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タンカーのお話 晩秋編 その5 カンファレンスコール

こんばんは。とまとです。今日は11月に各社決算発表がありましたが、そのカンファレンスコールをもとに書きたいと思います。

基礎知識:原油タンカーとプロダクトタンカー

カンファレンスコールに入る前に、基礎知識の復習をしたいと思います。ここまでの記事をみて、原油タンカーとプロダクトタンカーの違いはわかりましたでしょうか?原油を運ぶか、石油製品を運ぶかの違いだろ、それは正しいですが、その差をしっかり理解することが重要です。

チャートの回でみたように、原油タンカーとプロダクトタンカーのチャートはかなり違います。大事なことはこの2つは別物と認識することです。タンカーとつくので、銘柄の違いぐらいと認識してはいけません。この2つを正しく理解することが、タンカー投資で儲けられるかはわかりませんが、何に投資しているかの理解に重要となります。

原油タンカー専業(EURN, DHT, NAT)やプロダクトタンカー専業(STNG, TRMD, ASC(プロダクトタンカー以外にケミカルタンカーがあり複雑だが、そこまで勉強できないのでとりあえずプロダクトタンカー)はわかりやすいが、両方を持っているのはどう考えればよいのと思われるかもしれません。古いデータですが、下記の記事が参考になります。

原油タンカー比率はTNK81%、FRO79%、TNP67%、INSW36%であるので、TNK FROあたりは原油タンカー寄り、INSWはプロダクトタンカー寄り、TNPは悩ましいですが、チャート的には原油タンカー寄りになっている気がします。

カンファレンスコールを読んで

さて、本題のカンファレンスコールの話に移りましょう。来週発表のTNP、再来週発表のFRO、NAT以外はすでにカンファレンスコールは終わっています。ここまでのカンファレンスコールを読んだ感想は、みんな強気。タンカー黄金時代かという印象です。もともとカンファレンスコールは企業が投資家にアピールする場なので、強気であるのが普通ですが、さらにどこも業績が上向きでそれに拍車がかかっている感じがします。薔薇色の未来が語られています。

ロシア関連

・ASC:EUの石油禁輸措置により、来年2/5までにロシアの精製品輸入を引き上げる。この影響はプロダクトタンカーの需要が7-8%増加。
・TRMD:ディーゼル貿易を完全に見直すと、トンマイルの需要が約7%増加。欧州はロシアからのディーゼル減少分は中東からの増産で補う。すでに7%のうち、3%は実現し、残り4%は中東の新しい精製能力の増強による。
・STNG:欧州で行っていた航海について、ロッテルダムから往復10日かかっていたものを中東から運ぶと40日かかる。2/5に向けて、大きな影響を与えることは間違いない。
・DHT:欧州からの輸入の輸送距離は、バルト海からの輸入の7倍から11倍になる可能性がある。
・TNK:ロシアのプリモルスク港からロッテルダムまで約4日なのに対して、ヒューストンからロッテルダムまで約17日。プリモルスク港からインド西海岸まで26日。トンマイル需要が大きく伸びる。最近中国政府は原油輸入枠と石油製品の輸出枠を自国製油所に割り当てた。
・EURN:EUはすでに日量約100万バレル、ロシアから迂回し、大西洋と中東の輸入に置き換える。次の四半期にはさらに日量100万バレル同様のパターン。約3-4倍の距離を移動。この傾向は7月以降顕著。

需要の増加は数%かと思われるかもしれませんが、これはタンカーの売上増が数%という意味ではありません。すでにフル稼働に近いタンカーの運用状況に、さらにタンカー需要が数%増えるということを意味します。数が限られるタンカーが取り合いとなり、運賃が大きく跳ね上がることは、コンテナなどの歴史が語るところです。

季節性:冬相場

実は季節性が結構語られています。こちらを見ていきましょう。

ASC:季節的に強い冬の市況は通常11月下旬に始まります。天候の遅れと正製品の消費量の増加が見込まれます。
INSW:製油所の計画停止は通常3-4月と9月-11月上旬に行われて、今後需要が増加。
STNG:Q3は通常季節的に弱い四半期ですが、Q4はQ3よりはるかに良いスタート。
TNK:Q4は季節的な好調な四半期

初めて知りましたが、Q4はタンカーにとって強い季節のようです。寒くなる時期で石油製品が必要になるので、原油、石油製品ともに需要が大きくなることに加えて、そもそも9-11月は製油所が計画停止する時期だったようです。たしかに、この時期のプロダクトタンカーの運賃はやや軟調だったにも関わらず、あまりプロダクトタンカーの株価は調整していなかったのは、そういう時期だと投資家はわかっていたのかもしれません。それが回復していく時期がこれからくるようです。たしかに、先週後半はプロダクトタンカーのMRで少し運賃が上がってきたようにみえます。プロダクトタンカーはここから運賃は本番なのか?2月まで期待していいのか?

製油所の変更

プロダクトタンカーと原油タンカーの違いを理解する上で、ここがポイントとなります。

STNG:製製品の世界的な受給のミスマッチはロシア関連といより、精製能力の閉鎖、構成、コランと関係がある。新しい精製所は世界的な不足を緩和するのに役立つだろう。第1に消費者から遠く離れた場所で製油所が建設され輸出される(中東)。第2に製油所の閉鎖により、輸入される(オーストラリア)。
・ASC:中東とアジアで輸出向けの製油所能力が引き続き増加し、欧米の製油所閉鎖もあり、トンマイルは強いと予想。
TRMD:2020年以降日量200万バレル以上閉鎖。さらに日量100万バレルの能力が停止される危険性がある。影響を受けるのは、オーストラリア、ニュージランド、南アフリカといった石油精製品の輸入量が多い地域。これにより、トンマイル需要は今年2%増加が見込まれる。これらは主に中東、中国、インドでの日糧400万バレル以上の新しい生産能力で補われる。今後数年トンマイルにプラス。

大きなトレンドとして、製油所の場所が変わろうとしている時期にあります。これまでは消費に近い欧州、日本などにあったものが、設備の老朽化もあり閉鎖され、中東、中国、インドに最新設備を作ってそこで作ろうとしています。大きな変化です。特に中東で石油精製品を作って輸出するようになると、これまで原油を中東から製油所に運んでいたものが不要となり、逆に石油精製品を中東から消費地に運ばなくてはならなくなります。これが数年単位の動きとして起こってきます。これは明らかにプロダクトタンカーにポジティブに働きます。

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