突然ショートショート「幸せな末路」
私は今、河川敷で目の前にチェーンソーを向けられている。それはただチェーンソーを向けられているだけということではない。
手軽な遊び道具だと思っていた、隣のクラスの友姫ちゃん。
友達数人と共に行けば、すんなりと付き合ってくれて、私たちと遊んでくれた。
遊びというのは、私たちにとっては普通のコミュニケーションツールで、娯楽の一つだ。
プロレスごっこをしてみたり、漫画で見たエッチなシチュエーションに挑んで映える写真を撮ったり、王様ゲームをした。
何かものが欲しくなった時には、彼女を連れていけばすぐ買ってきてくれた。
お金のことは気にしなかった。多分あるという認識でいた。
けれども彼女の話を聞いて、私の完璧だと思っていた認識は間違っていたことに初めて気づいた。
「私はお金なんてなかったんだよ。花ちゃんたちにパシられたおかげで万引きが上手くなっちゃったんだよ!」
「いや…私知らない…それは夕夏ちゃんが教えたって」
「だからお礼に、みんなを幸せな天国に連れていってあげるの。得意の万引きで手に入れたチェーンソーで!」
自虐気味に笑う友姫ちゃんを、私はボーッと見つめていた。
「いいよもう…友姫ちゃんを含めて遊べただけで幸せだったよ」
「答えになってない!」
「この世界はもう幸せなの!だから大丈夫!」
「うるさーい!!…」
チェーンソーが私の服に触れる。
なぜだろうか、こんな時になって「幸せ」という感情が来るとは思わなかった。
小手先でついた嘘のつもりだったのに、それが本当になる感覚。普段とは全然違う。
「天国はもっと幸せだよ!私もいくからみんなでこの理想郷…」
ここで河川敷から転げ落ち、頭に衝撃が走った所で、私の思い出はストップしている。
今、私は地図アプリのように地上を見渡す天国にいる。
隣には友姫ちゃんが満足そうな顔で立っている。
「花ちゃん、遊ぼ?今度は王様ゲーム。私が王様ね」
「う…ん」
「ちゃんと遊んでよ。反省してよね」
何が幸せな天国だ。これが私の末路かと思うと許せない気持ちになる。
友姫ちゃんの嘘つき。
(完)(852文字)
マガジン
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?