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のら小説家に何が書ける?(8) のらねこ、ネタが集まらない

ご覧いただきありがとうございます!
この のらねこに何ができる? では、目標管理スキルを覚えれば毎日いかに楽しくなるのかを皆さんに実感していただくべく、いわゆる“正しい努力のやり方”というものを、具体的に実践形式でなるだけ面白く書いてお送りしています。
そんで執筆者の僕は、目標管理アプリ Project Sylphius の開発・運営を行っている TOMCAT HEART の中島といいます。

ファーストシリーズの現在は“高クオリティ小説の王道な書き方”。

1. 目標を設定する
2. 自分の得意分野を分析
3. 世の中の流行を分析
4. 物語のキモである“葛藤”について学ぶ
5. 設定をとりまとめる
6. 執筆時間を確保する
7. 起承転結の展開方法について学ぶ
8. 核心部分の詰めを行う(今回)

よろしければバックナンバーもご覧ください。

ファーストシリーズ最終回である今回は、今までに作った設定を実際の設計図としてボトムダウンしていきます。

1. 悪役の悪役らしさは一言に集約できない

まず細部を考えるために、悪役の悪役らしい行動について考えます。

なぜなら、今回の物語は主核となるコンセプトが“ブラック上司に仕組みを使って ざまぁ する話”だからです。
このコンセプトに忠実であるためには、悪役がラブリーチャーミーなカタキ役ではダメなんです。
本当に誰が見ても「こいつは罰されるべき」と感じさせるような、殺意を掻き立てる人物に描かなければいけません。
それが ざまぁ 系のストーリーの醍醐味です。

そのために、悪役キャラはどんな人物にすべきでしょうか。
設定をしっかり強火で煮込んでいきましょう。

ぐつぐつぐつぐつぐつぐつ

はい、そういうわけで、30分ほど煮込んだテキストがこちらになります。





、、、ごめん、白紙!!!!!!

ヤバい! なーんも思いつかん!!
マジなんだろう? そもそも悪役ってどんな人のこと?
悪い人ってどんなことするのが普通!?

ゴミを水曜日に出すのが悪い人?
ペットボトルとかポイ捨てすればOK?
捨て猫にヌルくてマズい低脂肪乳とか飲ませるのは悪党!?
分からない!!

あ、そうだ! 過去に出会った嫌な上司のことを思えばいいんだ!
ニヤニヤ笑いながら言いがかり付けてきたアイツだよ、アイツ!

。。。。。。。。ああもう、ムカつくニヤニヤしか記憶にない!!!

はい、えーと、、、、、結論として、悪役らしさというのが何なのかはよく分かりませんでした。
少なくとも僕は自分では自分を悪人だなんて思ってないし、そんなパッと出せって言われたって分からんもんは分からん。

そもそも、人間の行動を簡単に集約しようとするのが無理のある話で、悪役の悪人らしさは、本人の行動にしか現れてきません。
読者は、ストーリー上の行動の1つ1つを見て「こいつ悪い奴だ」と感じるのであって、設定資料に“悪役”と書いておけばいいわけではないのです。

・子供のかわいらしさ
・リーダーのリーダーらしさ
・ひょうきんキャラの面白さ

なんでもだけど、人間のアイデンティティは一言に集約はできないんです。
なぜなら人間の“らしさ”とは、普段の行動1つ1つの合計だからです。

このような一言に集約できない情報は、ネットで調べて30分で一気にリストアップとかはできません。
時間をかけて少しずつ集めるしかどうしようもないのです。

2. ネタ帳を準備する

なのでこういうときは、ネタ帳を準備するとしましょう。

僕の場合、普段こういったネタ集めの類を行う時は Google Keep というアプリを使用します。
スマホのホーム画面にウィジェットとして張り付けておけば、思いついたときにすぐにメモできるからです。

ネタ帳は、思いついたら即座に書ける状態にしておくのが大事。
スマホの方が機能が多いとか、紙の方が味があるとか、そういった感情論は関係ありません。
なぜなら、ネタはいつ思いつくかをコントロールできないことだからです。

集めようと思わなければ自然には集まらないうえ、集めようとしても簡単に集まったりはしないのがネタというものです。
ですから、使いやすいものを何でも好きに使えばいいですし、思いついたら即座に書けることだけが唯一の要点です。

具体的には、思いついてから10秒以内にメモできる状態にしておくのが重要です。
なので、24時間ずっと持っていても邪魔にならず、うっかり忘れたりしないようなものをネタ帳として使います。
通常多くの人は、手帳かスマホのどちらかを使うことになるでしょう。

また、ネタ帳は準備しただけでは翌日にはその存在を忘れてしまう可能性が高いので、思いついたときに書くだけでなく、ネタ集めを行う時間を意識的に確保することも重要です。
僕の場合は、**のらねこに何ができる?**の執筆をしている時間が決まっているので、その作業時間の一部を使うことにします。

3. 集まったネタを あらすじ に組み込む

ある程度ネタが集まってきたら、それをあらかじめ あらすじ に組み込んでおきます。
前回、あらすじ はこんなふうに書いたと思います。

1. 派遣切りで失職した主人公は、ネコの世界で魔法アイテムを作ることに
2. 注文通りに作ろうと頑張る主人公の姿を見て、調子に乗った上司はさらに無茶を言ってくる
3. それに応えようとがんばった結果、無理がたたって主人公は倒れる
4. 身を守るために上司を会社から追い出すべく、主人公はわざと完成品を誤爆させて責任をかぶせる

(第7回 3. 案を複数出そう)

で、このシナリオに、集まったネタを組み込むことによってより細かくします。
このとき気をつけるのは、ネタ帳に集まったネタを適当に面白そうな順番で使うわけではないということです。
ストーリーのクライマックスシーンでの主人公の行動はすでに決定しているので、その決定と矛盾が生じないように組み立てないといけないからです。

主人公が気づくこと:
- 自分は抱え込み癖があり、かつ、抱え込み癖があるという意識自体がなかった、ということ
きっかけになる閑話:
- 経済の仕組みと人間の社会構造の類似性について
気づくきっかけ:
- 人間関係において「見返りを求めない」という考え方が、そもそもおかしいことに気づいた瞬間

(第4回 5. 今回の葛藤シーンについて)

今回のストーリーでは、主人公は「見返りを求めない人間関係はおかしい」と気づきます。
ですので、主人公がうまく仕事を抱え込み、無償でどんどん働いてしまうような順番で、悪役が仕事を押しつけてくる必要があります。

ですが悪役の行動がデタラメだと、なぜそんなに主人公が一生懸命なのかが読者に伝わりません。
読者が「自分が同じ立場でも、主人公のように行動するだろう」と感じるような順番で、悪役が悪事を働くことが重要です。

ですので、ネタは悪役の嫌なヤツ感が最大化するような順番で使用されなければいけません。
ラブコメの場合はコメディネタを、ミステリーの場合は謎を、ギャグマンガの場合はジョークを、同じように効果が最大化する順番に並べます。
今回の場合、悪役は主人公に、徐々にエスカレートするような順番で仕事を押しつけてくるように並べるとしましょう。

そのためには、思いついた瞬間には「ぜひ使いたい」と思ったような凄くいいネタを、シナリオと合わないという理由で捨てる必要だってあるかもしれません。
仮にそうなったらそれは残念ですが、でも仕方ありません。
なぜなら今回は読者を楽しませることが最優先なのであって、自分が楽しむのはあくまで2番目の目的に過ぎないからです。

どんなシーンをどんな順番で描くか、今までに考えた様々な設定をどこで使うかなどなどを、ノートやカードなどにまとめましょう。

4. シノプシスを整理して執筆開始!

さて、今度こそ執筆に必要な情報が全て集まりました。
あらすじ を改めて整理し、最終的にシノプシスと呼ばれる台本のようなものを作ります。

まず、起承転結の4行だけだったシナリオを

1. 派遣切りで失職した主人公は、ネコの世界で魔法アイテムを作ることに
2. 注文通りに作ろうと頑張る主人公の姿を見て、調子に乗った上司はさらに無茶を言ってくる
3. それに応えようとがんばった結果、無理がたたって主人公は倒れる
4. 身を守るために上司を会社から追い出すべく、主人公はわざと完成品を誤爆させて責任をかぶせる

こんなふうに章だてた一覧に直します。
物語が短編なのか長編なのかはこの段階で決まります。(今回は長編小説ですね)

1. 主人公が異世界へ行く
2. 世界観説明シーン
3. 魔法陣がプログラムで作れることに気づく
4. 主人公が上級魔術師として働くことに
5. 悪役オンビレ・ダッコー登場
6. 新しい仕事はネズミを弓矢で殺すという難しい仕事
7. 自動追尾つき銃を開発
8. 追加要求1: 理由不明の威嚇音発生機能
9. 追加要求2: 消えない炎
10. 町長がちゃぶ台返し、主人公を追い詰める
11. 主人公はどうしたらいいか分からなくなって悩む
12. ギルドマスターに相談するうちに解決策を見出す
13. 新作発表会で町長を貶める
14. 町が改善される

で、それらがそれぞれどんなシーンなのかをさらに補足するとこうなります。
(長いので全部読まなくていいですよ!)

1. 出だし
- 主人公キータがオルソラに殴られるシーンから始まり、そうなるまでの経緯の説明。
- 職業はプログラマー。25才。安月給。
- 飼い猫のクツシタを追いかけ、暗いトンネルに入っていく。
- クツシタがキータの存在に気づき、慌てたように振り返ると、そのときにはもう女の子の姿に変わっていた。
- 殴られて気を失う。

2. 世界観説明とマギアの概念の登場
- 事務所で目を覚ますキータ
- この世界“ガトーニア”の説明
- 株式会社ルピシア魔道具店と、その同僚の登場
- キータが失職中であるという話
ここ最近、キータが悩んでいるところをずっと見ていたオルソラは、ここで雇いたいと言い出す。

3. 初めてのプログラミング
- 手続きに関する話をしてくるということで、同僚になる人達が全員出ていく。手持ち無沙汰に。
- 魔法陣の周囲をぐるりと取り囲む呪文が、プログラムになっていることに気づく。
- アルゴリズムに問題があることに気づいて修正
- どうやって動かすのか悩みながらも、「動けー!」と念じてみる
その瞬間、置物が発熱。
「どわっち!!」
と叫んだため、隣の部屋にいたオルソラ達が飛び込んでくる。
- 少し焦げた魔法陣を見て、オルソラが度肝を抜かれた顔をする。
自分がプログラマーだという話をする

4. 上級魔術師
- ガトーニアから見たソリタリアの話
- キータはスマホの存在を教え、自分にプログラミングができる理由を説明
- 満場一致でキータを上級魔術師として雇うことに

5. 悪役オンビレ・ダッコー登場
- その後ルピシア魔道具店は、高速振動剣に加熱機能を付与した武器「ヒートスピア」を販売。
- 盛況を聞きつけ、町長が登場。これがろくでもない人物
⇒ 嫌な予感

6. 新しい仕事
- オンビレ・ダッコーが冒険者組合のマスターを引き連れてやってきた
- 依頼内容:
- トポネロというネズミ型モンスターが大量発生している
- 大量の罠を設置して対応しようとしたが、トポネロが学習してしまった。
- 高速に動き回る大量の敵を一掃する武器を作ること
- ただし、利用者は魔力保持量の少ない一般兵である
- ギルドマスターは仕事の依頼を順を追って説明しようとするが、ダッコーが頻繁に口をはさんできてなかなか話しが進まない
- すったもんだしながらも説明は終え、受注はなんとか無事に完了する

7. 武器の開発
- 当初案は、大量の小さな砂粒を高速で発射する魔法
- だがこれには砂粒自体に攻撃力がほとんどなく、ばらまいても効果が未知数という難点があった
⇒ そこで、センシングとエイミングができる銃を開発
- 最後に安全性を確認し、開発はいったんいい感じに終わる

8. 追加要求1: 理由不明の威嚇音発生機能
- 当初の指示通りに仕事を進めるキータ
- ダッコーがなぜか1人でやってくる ⇒ 唐突な追加依頼
- キータは戸惑うが、まぁ、とにかくやることに
でも逃げられる率が上がるだけで意味がないのでオン/オフできる仕様とする
(ただ手間が増えただけ、、、)

9. 追加要求2: 消えない炎
- 全く意味が分からない指示、というシーン

10. ちゃぶ台返し
- ライフル射撃が基本の使い方と知ったダッコーはなぜか激怒
* 走りながら撃てるようにしろなどと言い出した
* そんなことはできない、という描写
- 気合いが足りんだの死ぬ気でやれだの言いだした。
* 現実的で実際にありえる生々しい言い回しを心掛ける
- 威力を上げろというので、これにはキータも猛反発する
* 「絶対に威力は上げません」
⇒ 町長は不敬罪を持ち出して無理やりやらせようとする

11. キータ、参る
- 不敬罪を持ち出されてキータは頭を抱える
- ルーパは契約をいったん切るのがいいと提案 ⇒ だが事態が悪化するだけのように感じてキータはこれを拒否
- オルソラの言葉で、キータは自分に抱え込み癖があったことに初めて気づく。
「そっか、、、これが抱え込むってことだったんだ、、、」
- オルソラに、キータに対する恋心があることを示唆するシーン
※ ただし明確に恋してる感じを出さないこと!!
- いったんはルーパの提案を受け入れる
⇒ 貴族とモメることになるがやむを得ない、で引く

12. ギルドマスターに直接相談
- ギルドマスターは追加要求の内容をほぼ把握していなかったことが判明
- 威力を上げろとキータに迫る直前、町長は貴族の集まりで「凄い兵器を開発中」と風潮していたことが判明
その際に「どんなモンストロでも、それこそドラゴンだって一撃で葬り去る」と言う言い方をしている。
- その際に彼が開発の目的を言わなかったので、どこかに戦争を仕掛けるつもりではと噂になった。
⇒ 、、、という話をボルペ氏がたまたま出会った行商人から聞いた、と組合で大騒ぎ。

13. 新作発表会
- 新しい武器の発表会当日
- 動作確認の直前、主人公は念のためといって仕様を確認する
- 試射すると銃は大爆発
⇒ 怒りを爆発させるオンビレ・ダッコー
- 指示の出し方が悪すぎることを糾弾
⇒ そ、そもそも軽くしろとも威力を上げろとも言ってない!」
注意: その場の全員と読者が「え? ついさっき言ったじゃん」と感じるようにする
* この世界には記録に残すという習慣そのものがなく、ついさっき言ったことでも簡単に覆せる、という描写
- 「いや、証拠ならある」
⇒ ボイスレコーダーを取り出して再生
⇒ (ダッコー)「そもそも、そんなものは捏造だ! 声を覚える装置なんてできるわけがない!」
⇒ これは悔しいが彼が正しい。
ボイスレコーダーは日本人にとって当たり前の装置だが、こちらにはそもそも『証拠として記録を残す』という習慣それ自体が存在しない。
そのため、ボイスレコーダーにしろ紙にしろ、法的な証拠能力が認められない。
⇒ どうする、、、?
- 領主が登場して町長をたしなめるシーン
⇒ 町長は四面楚歌になって観念する
⇒ 領主に連れられて無理やり退場させられる。
(彼に国家反逆罪が適用されることを、領主の遠回しなセリフだけで表現したい)
- ようやくまともな新作発表が行える、というところでシーン完了

14. 町が改善される
- しばらくはギルドマスターが、今まで官僚長だった人と2人で町長をやっていくことになり、兼任となった彼は凄く忙しくなった
が、合間を縫ってお礼を言いに来てくれた
- オンビレ・ダッコーが退任したことで町がいろいろ代わる
& キータが魔剣製造者に認定されることに(みんな大騒ぎで喜ぶ)
- 完了

この一番長い状態のテキストのことを“シノプシス”といい、小説の場合はこれが最終的な設計図となります。
ラノベを書くのが趣味の学生さんなんかは「作品が長くて友達がなかなか読んでくれない」なんて あるある だと思いますが、そういう人はシノプシス(略してシノプ)を見せればいいです。
この段階で面白さが伝わらないようであれば、それは頭の中が十分に整理できていないことを示すので、面白さが伝わるまで修正するといいでしょう。

で、あとはこれを順番通りに物語にしていくだけです。

とまぁ、本来だったらここで何日かお待ちいただく必要があるのですが、実を言うとすでに執筆したものがこちらにございます。
エンジニアたるものネコに手も貸したい

もちろん一瞬でパッと作ったわけじゃなくて、実際には1ヶ月くらいかかっています。

今回お教えしたノウハウは、別に長編小説を書く場合に限らず、短編小説・漫画・ゲームシナリオのほか、企業がブランディングするときのストーリー作りなんかにも応用できます。
やってみたい方は、こちらにも手順をまとめておきましたので、ぜひ使ってみてください。
シルフィウスフレームワーク・小説の書き方


さて、これで小説の書き方のシリーズは完了です!
次回は“のら外国人に何が覚えられる?”と題し、新しい言語を新たに学習するときのやり方を目標管理に沿ってお送りします。

実は私、こう見て読み書きだけなら複数の言語が理解できましてですね。
日本語、英語、イタリア語の文章が読めます。それにスペイン語、フランス語、ドイツ語も少しだけ。
どうやってこんなにたくさん覚えたのか。
次回からそのやり方をシェアしていこうかなと思います!

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TOMCAT HEART / 目標管理アプリ Project Sylphius

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