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【製品開発エピソード】No.1521「特製トンボバンド」【複音ハーモニカ】

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トンボ楽器がハーモニカ専門工場として稼働して14年、脂が乗っていた昭和6年(1931年)、ミヤタバンド(昭和2年発売)を経て当社を代表する器種となる「特製トンボ」が発売されました。現在も当社の代表機種として引き継がれている超ロングセラー製品です。

特製トンボ発売広告昭和6年



最近のハーモニカ本体(ボディ)は殆どが樹脂に替っていますが、「特製トンボ」は発売当時のままの木製本体です。 木製本体は製造に手間が掛かり取り扱いも難しいのですが、複音ハーモニカ本来の暖かみのある音色は今でも好まれる方が多いのです。 

さて「特製トンボ」誕生には当時の演奏者の思いが込められているのです。 先ずカバーの形状ですが、両端が少し膨らんでいるのをご存じでしたか?

1521 カバー

これは単なるデザイン上のことではなく、実は機能的な面からこの形状になったのです。
当時は丁度ハーモニカの演奏テクニックが開発され始めた頃で、ベース奏法、オクターブ奏法、分散和音奏法など、ハーモニカを大きく咥えて演奏する様になりました。 そこでハーモニカが分厚いと吹きにくいので、できるだけ平たくしたい。そこで先ずカバーの膨らみをとってペチャンコにします。確かに咥えやすく演奏も楽になります。

ところが今度は異なる調のハーモニカを重ねて持つ様になると、平べった過ぎて滑らせる動作がやりにくい。どうするか?

そこで考えたのが、咥えるのに影響のないカバーの両端だけ従来のカバーの膨らみを残すことにしたのです。 こうすれば2本のハーモニカを滑らすときカバー全体が擦れない。両端の膨らんだところだけの接触なので摩擦抵抗が殆どなくなります。

更にこちらを見てください。 

特製トンボ本体断面

本体を横から見たところです。吹口側を薄く(狭く)して、台形にしてあります。これもハーモニカを咥えやすくする工夫です。 

この様に、当時としては高級テクニック演奏のための知恵を盛り込んだ新製品として発売されたのです。
現在ではリードがカバーに触れて雑音が出ると云うクレームが多いため、カバーを薄くすることもなくなりましたが、本体の断面の台形はバッチリ残してあります。

文章:トンボ・ファミリークラブ会長 真野泰治




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