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不登校経験者インタビュー「通信制高校と資格編」

こんにちは、とまりぎクリエーターズ代表で不登校を題材にした舞台・映画『絆王子と無限の一歩』の脚本の原作の八柳まごいちです。
現在は発達障害や不登校の子が利用する「放課後等デイサービス」で働いているのですが、通信制高校で教員をやっていた時期がありました。

皆さんの中に「不登校経験者」ってどんなイメージがありますか?
一番にひきこもりを想像されている方と天才的に活躍している人を想像する人が多いのではないじゃないでしょうか。
ただ、実際は確かにひきこもりになる人も天才的な活躍をする人もいるけれど、普通に働いている人が多いです。
ので、今回は不登校経験者で教育現場で働いている人にインタビューをしたいと、通信制高校で僕が働いていた時の教え子・Mさんにきていただきました。

幼稚園教諭Mさんへインタビュー

『絆王子と無限の一歩』は元々、通信制高校の高校生たちで上映していた作品で、その時に初代ヒロインの春子を演じていただいたということで、この作品自体、Mさんの過去の不登校のエピソードを入れたりしていました。
現在は幼稚園の先生をされているということで、今回、インタビューさせていただくことになりました。

全日制の高校に通えなくなり通信制高校へ

まごいち:元々、高校生から不登校になられたのですよね?

Mさん:はい、そうです。

まごいち:不登校になって、通信制高校に通う選択肢を選ばれた時に、ご家庭で話し合ったことやも揉めたりしたことは何かありましたか?

Mさん:わたしは高校2年に入って学校に行けなくなってしまいました。親や親戚はどうにか学校に戻ってほしいということで、初めは転校という選択肢を反対していました。『不登校』って事実を認めるのが嫌だったのだと思います。だからあまり、『通信制』っていうワードは出てこなくて、「今、学校に行かないと将来困るよ」
「履歴書に傷がつくよ」みたいな、そんな感じでしたね。でも結局、知り合いの紹介で通信制高校に転入をすることになり、10年近くたった今は「あの選択肢でよかったね」と話すこともあります。

まごいち:なるほど。当時揉めていらっしゃいましたが、今では納得されていて、というところなのですね。

大学の選ぶときに大事にしたこと

まごいち:通信制高校を卒業した後は大学に入学して、ということでこの進路の選び方に自分なりに「こういう気持ちで進路を選んだ」などありますか?

Mさん:はい、親から「資格の取れる学校に進学した方が良い」というアドバイスはもらっていましたし、
資格を使って働く親の姿を小さい頃から見てきたのもありますし、資格の取れる大学に行きたいなと思っていました。資格があれば、職を見つけやすいし、将来につながるのではないかな、と思い、わたしは教育の学部のある大学を選びました。

まごいち:なるほど。通信制高校から大学に行くということで、勉強とか結構大変だったのではないでしょうか?

Mさん:そうですね、普通に高校に毎日通ったり塾に通っている子よりか、学校での勉強量やレベルが足りていないのではないか、と思うこともたくさんあったので、朝早く起きたり、夜ちょっと遅くまで勉強の時間を確保したりしていました。(また、全科目で受験、となると時間も足りなく、他の子に勉強量で負けてしまうので、
科目を選択して受験できる大学を探したりもした覚えがあります。)

まごいち:大学に行ってからはどんな大学生活でしたか?

Mさん:大学に入ってからは教育実習などで忙しくもありましたが、充実した四年間を過ごすことができました。演劇をしたり、バンドをしたり、趣味の面でも楽しく色々なことに挑戦することができました。また、当初の目標であった資格も取ることができました。

まごいち:高校は行けなくなって通信に行ったということですが、大学はうまく通えなかったとか、心理的に負荷がかかってなかなか行き渋りがあったとか、そういうことはなかったですか?

Mさん:最初は少し不安もありましたけど、仲の良い気の合う友だちができたこともあったのと、「同じことは絶対繰り返したくない!」「資格を絶対に取って卒業したい!」という強い意志を持って大学に入学したせいか、そういうことはあまりなかったですね。

まごいち:挫折を経験したからこそ、頑張るぜってみたいなところがあるのかなって思いますね(笑)

まごいち:大学生活では勉強面だけでなく、趣味の面でも色々なことに挑戦されたということですね。

幼稚園教諭、そして海外へ!


まごいち:大学卒業してからは幼稚園の先生になられたのですね、幼稚園で働いてみて、どうでしたか?

Mさん:業務の量も多くて、大変でしたけど、子どもたちはとても可愛いし、成長を間近でみることができて、やりがいのある仕事でした!

まごいち:本当にこの仕事が好きなんですね!その後、幼稚園を退職された後、海外の幼稚園に赴任、転職されたそうなのですが、どういうきっかけがあったのですか?

Mさん:この仕事、やりがいはあるのですがよく言われているように重労働で低賃金なんですよね(笑)
なので、このままいくのも嫌だなと思った時に、何か自分の武器になるものが欲しかったんです。それがたまたま語学でした。そこから英語を勉強し始めて、だんだん「現地に行ってもっと勉強したい!」と思うようになり、海外への憧れが強くなるようになりました。

まごいち:何か現状を変えるために何か武器を、ということで、武器を手に入れるために海外に行けるという行動力がめちゃくちゃすごいなと思います。

学ぶこと資格を得ることが次の舞台の切符になる!

まごいち:海外に行くとなった時に英語を勉強するとなった時に色々な方法があると思うんですよ。例えば語学学校に通うとか、駅前留学とか。でもなぜ現地で働こうと思ったのか、後は働くに当たって困ったこととか、これがあったからいけた、とか聞けたらなと思います。

Mさん:もちろん国内でも英会話スクールや英会話のサークルとか色々な方法で学習の機会を作りました。でもそれだけじゃ足りなくて、海外に飛び出して、英語だけの環境にした方が身につくのが早いのかな、って思いました。留学とかも考えたのですが、お金がかかりすぎてしまうんですよね。保育士の給料で家賃とか光熱費とか払っていたら留学の貯蓄に回すには足りなさすぎて。そこで今あるものを生かして、働きながら英語を学べるところはないかと思って就労という選択肢を選びました。ダメもとで色々なところに履歴書を送って問い合わせをしました。今考えたらとても考えも甘いしすごい行動力と思います、我ながら。(笑)

まごいち:そこで大学時代に取得した幼稚園教諭と保育士の免許が火を吹いたってわけですね(笑)
Mさん:はい、海外で働きたい!ってなったとしても、日本のように面接で採用になるだけで、いきなり働けるわけではなく、まずビザの申請があったりして、日本での経験や資格を提出して審査がされたかと思うので、そういう点では資格があってよかったなと勝手に思っています。(笑)

まごいち:ありがとうございます。じゃあ一貫して、自分でしっかり勉強してとった資格があったからこそ、いろんな逆境があっても「自分にはこれがある!」って進めてきたところですね。

海外で困ったことは?

まごいち:海外にいかれて、何か困ったことはありましたか?

Mさん:最初は現地の人の話す英語のスピードについて行くのが大変で、言葉もわからないし地理もわからないし、買い物の仕方もわからない!という感じで外に出るのがやっとでした。あと、お金の単位もよくわからないし。笑

そんな時便利だったのがクレジットカードでしたね、電車乗るのも買い物も、とりあえず携帯をピッてしたら払えたので。めちゃくちゃ便利アイテムだと感じました。笑  日本にいたときはあまりカード使っていなかったのですが、渡航してキャッシュレス決済中心の生活になりましたね。

まごいち:日本でも今少しずつ〇〇ペイとか、少しずつキャッシュレス決済が出てき始めていますもんね。もう少し広まれば、きっともっと外国から観光に来た人が買い物とかしやすくなりそうですね。

海外での交友関係の広げ方は?「美味しいご飯は共通言語」

まごいち:では、現地では交友関係はどうやって広げて行ったのですか?

Mさん:私はご飯やお酒が好きなので、日本食レストランとかに通ってお店の人や常連さんと仲良くなって、そこから友達の話を広げていきました。日本食好きな外国の方って、日本に興味がある方が多いので、私が簡単な日本語を教えて、私はその人から英語を学ぶ、という方法を取っていました。美味しいご飯と美味しいお酒って世界共通なのでね!笑

まごいち:ご飯の効果絶大ですね。笑  でも素敵なだって思うことは、日本語教えるから英語教えて、ってそういうコミュニケーションがとっていけるのがすごいなってめっちゃ思います。

まごいち:で、現地で出会った方と結婚されたのでよすね.

Mさん:そうなんです!

不登校だったことって大人になって気になるの?


まごいち:旦那さんは普通に学校にいかれていたのですよね?不登校の経験者とかではなく。お二人の会話の中で過去を打ち明けたりとか不登校の話になったりとか、しましたか?無理にカミングアウトする必要はないと思うのですが。

Mさん:さらっとは話をしたことはあるのですが、本当にさらっとです。なにせもう十年近く前の話になるので、私もよく覚えていないというか、その先の大学や社会人になってからが濃かったので、特に「実は・・・」って話すことでもないかなと思っています。隠しているわけではないですが。

まごいち:ありがとうございます。じゃあ結婚生活上、元不登校だから何か困ったということはないのですね。

Mさん:ないですね。

『絆王子と無限の一歩』の映画化について

まごいち:高校生に関わっていた舞台が今回映画化されるということで、何か感想や思うことがあったら教えてください。

Mさん:初演から8年?9年経ちますが続いているのが単純にすごいなあ、と思います。

まごいち:当時舞台に立っていたとき、どういう思いでやっていたの?覚えてますか?

Mさん:当時は本当にただただ必死でした。今ならもっとここをこういう表現にしたのにな!とかありますけど。笑 今ではもう大人なので、春子の気持ちだけでなく、お父さんや先生の気持ちも今ならわかる気がします。

まごいち:無理矢理学校に連れて行こうとしたお父さんの気持ちですよね。

Mさん:はい。

まごいち:大人になるにつれて、大人側の事情がわかるっていうところはあるかもしれませんね。

好きなことや得意なことがないからこそ世界へ


まごいち:最後に読者の方へメッセージをお願いします!

Mさん:大学に行っても、社会に出ても、ずっと上手く行っていたわけではなくて、合わない人もいたし意地悪をしてくる人にも出会いました。でも、海外に行っていろんな世界を知って、視野が広がったら、過去の悩みなんて小さいことだったのかなって思いました。絆王子の登場人物のヒバリくんや星奈ちゃんは「やりたいことがあったらやるだけ!」みたいなことを言っていたけれど、私には元々好きなことも得意なことも、やりたいこともありませんでした。
でも自分の環境を変えてみたら、何か変わった気がします。それが私は海外に飛び出す、ということでした。思い切るっていうのは時に大切だなって思います。ぜひ今悩んでいることがあるひとは、ただ頭で考えているだけでなく、行動してみて欲しいなと思います。それが解決につながらなくても何か変わるきっかけになるんじゃないかなって思います。

まごいち:とても良いメッセージありがとうございます!

告知!映画『絆王子と無限の一歩』

Mさんを始め、不登校経験をされた方の実体験がつまった映画『絆王子と無限の一歩』のクラウドファンディングが10/31まで開催中です!
もし、この記事を通して関心を持っていただけたら、
ご支援をいただけるとさいわいです。

とまりぎクリエーターズ公式サイト
https://tomarigi-c.jimdofree.com/


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