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突然ショートショート「あの頃みたいに」
住宅街の路地。小さな魔物がたくさん現れるのを前にして、私は戸惑っている。
私は昔から、魔法少女になりたかった。でも、何かの取り柄がないので無理だと思っていた。そして気づけば大人になり、社会人生活まで始めてしまった。
小さな頃に見ていたアニメに出てくる子は大体私と同じようにおっちょこちょいなのに、何かが違う。
でも、その何かがわからないまま、私は今、魔法少女になっている。
意味がわからない。最初にネット広告を見た時はギャグと思った。良くできた宣伝だと。
それで冷やかしにタップしてみたら、それだけで「契約が成立した」と画面に出てきた。
嘘だと思ってすぐ寝たら翌朝、枕元にに変身アイテムが置いてあった。
桃色の宝石がついたコンパクトだった。
はめてそのまま過ごした後、家に帰ろうとしたら魔物が現れた。
逃げてしまいそうなところ、不思議と頭に考えが浮かんできた。
変身して戦えるじゃん。そう思って、小さな頃のようにポーズを取った。「魔法少女ごっこ」のように。
服が脱げ、新しいピンクのコスチュームが着せられ、髪が大きなツインテールに変わっていた。
そして、あの頃テレビで見ていて、ずっと欲しがっていたステッキも。
ステッキを片手にもう片方の手でコンパクトを再び確かめ、私は確信した。あの頃のままの「魔法少女」になってしまったのだ。
その姿が、我ながらよく似合っていたのには驚いた。小柄で少し童顔なところがあるからなのかも知れない。
戦い方はわからないけど、大丈夫。あの頃の「魔法少女」がお手本だから。
昔は新体操もしていたから、動きにも自信はある。
大丈夫。私が倒してみせる。なんだって、私は魔法少女なんだから。
みんなを助けて世界を守る、正義の魔法少女なんだから。
(完)(714文字)
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