「自社のバリュープロポジションは何か?」を考える際に、絶対に忘れてはいけないこと【広告・マーケティング・戦略】
バリュープロポジションとは?
経験上、「戦略」という言葉の解釈は人によって違うと感じることが多い。もちろんフレームワークなどの戦略の作り方には様々なアプローチがあって良いと思う。ただし、私は基本的に戦略には次の3パターンしかないと考える。
● 差別化(他者にはないものを充足する)
● 中立化(他者がもっている差別化要素を薄める)
● 生産性向上(自社の生産性をスピードとコストで効率を上げる)
多くの場合、まず成果が一番大きいと考えられる「差別化」戦略で考え出すことが多いだろう。
この点、昨今注目されているのが「バリュープロポジション」という考え方だ。簡単に言えば、顧客に対し、自社商品・サービスが提供できる独自の価値のことである。競合他社が充足していないポジションを市場としてプロットするという考え方であり、ここには機能的価値だけでなく、体験価値も含まれる。
顧客は機能価値を求める時代から、体験価値を求める時代に変わってきている。その背景から、自社製品・サービスは顧客に対してどのような体験(バリュー)を提供するのかでコミュニケーションする必要が出てきた。
「ニーズ」ではなく「インサイト」で考える時代へ
では、自社製品・サービスのバリュープロポジションとは何か?と考えるとしよう。その際、このスタート地点がまず間違っていないか?を問うことを強くおすすめしたい。
そのとき、下の絵にあるような氷山の絵を思い浮かべてほしい。
氷山を市場に見立てたとするならば、海面上の氷山は「ニーズ」である。大体の人がすでにこのニーズは言語化できており、コモディティ化(一般化)する傾向が強い。
しかし、多くの企業はここをスタート地点に、顧客とのコミュニケーション戦略を考えがちだ。その結果、コモディティ化した商品の認知スコアを高めようとしたり、ブランドリフトしたりすることに躍起になってしまう。
一方、海面下の氷山は、「インサイト(人を動かす隠れた心理)」である。まだ多くの人が言語化できておらず、デプスインタビューなどで傾聴したとしても簡単には表出化しない欲求だ。良いマーケターというのはこのニーズに疑いを持ち、インサイトはなんであるかを探し出す。
体験価値とは、このインサイトに気づき、その琴線に触れる体験に“言い換えて”提供をすることである。そうすることで、売り手の論理での押し売りは減り、買い手の論理でのコミュニケーションが可能となる。
従来のファネル型マーケティングによる顧客体験では通用しなくなってきている業界は多い。だからこそ、顧客や世の中の文脈をいかに読み取っていくか、いけるかはマーケターにとって非常に大事になってきている。端的にまとめるなら、下図のような変化が求められているのである。
「顧客」ではなく、「対象者」の動向をよく知り、深く考える
インサイトの探索には、顧客の未充足や不満などを洗い出していく必要がある。しかし、自社のカテゴリなどに限定して調査をしても発見することはなかなか難しい。
ここで重要なのは、いったん「顧客」という視点から離れ、「対象者全般の人間」を広く見にいくという視点である。
これは一長一短にできるものではない。まず対象をよく「知ること」。そしてそこからできるだけ深く「考えること」。この2つが大事だと考えている。
たとえば、いわゆる「Z世代」と言われる若者たちのインサイトを探索するとしよう。下図は、私が彼らの心理プロセスをヒアリングによって整理したものである。
ここで大事なのは、前段でも述べているように顧客という視点から一旦離れて、彼らを見にいくということだ。
すると、彼らを象徴するキーワードが見えてくる。
たとえば、ここでは“タイパ”(タイムパフォーマンス)という行動規範のようなものが見えてきた。また、「無計画の中の計画性」という特徴もありそうだ。「社会の状況によって、すでに多くのことが左右されているし、未来は変わっていくのに計画を立ててもしょうがない」。なんとも刹那的だが、むしろ彼らにとってその心構え自体が計画性であるようにも思える。
このように、対象者全般についてよく知り、深く考えて、インサイトを読み解く。これをスタート地点にするのが、バリュープロポジションを考えるうえで大切なポイントだと言えるだろう。
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