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書評 パパの電話を待ちながら」(講談社文庫)

ジャンニ・ロダーリ著、内田洋子訳、「パパの電話を待ちながら」(講談社文庫)

この本は、セールスマンのビアンキさんが、自分の幼い娘のためにつくったお話を集めたものです。
ビアンキさんは、7日間のうち6日間出張している忙しいセールスマンですが、毎晩9時になると、どこにいたって必ず電話をかけて、娘にお話をしてあげます。今日はどんなお話を聞けるのかと、女の子は毎日わくわくしながら成長していったことでしょう。
同じようにビアンキさんも、今日はどんなお話をしようかと、お話の種をさがしながら、楽しい毎日を過ごしたに違いありません。
 
J・M・バリーの「ピーターパンとウェンディ」で、子どもたちはみんな大人になり、『だめになって』しまいます。どれほどだめかというと、ふた子やニブスやカーリーは、毎日、小さいかばんを持って会社にいくようになってしまいます。トートルスは裁判官になってしまい、ジョンにいたっては、『じぶんの子どもに話す話をすこしも知らない』ほどだめになってしまうのです。
 大人は、人を、その仕事と地位で判断しがちです。ですが、人生を楽しんでいるかどうかという価値で見れば、その人が子どもに話すお話を知っているかどうかのほうが、まっとうな基準だといえます。
お話をたくさんすることのできるビアンキさんは、いい大人の見本といえるでしょう。

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