のら多言語話者は何が分かる?(8) 外国語が全く聞き取れない
学生時代、「英語の聞き取りはたくさん聞けば慣れる」と言われました。
だから僕10年がんばりました。10年ですよ、10年!
でもダメでした。本当に全く微塵も聞き取れるようにならなかったんです。
そのレベルでやってもダメだった僕が、どうやったのか。
今日はそのときの話をしたいと思います。
こんにちは。
ご覧いただきありがとうございます。
この のらねこに何ができる? では、目標管理スキルを覚えれば毎日が楽しくなるということを皆さんに知っていただくため、僕が自分で計画して自分で実践してきた様々なことについて、どんなふうに楽しかったかをお届けする内容となっております。
そんでこの僕はエンジニア歴25年。
個人・企業両用向け目標管理アプリ Project Sylphius を運営しております、TOMCAT HEART の中島と申します。
現在は “のら多言語話者は何が分かる?”と題し、ちゃんと続く外国語学習の進め方を連載しています。
バックナンバーもありますので、よろしければご覧ください。
1. 低レベル者の「できない」はプロの想像を超えてくる
はるか以前、昔々の太古の昔。。。僕がまだ高校生だった頃。
あ、いや、違うね。
僕は今20才と300ヶ月強なわけだから、まだたった3年前だ。いえい。
まぁ西暦年数はどうでもいいとして、高校生だった頃、英語のヒアリングがとにかくダメだったんですよ。
何を聞いても一切何も聞き取れないし、あらゆる英語音声が雑音にしか聞こえなかったんです。
で、どんな練習をすればいいかということを、(当時はインターネットが使えなかったので口頭で)質問して回るんですけども、みんなそろいもそろって「スピードに慣れるしかない」とか言うんですよね。
だからピュアッピュアの綺麗な心を持った当時の僕は、そういうもんなのかと思ってその言葉をそのまま信じました。
だって英語の先生からの真顔の返答だったんだもん。そりゃあ信じるでしょ。
それから20年、、、、じゃなくて3年と300ヶ月。(こだわる)
サボってた時期もあったから、実際には飛び石10年くらいかな?
聞き取れなくても聞いてればいつか慣れると信じて、ヒアリングを続けました。
結果を言うと、聞き取れるようにはなりませんでした。
つまり、当時の先生の「どんな人でも常に絶対必ず聞き取れるようになる」という言葉は嘘だったのです。
(もちろん先生は当時「常に絶対必ず」とは言ってないけど、当時の僕がそういうふうに受け取って当然だったことは分かるよね?)
で、これは後日分かったことですが、当時の僕はAPDという病気を患っていました。
知らない人に簡単にいうと、周囲の人達の声がちゃんと聞こえてはいるんだけど、全然頭に入ってこないし意味が分からない、という状態になる病気です。
そのおかげで、実は日本語の聞き取りすら、ほとんどできていなかったようなんです。
自分の病気が分かったのも治ったのも(執筆時点で)最近なんですが、当時は、周囲の人達の日本語の10語に1語くらいしか聞き取れていないかったみたいなんです。
だから、英語ともなれば聞き取れる単語の数は20語30語に1語くらいしかなくなり、その状態でヒアリングなんてどだい無理だったわけです。。。
ちなみにいうと、僕の個人的な観察では、日本人の2~3人に1人はAPD(軽度含む)です。
この仮説が正しいかどうかは手段がないので証明できませんが、もし仮に正しいとすれば、日本人がちゃんと英語の教育を受けてるのに全然できない理由としてAPDが原因である比率はそこそこ高いのではないでしょうか。
そういう人は、そんな状態で「慣れる」という方法論によってヒアリングするのは、実質不可能ってものです。
これはあくまで僕個人の一件症例にすぎませんが、でも実体験として言います。
無理に慣れようとするのは、本当にただただ無駄です。
ですが、時は流れ流れてはや20年。。。もとい300ヶ月。(あくまでこだわる)
そんな僕でもヒアリングがちゃんとできるようになりました。
(かつ、その副次作用でAPDも治りました! やった!)
そもそも耳が聞こえないに等しい最悪の状況で、具体的にどうやったのか。
簡単に言うと、“自分独自の発音体形を勝手に作っちゃう” という方法でした。
2. 独自の発音体形とは
これは方法論としてはおそらく邪道の類で、みんなに吹聴して回ったら絶対どっかで「そんなの勝手にやっちゃダメじゃん!」とか言うヤツが現れると思います。
基本的には正道のやり方では無理だった人向けの方法論です。
つってもやり方自体はそんなに難しくなくて、たとえば英語の文章を聞き取っていて、
字幕に“smooth”と表示されていて
それが自分の耳には“ツム”と聞こえた
とします。
そしたらもう、「この単語は “ツム” と言ってるのだ」って、覚えちゃうんです。
そんで次からは “ツム” と聞こえたら “smooth” と言ってるものと判断するわけ。
もちろん、言ってるアメリカ人本人は絶対そんな風には言ってないだろうし、誤った発音かもしれません。
でも、覚え方が間違ってるからって、困ることある?
仮にアメリカに行って現地で「ツム」って発音したとしても、現地の人は前後の文脈のつながりから察するくらいできるんだから、「アイキャント スピィク スムウスリイ」とかバリバリのカタカナ発音でしゃべるより、よっぽど通じやすいんじゃないですか?
少なくともカタカナ発音の「スムース」って言い方だって、別に正しい発音なわけじゃないですからね?
でしょ?
だからね。最初くらいは間違ってていいの。
「自分には “ツム” と聞こえるんだから、他人のことは知らん」と思っておけばいい。
たとえそれを天の神が許さなくても、僕が個人的に許します。
3. 発音記号の勉強をする
で、間違った発音を間違ったまま覚えて、それが半永久的に間違ったままというのも面白くないでしょうし、間違ったままではゆくゆく支障があるのも確かです。
なので覚えきれない細かい発音の違いは、知識として吸収します。
以前の連載(外国語学習の第2回)では「発音記号なんて覚えても無駄」と書きました。
でも、それを撤回する日がとうとう来てしまったのです。
ヒアリング練習をするようになったら、同時並行で発音記号の勉強をやった方が絶対いいです。
そもそも日本語は音素の数が少ないので、日本人はとにかく細かい音の違いを気にしていません。
細かな音の違いを区別できないのが、知識として知らないからという理由である比率が高すぎるんです。
たとえば前述の “スムース” という単語。
日本人が日本語のカタカナ発音で「スムース」と発音するとき、
先頭の「ス」(スムース)
最後の「ス」(スムース)
この2つの「ス」は音が異なるんです。
多分、大部分の人がすぐには信じられないと思いますが、どちらも同じ「ス」だと信じてるから同じに聞こえるだけなんです。
先頭の「ス」は古来より正しいとされてきた日本語の「ス」で、発音記号でいうと /su/ となり、これは有母音発音。
でも最後の方の「ス」を /su/ と発音する人はいません。(少なくとも僕はそんな人に出会ったことがないです)
日本人が日本語のカタカナ発音で「スムース」と言う場合、最後の「ス」の発音記号は /s/ であり、これは無母音発音となります。
それを無理やり有母音発音で言うと「スムースゥ」と聞こえ、少しおかしい感じになります。
でも、だったとしても、
99.99%の日本人はこの2つの「ス」を同じ音だと思っているし、区別する必要性も感じていません。
だって区別する必要がないですからね。
だから英語の音も区別できないんです。
同じ要領で、日本語の単語には、節々にちょくちょく無母音発音が挟まっています。
たとえば「おはよう」という単語を /o ha yo u/ と発音するのは、ゆっくり丁寧に言うときだけです。
早口でサラッと言うとき多くは /oh yo:/ となり、2番目の「は」が無母音化します。
ですから、朝の挨拶のとき通りすがりの人に「おほよう」と言ってもまず誰も気づきません。母音が発音されていないゆえ音声学的な違いが生じないからです。
日本語の姉妹語である韓国語にパッチムという無母音発音が存在することから、日本語についても、その誕生当初から無母音発音は存在していたと考えるのが妥当です。
でも日本語はほんの100年ほど前まで、文化的に他の言語と比較する必要がなかったため、多くの日本人は /su/ と /s/ を違う音だとみなす必要がありませんでした。
だから多くの日本人は、英語の /su/ /s/ /ð/ /θ/ という異なる発音を全て「ス」と認識するんです。
これらはもう、異なるモンだと思って違いを聞き分けていくしか、区別する方法はありません。
異なる音であることを知識として知らなければ、有母音の /su/ と無母音の /s/ の発音を区別することすら、できるようにはならないんです。
一般的な多くの日本人が、何十年も聴き慣れたこの2つの音を区別できないことが、何よりの証拠です。
4. おすすめの発音の聞き分け練習法
はい、てなわけで、まずは音を “独自の発音体形” で覚えてヒアリング練習のきっかけ作りに利用し、それから発音記号の勉強もやって知識を深めました。
その結果深まった。とします。
だいたいザックリですが、「自分には聞き分けできていない発音が結構ある」ことに自分で気づいたら、正しい発音の勉強をボチボチ始めるといいと思います。
ですがここまでくれば、もう世の中の一般的なコンテンツが勉強に利用できます。
とりあえずおすすめの YouTube チャネルはこのあたりかな。
優良なコンテンツはここ以外にも履いて捨てて煮て焼いて食ってもまだ売るほどいっぱいあるんだけど、実体験として 発音練習にいい と思ったのがこの2つだったってことね。
5. まとめ
まとめると、
間違っててもいいのでだいたいで聞き取る
学ぶ言語の発音体形をちゃんと勉強する
こんな感じですかね。
ただし、今回の話全体を通じて一番大事なことは、難しすぎる教材を無理に使わないってこと。
世界にはいろんな人がいて、中にはしゃべりがゆっくりな人もいれば、早口な人もいます。
そんで明瞭な発音をする人もいれば、不明瞭な発音をする人もいるのです。
最初から完璧なんて無理なんだから、聞き取りやすい人の声から順にやるのがポイントです。
そうやって取っかかりをつかんだら、徐々に聞き取れる範囲を広げていけばいいんだから、最初から完璧じゃなくていいの。
世界中の人の言葉をくまなく正確に聞き取る方法なんてものは存在しないので、できることから順番でいいんです。
僕の場合、そこまでやっても、最初にきっかけをつかんでから外国語がまともに文章に聞こえるようになるまで2年くらいかかっています。
なので、努力がなかなか実を結ばないのも、別にあなただけではありません。
だから「いや、俺様は今すぐできるようになりたいんだ!」って人はもうぶっちゃけ諦めていただいて、それ以外の多くの人は、焦らず自分のペースでコツコツやってください。
それが一番大事です。
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ここまでお読みいただき、ありがとうございました!
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