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のら多言語話者は何が分かる?(5) のらねこ、外国語をマスターした状態がよく分からない

外国語の学習をする際、最終目標はどこかと聞くと、 「ネイティブ並みにマスター」したいと答える人がたまにいます。
それって最終目標としてどうなんでしょう。
というより、具体的にどこなんでしょうね?

こんにちは。
いつも のらねこに何ができる? を読んでいただきありがとうございます。
もしくは初めましての方も、ありがとうございます。

僕は TOMCAT HEART の中島といい、目標管理アプリ Project Sylphius の運営を手がけております。
エンジニア業界に入って30年、いつもとても苦しそうにしている人を数多く見聞きしてきました。それらの人々の共通点を分析した結果、圧倒的に目標管理ができていないのだという結論に至りました。
そこでこのコラムでは、目標管理スキルを覚えれば生きる苦しさが軽減すると証明すべく、僕が自分で計画して自分で実践してきたことを、なるだけ分かりやすく、なるだけ楽しそうに書く趣旨になっております。

現在はシリーズ “のら多言語話者は何が分かる?”と題して、ちゃんと続く外国語学習の進め方を連載中です。
英語・イタリア語をもう何年も続けてる僕が、なぜそんなにあきらめずに続けていられるのか、その秘密をばっちり共有しております。

全体の連載計画はこちら。

1. 目標設定とセルフバインド
2. 基礎勉強の進め方
3. 当面の目標と勉強スケジュール作成
4. 語彙を増やすコツ
5. 目指すレベルの確認(今回)
6. スラッシュリーディングのコツ
7. セクションスタッキングのコツ
8. ヒアリング練習のコツ
9. スピーキング練習のコツ
10. アウトプットの大切さについて

バックナンバーもこちらにありますので、よろしければご覧ください。

前回・前々回と、最終目標を決めて当面のスケジュールや当面の練習プログラムづくりなどをやってきました。
なので本日は、目標とする “なりたい自分” のイメージを、あらためて確認していこうと思います。

1. その言語を“マスターした”ってどういうこと?

素人がよく軽い気持ちで口にする目標として、「その言語をマスターしたい」という動機があります。

経験者からすると意味不明で無理難題な目標であるように見えるため、「それ絶対無理だから! そんな理由ならやめといた方がいいから!」と言いたくなってしまいます。
だって、言葉というのは単語だけでも1言語につき数十万個あるし、文章としての組み合わせの数ともなれば数億・数兆・それこそ無限大のパターンがあり、どう考えたって人類に成しえることではありません。

ですが「マスターしたい」という素人発言に、「やめといた方がいい」とアドバイスするのは本当に正しいのでしょうか?

「マスターした人 = 数十万個の単語と、無限のパターンを完全無欠に使いこなす人」というイメージは、言語を習得することの厳しさをすでに知っている人のイメージです。
どう考えたって何も知らない素人のイメージではありません。
ですので、素人が「マスターしたい」と発言するときは、ではなくもっと、社会的に分かりやすいイメージを指していると捉えるべきなんです。

たとえば、“テレビCMで外国人と楽し気に話しているタレント” なんてどうでしょうか。
あれだって、経験者からすればそんなに高いレベルではありませんが(だってたまたまフレーズを知ってれば初心者にもできることですから)、でも素人からすれば十分にマスターレベルの人に見えるはずです。
だって素人は素人であるがゆえに、それ以上のレベルの話者を見たことがないからです。

つまり、この場合の素人目標であるその言語をマスターしたいとは、「外国人とのおしゃべりを楽しみたい」であって、正直そんなに高い目標でもないことになります。
具体的には、

  • 長文読解

  • ヒアリング

  • 定型文のスピーキング

中途半端でもいいので、この3つができれば十分に可能です。
なぜなら、日本人が日本語で日本人と会話するときは、僕らは頭の中でそれくらいのことしか特にやってないからです。

でしょ?
友達と楽しく会話するのに、「聞いて」「理解して」「言いたいことを言う」以外のことをやってる人はいません。(仮にもっとたくさんのことをやっていたとしても、その人は周囲に こいつは人の話を聞いてない と思われているはずです)
そしてこれら3つは、どれも中学生レベルの外国語力でも十分に可能なことです。

2. 長文読解は、どこまでも無限に長い文章を読む能力ではない

上記3つのうち、もっとも基本となる目標は長文読解でしょう。
なので外国語をマスターしたい人は、最初にこの長文読解の練習をした方がいいです。
これができないと、さすがにそれ以上のレベルに行きようがないからです。

とりわけアメリカ・ヨーロッパの言葉は、文法上文章が長くなりがちで、それゆえに日本語よりはるかに長文であるというイメージを持つ人もいるかもしれません。
ですが日本人が日本語で書く場合もそうであるように、あまりにもダラダラと長すぎる文章はそもそもマナー違反です。
マナー違反にならない範囲でそこそこ長い文章であれば、日本語と比べてそんなに極端に長いはずがないんです。

具体的には “節が3つ” の文章が読めれば十分です。
かつ、長い文章を読むコツには “スラッシュリーディング” “セクションスタッキング” の2つがあり、この2つのテクニックを覚えれば仮にそれ以上の長い文章が来てしまったとしても読めるようになります。

そしてこれらには、具体的な考え方と具体的な練習方法が存在します。

3. ヒアリングは未知の発音を聞き取るゲームではない

外国人と会話をするには、当然ながら相手の言ってることを聞き取らないといけません。

ですがその方法論が実は、初心者と上級者では全く違うんです。
初心者は、上級者の真似をして上級者が言うとおりに聞き取ろうとしても、まず聞き取れるようにはなれません。

個人的な主観ですが、ヒアリングだけが飛びぬけて苦手な人は、だいたい「相手が何と言ってるか」を無理をして聞き取ろうとしてしまっています。

たとえば中学の英語の授業などでも、/ʃ/ /θ/ /s/ は全て、英語に慣れていない日本人には同じ「ス」に聞こえます。
また、/æ/ /ʌ/ /ɑ/ の音は全て「ア」に聞こえるはずで、素人がこれを区別はできません。

ですがヒアリングが不得意な人は、これらの区別をできもしないのに無理にやろうとします。
しかもあきらめたあと「日本人には不可能」などといった噂をばらまきさえします。
そこまでいってしまうとさすがに公害です。
(あるいは、教えるのが下手な先生に、無理やり区別するよう強制されるパターンなんてのもありますね、、、ホント迷惑、アレ)

初心者のヒアリングは「相手が何と言ってるか」ではなく、「自分にどう聞こえるか」で考えます。
"see" "she" がどちらも同じ「シー」にしか聞こえなくったって、最初のうちはいいのです。
前後の文脈で意味を理解すればいいだけなので、別に区別できなくたって問題はありません。

これも、ちゃんとした練習方法が存在します。

4. スピーキングはとっさしゃべる能力ではない

リーディング/ライティング/ヒアリング/スピーキングの4つの中で、一番難しいのはスピーキングとよく言われます。

。。。え、ホントにそう思います?
だって、ヒアリングは「相手が何をしゃべるか」をあらかじめ知ることはできませんが、スピーキングは「自分が何を言うか」をあらかじめ決められますよね。
スピーキングって、ヒアリングと比べて本当にそんなに難易度高いですか?

ちなみにいうと英語のスピーキングが苦手な人は、だいたい日本語のおしゃべりも苦手です

なぜならスピーキングが苦手な人は、「何をしゃべるか考えないまま雑談を始めてしまう」傾向があるからです。
雑談というのはそもそも、何を言うかを頭の中でまとめてからしゃべりはじめるもので、日本語で日本人と話すときはみんなそうしています。
この手順そのものは日本語でも英語でも特に変わりません。

どんなにしゃべり上手な人が日本語を話すときであっても、身構えていなければ巧い返しはできないのが普通です。
ですので英語の知識がそこそこあるのにしゃべれない、うまくしゃべれない理由が語学力の問題ではないケースの方が世の中圧倒的に多いんです。

それから、発音がそこそこ完璧じゃないとそもそも通じない、と思ってる人も多すぎますね。
外国人としゃべった経験そのものがないために、どこまでなら訛ってて大丈夫かが分からないのでしょう。

これらもちゃんとコツがあるし、しかもスピーキングのコツは日本語で雑談するときのコツと一緒なんで、楽なもんです。

5. 大事なのはやれるところからやること

さてさて。
てなわけで、いくつか外国語を覚えるポイントを見てきました。
具体的な中身の部分を何も話していないので、できる気がしなくてもそんなに深く考えないでいただきたいと思います。

とりあえず今回言いたかったのは、素人ごときがイメージする程度の “マスターレベル” は、正直そんなに大したことないってことだけだからです。
上記それぞれのコツについては、来週からもう少し詳しく話していこうと思います。

ただし僕が今言った簡単とは、あくまでも基礎知識なしの単純練習でも習得可能という意味であって、決して短期間でパパッとできるという意味ではありません。

努力が苦手な人の中には、

  • 短期間で成果を出すことに異様なこだわりを持っている

  • かつ自分がそういうこだわりを持ってること自体に気づいてない

という人も多いです。
これは努力ができない人の典型的なパターンです。

「簡単にできますよ」と言われると、短期間ですぐ習得できるイメージが浮かんでしまう人は、世の中には簡単ではあるけど時間はかかるというパターンもがあることを肝に銘じた方がいいでしょう。
外国語の習得はとかく、“時間さえかければ誰でもできるし、誰がやっても時間はかかる” ものなんです。

またこれらの練習は、できそうなことから順番に下積みを積んでいくことが大事です。
できないことを無理にやろうとしてもできないものはできないので、できることからやるのが原則です。
また練習の順番も、僕個人のおすすめは 長文読解 ⇒ ヒアリング ⇒ スピーキング の順なんですけど、でもこの順番だって、もしかすると違う方がいい人だっているかもしれません。
練習はあくまでも “自分のペース、自分の順番” が重要です。

YouTube とか見てると、ホントにたま~にですけど「飛び込めばなんとかなる。とにかく現地に行け!」みたいな根性論を語る人もいますけど、あれも迷惑だからやめてほしいです。
個人的な努力くらい、「自分のペースで」「自分の順番で」やりたいじゃないですか。

ではまた。

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ここまでお読みいただき、ありがとうございました!
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