています。

ここでも、50代、60代以上の方の視聴率が群を抜いて高いことがわかります。若年層のテレビ離れや在宅率の低さなども関係しているでしょうが、それでも顕著な結果です。

WBCの広告的価値は?

これらのデータを分析してわかることは、WBCの広告的価値は数字以上に弱かったのではないか、ということです。
 
世帯視聴率は非常に高い数値を出していますが、個人視聴率を紐解くと、多くの企業にとってのマーケティング対象から外れてしまう50・60代以上がメイン視聴者だったからです。
 
もちろんそこを狙っている業種や、他ステークホルダー(学生に対する企業価値など)に対するプレゼンスを上げる意図であれば、最高のマーケティングの機会だったと思います。
 
しかし、やはりマスマーケティングの目的は「未来」に向けた投資であり課題解決であることだと思います。その対象は20~40代になることが多いものです。それを踏まえると、(もちろん出稿費はわかりませんが)視聴率の高さの割に、広告的価値は薄かった可能性があります。
 
ただし、今回はWBCで放映されるCM枠として評価したものであり、WBCがコンテンツとしてどのような価値があったのかについてはまた次回でお話ししたいと思います。


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