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【体験談】金融系システムエンジニアのキャリアに潜む落とし穴~メインフレームの罠~

 あなたが金融、官公庁系システム開発のエンジニアを志望して就職活動、転職活動をしているならば、この記事を読むことは無駄にならないはずだ。

 私は新卒で金融系システム開発のエンジニアとして就職して数年間勤務後、転職した。転職を検討した理由の一つが「メインフレーム」だ。就職時にメインフレームについて無知だった私が知るべきだったことをここに記したい。

対象読者は以下の通り。
・システムエンジニア志望者
・特に金融、官公庁系システム開発企業のエンジニアを志望する方
・「メインフレーム?何それ?」という方

メインフレームとは「負の遺産」

メインフレームとは、大型のマシンと、それネットワーク接続された操作用の端末で構成されるコンピュータを指す。業務処理用のコンピュータとしては、情報処理産業が興り始めた時期に普及したものであり、大企業や官公庁などの基幹システム(土台となる重要なシステム)で用いられることが多い。

ちなみに、現在の主流である小型コンピュータを複数接続して構成されるシステムをオープン系または分散系という。

金融系企業にはメインフレームで構築されたシステムが未だに多く、私が在籍していた会社も例外ではなかった。具体的には、アセンブリ、PL/I、COBOLといった言語を、いかにも前近代的な黒い画面(TSO:Time Sharing Optionと呼ばれるターミナル)で操作していた。

もしあなたが情報系以外の学生なら、何を言っているか分からないだろう。あまり上手い例ではないが、スマートフォンの普及したこの時代に、黒電話しか使えないような感覚だと考えて欲しい。

もちろん、信頼性や堅牢性の高さなどメリットはある。しかし、私に言わせれば古いシステムの象徴であり、扱いづらい「負の遺産」であると言える。

古い技術ゆえに扱いづらいメインフレーム

メインフレームで開発されたシステムは、半世紀前から稼働している基幹システムが多く、当時はコーディング規定もいい加減なため、「誰も理解できない」カオスな状態となっていることは決して珍しくない。

もちろん、あなたが配属される部署によっては、メインフレームを扱うことが無い可能性も十分にある。しかし、一たびメインフレーム案件を任されてしまえば、以後「メインフレーム担当者」の刻印を押され、古くてカオスなシステムを押し付けられてしまいかねない。

また、メインフレームを扱える技術者は50、60歳代のベテラン層が中心であり、若手の技術者は非常に少ない。例えば、あなたがメインフレームの担当者になった場合、数年でこれらのベテラン技術者が続々と引退してしまい、「自分以上に詳しい人がいない」状況に陥ってしまう懸念がある。

ミスの許されない金融、官公庁システム開発において、「自分が一番の有識者」という立場はプレッシャーが大きい。ベテランの技術者ならまだしも、経験年数が浅い若手技術者にとっては、この役割は荷が重い。例えば、そのシステムに関する問い合わせ、障害対応、開発レビューがある度に呼び出され、発言内容には責任が求められる。

若手のメインフレーム技術者はキャリアが詰む可能性がある

極めつけは、メインフレーム開発の経験を積んでも、エンジニアとしてのキャリアの選択肢が広がらない点だ。前述の通りメインフレームは古い技術であるため、各企業がリプレース(つまり新しい言語で作り直すこと)を進めている。また、最近構築されたシステムは当然、メインフレームなど使っていない。もし、あなたが数少ないメインフレーム技術者として経験を積んでも、いつかはメインフレームのシステムが無くなってしまうし、他の企業でも役に立たないスキルになってしまう。

結論:メインフレーム開発の業務は避けるべき

いかがだろうか。
あなたが既にメインフレーム開発の経験を持っており、「そんなことは十も承知」と言うのであれば良いかもしれない。しかし、あなたが「メインフレーム?何それおいしいの?」というレベルであれば、メインフレームの担当者になってしまうことは絶対に避けた方がよい。

特に金融、官公庁系システム開発エンジニアを志望する方の就職活動、転職活動においては、「メインフレームのシステムはありますか?」と確認しておくとよい。もしその答えがYesであるならば、メインフレーム開発担当者となる可能性があることを覚悟する必要がある。入社時の配属はオープン系でも、いずれは部署異動でメインフレームを任される可能性があるからだ。

私が就活生に戻れるならば、メインフレームを扱っている企業は就活候補から外すだろう。ただし、メインフレームを扱う企業は、待遇面が魅力的な場合もある(特に金融系は待遇が良い傾向にある)。待遇に魅かれて志望する方をあえて止めはしないが、この記事で述べたリスクについては是非把握して頂きたい。

とは言っても入社後、メインフレーム担当者の不遇に絶望し、転職を検討する可能性は大いにある。私自身がその一人である。

若手のメインフレーム技術者がメインフレームから脱するためのキャリアパスについても、いずれ書いていきたいと思う。

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