[短編]お菓子な王国
海の向こうにお菓子を作るのが趣味な王様がいました。
昔からそうだったわけではなく、お隣の国からやってきた使節が、最新のお菓子作りを伝授したんだそうです。
王様はお菓子作りが大好きになり、朝から晩までたくさんのお菓子を作りました。
そんなにたくさんお菓子を作って、どうするの?
王宮会議が開かれて民衆に無料で配ることに決まりました。カイシャやガッコーや様々な組織を通じて、お菓子が民衆全員に行き渡るような仕組みが作られました。
ただ多くの民衆は、はじめのうち半信半疑でした。そんなお金があるのなら、まず貧しい人たちにまともな食事を提供すべきですし、まもなく開始される増税をやめて欲しかったからです。
民衆の反応が鈍いとわかると、大臣は民衆の要望に応えようとはしないで、宣伝活動に力を入れることにしました。
「このお菓子を食べれば病気にかからない!」とかね。
そんなことを突然云われても、にわかには信じられませんが、テレビンでセンモン屋が合唱し、カイシャやガッコーに圧力を掛けると簡単に状況が変わりました。結局、多くの人がお菓子を受け取ることになったんです。何しろ無料ですし、たとえ効き目がなくても損はないだろうと、皆、自分に云い聞かせたようです。
とくに村では皆が足並みを揃えますから、おふれが届くと、村人全員がお菓子を食べました。おふれには小さな文字で「キョーセーではありません」と書かれていたんですけど、読みませんよ。そんなとこまで。
中には、お菓子を食べてお腹を壊す人もいましたが、何しろ王様のお菓子です。めったなことは云えません。お菓子の配布は、とてもスムーズに運びました。
そのことに気を良くしたのか、はじめからそういう計画だったのか、お菓子の配布は一度で終わらず、二度三度と続きました。こうなると王国の行事です。
ところがそれでも、お菓子はまだ大量に余っていたようで、今度は「ポイントが貰える」というキャンペーンがはじまりました。
ポイント目当てでお菓子をたくさん食べる人が出てくる?
心配ご無用。ヤクニンはちゃんと先手を打っていました。その人がこれまでにお菓子をどれだけ食べたか、スマホに表示される仕組みになっていたのです。いったいどうすれば、そんなカウントが出来るのか不思議ですねえ。
キャンペーンは、さらに続きました。
「お菓子を食べてない者には、高い税金をかける!」
「お菓子を食べてない者は、牢屋に入れる!」
そんな法案まで審議されるようになったのです。
どうやら、お菓子を食べなかった人たちがいたようです。一般の民衆は、「え、食べなくても良かったの?」「食べてない人がいるんだあ」とキツネにつままれたような気分でしたが、まもなく状況が判明しました。
王宮で、ヤクニンやセンモン屋が血相を変えて反対したからです。これまで文句一つ口にせず、忠義を励んできた彼ら彼女らでしたが、どうやら今回のお菓子は食べなかったようです。どうしてどうして?
まもなく週刊誌が、その理由をスクープしました。
王様のお菓子は身体に良いどころか、良くない成分が入っていたんだそうです。彼らはそれを知っていたから食べなかったんだとか。民衆にはお菓子を食べるよう奨めておいて、それはないですよね。
こうなると、王宮の人たちと民衆の間には大きな溝が出来てしまいます。
実際、王宮の人たちが民衆に「一緒に抗議しよう」と呼びかけても、応じる人はほとんどいませんでした。
ところで、王様は?
ここから先は、うわさ話になります。なにしろ王宮の奥のことですから。
ある高級ヤクニンが王様に直訴しようと無断で奥の扉を開けたところ、そこにいたのは大臣ひとり。肝心の王様の姿は見当たらず、大臣は電話の相手にペコペコ頭を下げて指図を受けていたんだとか。大量のお菓子を作るような設備も材料もなかったそうですよ。
そりゃあ、そうですよね。いくらお菓子作りが大好きな王様でも、国中に配れるほどたくさんは作れません。
その後、どうなった?
実は怖くて、ここから先は読んでいないのです。
だって、この王国のお話、次のページで終わるんですから。
たった1ページで、ハッピーエンドになると思いますか?
悪いことは想像したくないですけど、この流れだと作者はあきらめてるようです。もしかしたら「そんなわけで間もなく王国は滅びました……」なんて結末になっているのかも。そんなのイヤですよね。
ですからね。こう思ったんです。
読んで絶望するよりは、自分で明るい結末を考えようって。
たった1ページでハッピーエンドにするには、ヒーローを待ってる時間はないんです。みんなが気づいて、セーノで変えるしかないんですよ。
オカシナ王国を!
王様のお菓子にはたくさんお砂糖が入っていました。
お砂糖って、合法的なもので最大の毒なんだそうですよ。
癌の一番原因もそれだという人がいるくらい。
自戒のために書きました!
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