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【Edge Rank 1056】この本のこと【TOMAKI】

なにやらここ5年ほど毎年恒例のようになっていますが、またこの春の季節にKindle本をつくっていて、もうすぐ完成する予定。その流れで、来週は「本づくり」をテーマにした勉強会を開催します。そんな中、ビブリオバトルに参戦したり、お気に入りの本を持ち寄って屋上で焚火を見ながら語る会に参加したり、手づくりの本の作品展をブックカフェに見に行った後に自分でも文庫上製本にチャレンジして手製本の面白さに目覚めたりもしていて、このところ本にまつわる活動が多めだなぁと思っていたら、今月のEdge Rank共通テーマは 「本」ということで。ちょうどぴったり。それでは、Edge Rank 4月14日号、日曜アーティスト TOMAKIの回です。

何度も読み返す『アルジャーノンに花束を』

もともと本が好きなので。子どもの頃から多読濫読でいろんな本を読みまくってきました。小学生の頃は月に一回やってくるマイクロバスの「移動図書館」が楽しみで、絵本や児童書など月替わりでいろいろ借りつつ。中学で面白い国語の先生と出会ってから読むだけでなく書くのも好きになり。高校時代は休み時間はもっぱら図書館が居場所でした。実は、高三の秋に大学受験を放り出していきなり行ったこともないアメリカへの留学を決意したのは、当時の担任の先生に「本はいつでも読めるんだから、受験勉強に専念しなさい」と言われてカチンときたが理由のひとつだったりします。

受験勉強と読書、どっちが大事かと言えば、僕にとっては読書だったんですよね。人生の大切なことは、みんな本から教えてもらったから。今しか読めない本ってあると思うのですよ。そんなわけで、地元の国立大学を受験する予定で高三の10月くらいまで普通に模擬試験を受けてましたが、そこから完全に留学へと切り替えました。

ちょうどその当時、英語の勉強をするために英語で書かれたペーパーバックの小説を何冊か買いました。その中のひとつが1966年にアメリカの作家ダニエル・キイスによって書かれたSF小説『Flowers for Algernon(アルジャーノンに花束を)』でした。主人公のチャーリー・ゴードンは、普通の人よりも知能は低いですが、みんなに愛されつつ、時にはからかわれたりもするけど、まじめにパン屋で働く青年。ある日、頭が良くなる手術を受けます。この小説は、彼がその手術後に書いた日記の形式で進行していきます。

最初は子どもの作文のような文章だったのが、だんだんと語彙が増えて表現も豊かになり、知的で洗練された文章になっていくんです。その時ちょうど僕は留学のために英語の勉強を頑張っていたのですが、まだまだ英語力が足りなかったために途中でチャーリーの書く日記の英語レベルに追いつかなくなり、分からないながらもなんとか頑張ってその本を読破したのを覚えています。僕にとってこの本は、英語の原書で読みきった最初の長編小説です。

2回目にこの小説を読んだのは、僕が留学をしてアメリカに住んでいた頃。その頃には、自分の英語もだいぶ上達していて、大学レベルの授業も普通に理解できるようになっていました。なので、その時はチャーリーが知能の絶頂に到達した際の文章もわりとすんなりと頭に入ってきて(読んだのが2回目だったというのもありますが)、まるで自分もチャーリーのように頭が良くなる手術を受けたかのように錯覚して愉快でした。

以来、定期的に何度もこの本を読んでいます。そのたびに、自分が共感できる部分が変わったり。新しい発見があったり。違うところで感心したりなど。25年前に読んだのはペーパーバッグでしたが、最近は電子書籍でも読むことができたり。Audibleの音声ナレーションではウォーキングをしながら耳で読書ができるので良いですね。

ちょうど先週末、神田小川町にある「優美堂」でお気に入りの本を持ち寄ってプレゼンをする「ビブリオバトル」のイベントに参加してこの本に関する上記のような思い出をプレゼンしました。今でも時々読み返す、個人的に思い入れもあってとても好きな本です。

旅をしながら読む『檸檬』

もうひとつ、たびたび読み返す本があります。梶井基次郎さんの『檸檬』という短編小説があり、その作品名を掲題にした短編小説集の本。

一番最初にこの本を買ったのは1998年頃、ロサンゼルスに住んでいた時にリトル東京の古本屋さんだったと思います。今でも手元にあるのですが、昭和25年に発行され、昭和35年に9刷として出版された文庫本で、表紙や本文がすっかり日焼けで変色していて古い紙の匂いがします。旧仮名遣いで、改行が少なめの文体で細かい文字がびっしりと印字されている、いかにも昭和という感じの本です。

僕はこの本がとても気に入っていて、旅行をするときなどによく持ち歩いていました。短編集なので、ちょっとした隙間時間に読みやすいんですよね。表題の『檸檬』の他にも、複数の短編小説が収録されているのでどこからでも読める。文庫本なので小さくて持ち歩きにも便利で、旅のお供という感じいろんな旅に連れて行って、新婚旅行のモルディブなどでも海に浮かぶコテージで読んだりもしつつ、いつの間にか「旅と言えばこの本」というような感じに。

ある時、福島へ旅行した時だったと思うのですが、この本を持っていくのを忘れたんですね。そしたら、旅先でなぜか無性にこの本が読みたくなってしまって。駅の本屋さんで探して、『檸檬』の文庫本を新たに買ったということもあります。

その後、Kindleでも購入したので、本を忘れてもスマホがあればいつでもどこでも読めるようになりました。昨年、神田小川町にある三省堂書店本店仮店舗で、きれいなレモン色の特別カバーの本が売られているのを見つけて、思わずそれも買ってしまい、また家にある『檸檬』が増えてしまいました。

本づくりを学ぶ勉強会(電子書籍と手製本)

2月頃から、本に関する個人的な思い出をnoteで書き綴っていて、その中でも『檸檬』や『アルジャーノンに花束を』に関する記事を書いて投稿しているのですが、その記事数がもう少しで30本になります。これが40本に達したら電子書籍にまとめて、Kindleで出版しようかなと思っています。

「この本のこと」というタイトルで、noteのマガジン機能を使って記事をまとめていますので、よろしければどうぞ。有料のマガジンですが、無料でもだいたい読めます。

そして今回も、本づくりに使用した原稿や、表紙のデータ、プロジェクト管理に使ったnotionや、データづくりに使用したGoogleの無料ツール、スマホで執筆・編集する方法なども含めて、全部まるっとシェアする勉強会を開催します。

「本づくりを学ぶ勉強会」ということで、2018年から毎年開催しているもので、その勉強会に先立っていつも本をつくっています。なるべく簡単に、手間をかけずに、つくりたい本をつくるというもの。そのやり方のヒントを参加者のみなさんと共有しています。

今年はさらに、最近私がハマっている「手製本」のワークショップも組み合わせて、デジタルの本だけでなく、リアルな紙の本を自分の好みにリメイクするというのにもチャレンジする予定です。「文庫上製本」というスタイルで、文庫本をハードカバーにカスタマイズする工作ワークショップ。さてさて、うまくいくか。今、準備を進めています。

改めて思うのは、私は本が好きです。読むのも、そしてつくるのも。そういえば、学生の頃に製本工場でバイトをしていたこともあります。あれも、いわば本づくりでしたね。大学でアートを専攻した際に、写真や版画、紙づくりなどを学んだのも、本づくりに生かせそうだなと思います。

あらめて、本って人間が生み出したすごい発明であり、奥の深い文化だなぁと思います。

=== 今月のテーマであなたも書きませんか? ===
今月のEdge Rank共通テーマは 「本」 です。4月23日に「サン・ジョルディの日」があるの、ご存じですか?親しい人に本を贈る、スペイン・カタルーニャ地域に伝わる風習らしいですよ。それに敬意を表し、Edge Rank関係者がどんな本に興味を持っているのかを確認すべく、共通テーマにしてみました。気になっている本、ぜひ教えてください。書籍の形をしているもの、電子書籍、雑誌、フリーペーパーもよしとしましょう。どんな文字や写真に興味があるのかな。
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内容によってはEdge Rankで取り上げさせていただくこともあります。

編集後記

両親が今年結婚50年で「金婚式」ということで、そのお祝いに久しぶりに長瀞の実家へ帰省しました。せっかく来たので、秩父のパワースポットを訪れようかなと思い、とりあえず宝登山神社に参拝してロープウェイで山頂と奥宮に行くところまではなんとなく計画してましたが、その後は行き当たりばったりで次の目的地を目指しながら移動していたら、なんと秩父神社と三峰神社の両方を訪れることができ、1日で秩父の三大パワースポットをコンプリートできちゃいました。しかもこの日は、一粒万倍日だったらしく、なにやらものすごいご利益がありそうです。

今回も、お読みいただきありがとうございました。
次号は、「東京散歩ぽ」の中川マナブさんです!

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「日曜アーティスト」を名乗って、くだらないことに本気で取り組みつつ、趣味の創作活動をしています。みんなで遊ぶと楽しいですよね。