タンカーのお話 晩秋編 その1 基礎情報2022/11/19

こんばんは。とまとです。
久しぶりにタンカーについてまとめたいと思います。
間違いとかもあると思うので、参考にする場合は、自分で調べ直してください。

タンカー過去記事

タンカーは過去の記事をまず参照ください。

タンカー基礎知識の復習

今回はこれから記事を読み解くための最低限の知識を記載したいと思います。

タンカーの種類

タンカーは原油もしくは石油製品を運ぶ船です。大きくは原油タンカー(crude tanker, dirty tankerとも呼ぶ)とプロダクトタンカー(product tanker, clean tankerとも呼ぶ)に分かれます。石油はまずは原油を組み上げ、それを石油精製所に運び、精製してガソリンやジェット燃料など、それぞれの石油製品にして運びます。原油を運ぶのが原油タンカー、精製後の石油製品を運ぶのがプロダクトタンカーと呼び、それぞれ異なります。

さらに、原油タンカーにもVLCC>Suezmax>Aframaxがあり(他もありますが、投資対象が持っている主なものとしてこの3つを覚えればOK)、プロダクトタンカーにもLR2>MR(こちらも他にもありますが2つ覚えればOK)があり、それぞれ主にサイズなどが違います。左側が大きく、右へいくほど小さくなります。ちなみに、AframaxとLR2が同じサイズ(運ぶものが違う)となっており、Aframaxを変更してLR2(またはその逆)として使用できるタイプもあります。VLCCが一番巨大となります。

基本サイズが大きいものほど遠距離輸送に使い、小さいものは近距離輸送に使います。VLCCは中東とアジア(中国、日本など)やブラジル-中国などの路線に使われます。Suezmaxは例えば、西アフリカと欧州を運搬したりしています。詳しくは、各社のプレゼンテーションとかみるとわかりやすく書いてあるので参考にしてください。船の種類によって、運行ルートが違い、その運賃も異なることを覚えておいてください。

タンカービジネス

次にタンカー会社のビジネスはざっくり言うと、資本もしくは借入金でタンカー買って、それを運賃で運用して、儲けて、儲けの中から借入金返済と株主還元する会社です。すごく単純化すると運賃が利益に直結する最重要要因となります。もちろん、現実的にはタンカーを売買したり、いろいろ他の要因もありますが、あくまで一時的な要因ですし、影響の大きさもそれほどでもないです。運賃が高かろうが、安かろうが原油ないしは石油製品を運ぶコストはそれほど変わらないため、運賃が高くなるとかなりの利益が出る事業となっています。

運賃は契約で決まり、路線や船の種類(タンカーの種類に加え、新しいか、環境対応かなどいろいろ条件があります)によっても異なります。しかしながら、昨今のタンカーの種類別の運賃のボラティリティと比較するとその差はすごく大きいというわけではないレベルです。

契約は(実際にはもっと複雑ですが)大別するとスポットと固定があります。スポット価格は1回の航海(例えば60日とか)ごとに価格を決定する、固定価格は1年とか3年とか特定の期間契約する方式です。スポット価格が高騰するような時期では、基本スポット価格が固定価格を大幅に上回るため、価格高騰による株価上昇をとらえるには、スポット契約の比率がどの程度かは重要なファクターとなります。(ただ、どこもスポット多めですが)

運賃は何で決まるか

次は運賃は何で決まるかですが、タンカーの需要と供給で決まります。タンカーの需要はトン✕マイルが重要となります。トンとは運ぶ必要のある原油または石油製品の量です。マイルは運ぶ距離です。同じ量を運ぶ場合でも、ロシアから欧州に運んでいたものが、ロシアから中国に運ぶようになるだけでも、トン✕マイルが大幅に上昇します。それだけ長くタンカーを専有することなので、タンカー需要はかなり高くなります。ここらへんがロシア関連でタンカーの運賃が高騰している理由となります。

タンカーの供給

次にタンカーの供給は、端的に言うと、市場で契約をとるタンカーの数です。タンカーの数が少なければ、そのタンカーの奪い合いになるので、運賃が高騰します。船は老朽化するといずれスクラップされます。なので、タンカーの供給は船の年数と船の造船によって決まります。船の造船は2025年ぐらいまでかなり少なくなっています。これはコンテナ船不足が問題となり、多くの会社が造船会社にコンテナ船の発注を行ったため、作るキャパシティがしばらくないからです。さらに今後も少し前の低金利だったら別ですが、果たして今の高金利で、タンカーバブルもいつまで続くかわからない状況で果たしてタンカーの造船を発注する人はいるのでしょうか?今後供給が減っていく、これもタンカーの運賃の高騰の理由となっています。

運賃の動向

運賃の動向の目安としては、Baltic dirty tanker index (原油タンカー), Baltic clean tanker index (プロダクトタンカー)のチャートをみてみてください。

原油タンカーは今年3月4月(ロシア関連)に高騰した後、しばらく沈静化し、その後6月ぐらいと10月ぐらいから今まで上がり続けているのがわかります。一方で、プロダクトタンカーは今年1月から上がり続けて、6月に一旦ピークをつけ、そこから調整をして、11月に入ってまた上がり出していることがわかります。

タンカーの種類別のスポット価格の推移を公表しているところがなく、大雑把な流れだけ文字で説明すると、原油タンカーでは、ロシア関連後は、Aframax>Suezmaxの順で急騰し、VLCCはずっと底辺をさまよっていた状況です。これは前にも述べたようにVLCCは中東-中国などの長距離路線で中国のロックダウンなど中国が立ち遅れた一方で、Aframaxは近距離でロシア-欧州などで使われていたこともあり、小さなタンカーほど運賃が高くなっていました。通常は大きなタンカーほど運賃が高くなっており、逆転現象が続いていました。しかしながら、VLCCも7月以降運賃が回復していき、現在ではかなり高い運賃となっています。ちなみに、運賃という表現を使っていますが、正確には(モデルケースをもとにした)利益的な数値となっており、特定路線の数値ですが、VLCCだと$-20,000/日だったのが、現在は$100,000/日となっていたりして、おそろしいボラティリティがあるのが特徴です。

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