見出し画像

突然ショートショート「ポポパポペピアノ」/毎週ショートショートnote

 とあるニュータウンのバスターミナルに、ストリートピアノを置くことになった。

 「置いて何になるんです」ターミナル会社の担当者が、鋭い視線を送り込む。
 「先日からここに、東京行きの夜行バスがやってくるようになったではありませんか。そこにピアノ。ほら、ドラマチックなストーリーの出来上がりです」

 設置を推進したのは地元商工会のメンバー。幼い頃からピアノに親しんでいたといい、入念につくりこんだ資料を用意し、関係各所の同意を得ようとしていたが、上手く行かなかった。

 「アトラクションにすればどうですか。音で操るピアノ、ってことで」
 「なるほど!」担当者が乗り気になった。
 「えっ、ち、ちょっと!」メンバーは戸惑った。

 そして設置された「ポポパポペピアノ」。
 「パピプペポ」などの音で操作するピアノで、置いてからバスターミナルの利用客は右肩上がりとなった。

 「こんな筈じゃ無かったのに……ポポパポペ」
 商工会メンバーを慰めるように、ピアノは優しげな音色を奏でた。

(了)(416文字)


あとがき

 ドラマチックでなく、ファニーに。おもしろく。
 バスターミナルのピアノのお話でした。ポポパポペでも、パポペピポでも。パ行ならあのピアノを自由に操れます。


参加企画


マガジン



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?