「ハイキュー」から考える人材育成
本日はめちゃくちゃ書きたかった内容を。
「ハイキューから考える人材育成」について書いてみようと思います。
大層なタイトルですが、私がハイキューを読んでて、「ハイキューで出てくるこのシーンって、根拠のある人の成長プロセスを描いたシーンとして秀逸だな〜」と思ったことを書いていくだけです。
現在アニメも4期をやってて、激アツです。
11月4日には最終巻が発売予定。。。今から楽しみで、でもちょっと寂しい。。。そんな感じで書いていきます。
※本記事はハイキューのネタバレが入っていますので、ご了承下さい。
最高の「トス」とは?
スポットを当てるのはこの人。
天才セッター影山です。
影山はこのハイキューという作品を通して、ずっとあることを考え続けています。それは、、、
良いセッターとは?良いトスとは?
です。
影山には中学時代にトラウマがあります。影山はセッターとしての技術がありすぎた故に、中学時代のチームメイトとは足並みが合わず、チームとしては成立しないプレイをしてきました。
彼がスパイカーにあげるトスは「技」としては相当なものですが、スパイカーはそのボールに合わすことが出来ません。それでも彼はチームメイトに合わせてトスの精度を落とすことはしない結果、、、
トスを上げた先には誰もいませんでした。自分が上げたトスにスパイカーが跳んでくれない、これはセッターとして相当ショックな経験だったはず。
彼に取ってこれは1つのトラウマとなります。
そして、烏野高校に入学して、色々な人と出会い、「セッター」としてのあり方を考えるようになった影山。特に日向との出会いは彼のセッターとしての在り方を大きく変えていきます。
チームメイトに合わせるトスをあげるため、チームのスパイカーとコミュニケーションを取り始めます。
セッターとして成長することに貪欲な影山は、自身の過去から、色々な人から学び、スパイカーが打ちやすいトスをあげようと、スパイカーに合わせようと努力をするのです。
「トス」に関して作中の中で、烏養前監督がこのように言います。
「スパイカーが打ちやすい」以上に最高のトスは無えんだよ
影山は、「スパイカーのためのトス」を上げようと努力を続けます。
特に、日向に上げた「スパイカーの最高到達点=ボールの最高打点」トスは痺れましたよね。
(ここ、ホンマにかっこいいんですよね〜。何回でも見れる〜。)
宮城県大会で優勝し、全国大会出場を決めた烏野高校。影山は「セッターとしての実力」を認められ、全日本ユース強化合宿への召集がかかります。
全国レベルのプレイヤーと一緒に練習をして、「周りの上手さに引っ張られる」と喜びを感じる影山。そんな中「高校NO.1セッター」との呼び声高い
宮 侑(みや あつむ)からこんなことを言われます。
プレーは大分おりこうさんよな
影山はこの「おりこうさん」の意味がわからず考えます。
この「おりこうさんよな」ってのは、影山は「スパイカーが打ちやすいトス」を追求するあまり、影山からスパイカーに対して要求をすることなく、「スパイカーの最高到達点より下の到達点に合わせてトスをあげていた」ということだと解釈しています。宮は影山のプレイを見てこれを見抜いたんですね。
実際に烏野内においても、チームメイトの月島の最高到達点はもっと高いのに、影山は月島の最高到達点を見誤っていました。月島は自身の最高到達点より低い高さのジャンプを行い、影山はその到達点に最高の高さで合わせます。
図にするとこんなイメージです。
トスの高さを正確に操れる影山だからこそ、毎回同じ高さにトスをあげる神業が月島の最高到達点を下げていたとも考えられます。
あくまで「スパイカーに合わせる」を行った結果の「おりこうさん」です。
ここで改めて、烏養前監督が言った言葉を考えてみます。
「スパイカーが打ちやすい」以上に最高のトスは無えんだよ
なぜ打ちやすいトスが良いのか?それは打ちやすい方が決まるからです。
スパイクは点を取るためのものなので、「打ちやすい=簡単に打てる」の前にもう一つ考えることが、「どんなスパイクが決まりやすいか」ですね。高い打点でスパイクを打てた方が、ブロックの上を抜ける確率も上がりますし、空中競技のバレボールでは基本的に有利です。勿論、常に高ければ良いってものでも無いでしょうが。1番スパイクが決まりやすいトスを上げれるか、スパイカーの打点を高くして、その打点にあったトスを上げる。
これこそが、「最高のトス」だと思います。
高いトスを上げることは、スパイカーの最高到達点を引き上げます。高いトスなので、高く飛ばないと届かないから当然です。
つまり、意図していつもより高いトスを上げることはスパイカーの成長にも繋がるのです。
稲荷崎戦で影山は、月島に対して「月島に合わせるトス」ではなく、
「ここまで来い」と要求するトスを上げます。バレーボールは試合中に何回も飛ぶため、全力で跳んでいると徐々に疲れてきます。それでも影山は勝つために要求をしました。結果、月島の打点を引き上げます。
スパイカーのギリギリの可能性を見極めて、その力を引き出すトスを上げるのがセッターであるということを自身で示した影山の「脱おりこうさん」のシーンです。
高いトスをあげる=難しい課題を経験させる
ここまでハイキューについて書いてきましたが、この影山が考えていた「良いトスとは?」という命題は、私たちの普段の仕事の中でも出てくる命題であり、特に人材育成を考える上では重要で真摯に向き合わなければいけないことだなと感じました。何が言いたいかと言うと、、、
低いトス=簡単に出来る仕事ばっかり与えていませんか?
一見、「その人のパフォーマンスに合った仕事」を渡しているように見えても、その人の本来のパフォーマンスを下に見誤っていると、ストレッチは効いてないので、いくら仕事を与えようとも本人の成長には繋がりません。いわゆるコンフォートゾーンにずっといる状態です。
当人の高いパフォーマンスを想定して、その遂行能力に対して難しいと思える仕事を与えていることが当人の成長にも繋がるし、結果組織として高いパフォーマンスを発揮する=試合に勝てるのです。
※コンフォートゾーンとストレッチゾーンの説明はこちらから。
また、その人の最高のパフォーマンスに合った難しい課題を実際に与えること(高いトスを上げて高く跳ぶ経験をさせること)が本人の成長に繋がるのは、「経験学習モデル」「7:2:1の法則」などと合わせて考えると、よりしっくり来ると思っています。
※「経験学習モデル」「7:2:1の法則」などについて、こちらのnoteが非常にわかりやすくまとまっています。
次に「その人に取って難しい課題を与えない理由」を考えてみると、下記のようなものが出てくるのかなと思います。
・負荷をかけすぎて、しんどくなって辞められたら困る
・出来なかった時の損失が組織として大きい
・難しい依頼をして相手に嫌われたく無い、信頼を失いたく無い
ただ、上記のことばかりを考えて、相手の顔色ばかり伺って、相手が本気を出さなくても遂行できる仕事ばかりを与えていると、その人は徐々に本来の自分のパフォーマンスをセーブします。楽に流れたがるのです。
本気で人を育てたい、組織のパフォーマンスを最大化したい=試合に勝ちたいと思うなら、相手の最高パフォーマンスを見極めて仕事を与えないと、それより先が無くなります。
仕事をする人に取っては負荷が増えると当然しんどくなります。また、その仕事を与える側の人間も精神的にしんどいかもしれません。「なんでそんな無茶苦茶な仕事を渡すんだ?」と思われるかもしれないのです。
ただ、仕事を与える側は、それが「相手の成長のため」「組織の成長のため」と確信しているのであれあば、難してくてもそれを与えるべきだと思います。そうしないと、そこには個人の成長も組織の成長も無いからです。
そうしないと試合に勝てないからです。
人材を育成する側(この言い回しあまり好きでは無いが)の立場にある人が意識することは5つあるんだと思います。
まずは普段から「なぜこの難しい仕事をあなたに任せるのか」を伝える努力を怠らないこと。
常に相手の限界ギリギリを見極めて、相手への期待を要求すること
「この人ならもっと難しいことでも出来る」と信じてあげること。
伝わらず、お互いに納得できないようなら熱く議論したっていいはずです。
やってはいけないのは、その議論をサボり、ハレーションを怖がり、相手のパフォーマンスを低く見て妥協した仕事を渡すこと。
期待を超えてきたら、感謝や感情を声にして伝えること
セッター/育成担当の責務とは
こうやって記事にしてみると、当たり前のことを書いてるだけなのですが、なぜ影山がここまでのセッターになれたのか、烏野がこのような成績をおさめれたか、改めて振り返ると「影山がスパイカーと向き合うことから逃げなかったから」は非常に大きいなと。
彼はいつでも「もっと上手くなりたい」「もっと勝ちたい」という想いを捨てず、ひたむきに「セッター」として努力を続けました。
影山が本気でチームのスパイカーと向き合った結果、衝突もありましたが、烏野のスパイカー達も影山のトス(期待)に確実に応えてました。その結果影山も、烏野メンバーも成長し、チームとしても勝ちを重ねていきました。
仕事や機会を与える側の人は、相手と向き合い続けることが責務。
それが、自身の/相手の/組織の成長と結果にも繋がっていくことを、ハイキューが教えてくれたと思います。
これだけ影山について書いてきましたが、1番好きなのは月島です。笑
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