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トマさん劇場#27「スリーピング&メイクアップ」/#たいらとショートショート

おことわり)ヘッダー画像は本編と何ら無関係です。


「先にお飲み物お伺いしましょうか?」
「えっ…"先に"…あぁ、布施ふせ鶴橋つるはし大阪上本町おおさかうえほんまちへは後の準急が"先に"着くのね…オーケーオーケー…ふぁぁ」
「あっあの、停車順の話ではなくてですね、"先"にお飲み物を、という話で…」
「あっ先に大野見物おおのみものを…中日だかの大野おおのでも見んのですか…むにゃむにゃ…」
「あっ、その大野見物ではなくて、飲み物、ドリンクの事で…」
「水で…スー…」
「そうですか…」

都心からたった10分少々の近鉄八尾きんてつやお駅前のスポーツバー「ダグアウト」で働く新人アルバイト、星野絵美里ほしのえみりは、店に入ってきたグループ客の内の一名への対応に苦慮していた。

店で働き出して15日。
少しずつホールの仕事に慣れてきたとはいえ、まだまだこうした壁にぶち当たる事も多い。
悩んだ気持ちを先輩バイトの高田零たかだれいへ伝えてみる。
すると彼女はこんなアドバイスを授けてくれた。
「もっとさ、インパクトとって目、覚まさせた方がええんちゃう」
星野はこれを真に受けた。
店長の承諾を得て、難波なんばの専門学校で学んでいるメイクの技術をいかして、顔をファンタジーの悪役のようにしてみた。
すっかり普通の専門学校生から悪役になった所で、先程のグループから呼び出しが来た。
早速出向いてみる。
呼び出したのは先程対応した客。反応を期待しながら声をかける。
「お客様お待たせしました~」
「ご注文はいかがなさいますか?」

(了)(641文字)


この作品はフィクションです。
実在の人物・地名・団体等には一切関係ありません。


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