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なぜ僕らは働くのか

池上彰さん監修の中学生から高校生向けのキャリア教育本です。11歳の長女のために買ったのですが、思ったよりも内容が興味深く、私も学ぶことが結構ありました。

例えば、『好きを仕事にするか』『仕事を好きにするか』というのはキャリア教育を行う自分にとっても大きなテーマです。総じて子供たちの世界は狭いので、「好き」を「仕事」に結び付けがちです。例として、ディズニーが好きすぎて、将来オリエンタルランドで働きたいという女子は毎年必ずいます(成績優秀な生徒であっても)。そのためにディズニーでインターンのできる大学への進学を希望するなど、非常に狭い視野で将来をとらえている生徒もいます。

難しいのは、子供たちが自分の夢や将来のビジョンを持っている場合、それらをむやみに否定したりできないことです。上記のディズニーの例に限らず、彼ら彼女らとしては本気で考えていることですし、もしかしたら本当に夢をかなえて幸せになるかもしれないからです。一方で、大人としては現実がそんなに甘くないことも、世界は広く、さまざまな選択肢が存在することも教えてなくてはいけないので、その伝え方に気を遣います。

言うまでもなく「好き」を仕事につなげるのは素敵なことですが、「好き」を生かせる仕事は一つだけではありません。サッカーが好きだとしても、サッカー選手になるだけが唯一の道ではなく、サッカーに関連する様々な職業があります。(ちなみに私は幼少のころからサッカーをやっていましたが、高校時代のサッカー部の後輩が今Jリーグのチームでトレーナーをしていたり、当時のマネージャーの女の子がサッカー雑誌の編集をしていたりして、すごいなぁと思います)

また、本書では『「好き」と「やりたい」だけではやっていけない』というシビアな提言もしています。『どんな仕事であれ、「好き」や「やりたい」をすぐに実現できると思わないほうがいいでしょう。長い目で自分を見て、まずは目の前にある仕事を一生懸命やることです』といったようにしっかりと現実を見させてくれるのもこの本の良いところでしょう。(新卒一括採用や終身雇用などのシステムがオワコンだということにも触れています)

「好き」を仕事に混ぜ込んだり、「好き」を突き抜けて極めたり、仕事にはいろいろな形があること。そして大人になってもやりたいこと探しは続いていくこと、など色々な視点からキャリアについて語られており、子供にとっては非常にわかりやすいです。

余談ですが、「天職」を英語では”calling"(呼ぶこと)と言います。これは神様のお告げによってその職に呼ばれ、導かれるという意味で、宗教的に意味合いがあることを初めて知りました。ちなみに私は今の教師という職業を自分にとって天職だと思っているので、これも神の思し召しなのかもしれません。(無神論者ですが・・・笑)

また、この本では就職してからの仕事に対する向かい合い方も指南してくれています。『良いガマン』と『悪いガマン』を例に出し、ブラック企業などで精神的・肉体的につらいだけのガマン、やりたくないことや社会的に悪いことを無理やりやらされるガマン、はしなくていいと書いているのも興味深いです(辞めるか労基署に行くように指示しています)。

そして、スタンフォード大学のクランボルツ教授の「計画された偶発性理論」も引用していて、子供用の本と侮ることはできません。この理論は簡単に言うと、『良い生き方・働き方ができる人は、いい偶然を自分の力でつかめる』ということです。そしてそんな人になるために大事な行動要素が5つあると言います。

①好奇心
②持続性
③柔軟性
④楽観性
⑤冒険心

これらは自分の夢ややりたいことを探している子供たちや若者たちだけでなく、今働いている我々大人にとっても大事なことだと思います。逆にこの5つの要素を持って仕事に臨むことができれば、仕事が楽しいのではないかなと思います。

そして、下記のスティーブ・ジョブスの言葉の引用などを読むと、もうむしろ子供じゃなくて大人のために書いているじゃないかという気さえしてきます。

もし今日が最後の日だとしても、今日やろうとしていることをするだろうか。「違う」という答えが何日も続くようなら、ちょっと生き方を見直せということだ。

命がいつか果てる人間にとって、時間をどう使うかというのは命をどう使うかと同じことであり、有限の時間を自分でコントロールすることの大切さを改めて教えてくれます。(このコンセプトはホリエモンも↓の本の中で一生懸命書いていました)自分の人生の主役は自分であり、生き方の決定権は自分にあるということ。それをしっかりと理解していれば、ブラック企業で搾取されるだけの人生など送らなくて済むはずです。

最後にこの本の最終章では「いまあなたたちに伝えたいこと」というタイトルで、さまざまなことを教えてくれます。それが常に自分が思っていることだったりするので、ちょっと感激しました。

例えば、「勉強や学校は何のため」というテーマの中では、『学歴は大事だがすべてではない、一番大切なのは自分が何をやりたいか、ちゃんと考えていきているかどうか』だと書いています。また、学校に行かなくても生きていく道があることを示し、不登校の子たちにも希望の光を与えています。

そして、「自分の人生に向き合おう」というテーマの中では、一人になって考えることの重要性を説いています。自分一人で過ごす時間を持つことで、人間は成長し、自分の人生をどう生きたいか真剣に考え始めた時から、大人の仲間入りだとのこと。また、『大切なのは「自分の人生に責任を持てるのは自分だけだ」と気づくこと、そして「自分で自分の人生を作るんだ」と覚悟すること。あなたの人生の主役はあなたです。自分の人生を納得できるものにしましょう』とも書かれていて、これってもう自分に言われている気になっちゃいました(笑)

というわけで子供よりもむしろ自分にガンガン響いてしまったこちらの「なぜ僕らは働くのか」でした。お子様がいる方はお子さんに買ったついでに自分も読んでみるとよいかもしれません。仕事に対するモチベーションが上がるのではないかと思います。

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