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衝動性の時代は終わり②"ゴールのサイズ"と"ポテンシャルエネルギー"

前回の記事では、
・パワーダイナミクス
・"心を操縦する力"
・"ゴール達成能力"
をお伝えしました。

カリフォルニア大学サンディエゴ校のラディ・スクール・オブ・マネジメントと、テキサスA&M大学の研究では、3500人の被験者と7つの実験により、高いレベルの自制心(心を操縦する力)を持つ人が、より強力なリーダーシップの役割に適していることを実証しました。

この研究は、1959年に社会心理学者のジョン・フレンチとバートラム・ラーベンが提唱し近年まで信じられてきた"パワーダイナミクス"の認識を覆し、"心を操縦する力"の重要性をより強く示唆しています。

ストレッチ目標

ストレッチ目標とは、個人や組織において背伸びをして工夫することでようやく手が届くような難易度に設定された目標のことを言います。

もっと簡単に言えば、"到達しにくい目標"ということです。

ラディスクールの博士課程の学生であるShuang Wuは、「ストレッチ目標を設定し、それを満たさない場合、簡単な目標を達成している人よりも他者から力強く見えなくなることがわかった」と述べています。

上記の論文から考察すると、他者から権力者と見られるためには、個人のゴールや組織のゴールは、小さければ小さいほど良い(現状で達成できる範囲内のゴール)ということになります。

この研究の主軸は、"他者からどう見られるか"という部分ですが、実際には、現状で達成できる範囲内でゴールセッティングをして、それを達成し続けて、他者から「すごい」と思われても、その個人と組織が大きく変化することはないでしょう。

もちろん、"できることをやる"という行為自体に問題があるという意味ではありません。

ゴールのサイズ

本来のコーチング理論では、ゴールは現状から桁外れに大きいものや、現状と全く違うレベルにセッティングすることが重要です。

金額(数字)をゴールにするのはあまり良いことではありませんが、例え話として、"10万円稼ぐ"というゴールセッティングをした人と"1000万円稼ぐ"というゴールセッティングをした人が「よーいドン」をした場合、10万円稼ぐ人が1000万円を稼ぐことはまずありません。

しかし、1000万円稼ぐ人からすれば、10万円などすぐに稼がなくてはならない金額となります。つまり、10万円稼ぐ人と1000万円稼ぐ人とでは、動きや考え方が違ってくるのです。あなたなら、どちらが良いでしょうか?

これは科学的に"ポテンシャルエネルギー(位置エネルギー)"として説明をすることができます。

ポテンシャルエネルギー(位置エネルギー)

ポテンシャルエネルギー(位置エネルギー)とは、物体がある位置(高さ、ばねの伸びなど)にあることで物体に蓄えられるエネルギーのことです。

「ゴールは大きいほうが良い」という説明をする際によく使うメタファーとして"輪ゴムの理論"があります。

輪ゴムは引っ張らなければ力が生まれませんが、引っ張れば引っ張るほど力が生まれます。それを"ゴールの大きさ"と考えてもらうのです。

もしも他者からよく見られたいのであれば、軽く輪ゴムを引っ張って、現状で達成可能なゴールセッティングをこなしていけば良いでしょう。

しかし、本当に自分自身を大きく変化させたかったり、組織の現状を全く次元の違うレベルにまで到達させたい場合は、少し輪ゴムを引っ張る程度ではエネルギーが足りませんので、とてつもなく壮大なゴールセッティングをする必要があるということです。


これらを現実に運用する場合、現在の自分自身にはどちらのゴールセッティングが良いのかを判断する必要があるかもしれません。また、個人や組織のゴールセッティングを上手にする方法もたくさん存在します。

そのようなことで悩んでいる場合、これらの知識についての専門家や、しっかりとした知識を持ったプロのコーチに尋ねてみるのも良いと思います。

おわりに

ラディ・スクール・オブ・マネジメントの研究結果は、従来の権力者になる方法(パワーダイナミクス理論)を大きく覆す結果となりました。

しかしながら、"心を操縦する力"と"ゴール達成能力"については、再考する必要があるかもしれません。

私は実際に、大きなゴールセッティングも小さなゴールセッティングもします。もちろん、どちらが良いというものではなく、状況に応じて使い分けるのです。

そういった意味でこれからの時代は、より丁寧に自分自身の心を操縦したり、ゴールセッティングをしていく人が"次世代のリーダーに相応しい"のではないかと考えています。

それでは今回もご覧いただきありがとうございました。

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