トマさん劇場#46「フシギドライバー」/毎週ショートショートnote
8月5日昼、私は露地駅前でタクシーに乗った。
安治料ダムに行って、ダムカードをゲットするため。
新車のタクシーは、一昔前までのセダンタイプとは違ったミニバンのアルファードだった。
憧れのアルファードに乗れて嬉しいと思いつつ、運転手に「安治料ダムまで」と告げ、駅前を後にした。
田園風景の中を走るタクシーの車内で、運転手のおじいさんが私にこう話してきた。
「いや~、実はワシ、仙人の里で生まれてきてな、今から山の中に入るから、まるで仙人見習い時代を思い出すのじゃ、フォフォフォ」
「なるほど」
だが、私はこの発言の内容を理解できない。
まるで不思議ちゃんだ、あるいは遅めの中二病患者か。
山の中に入っても、おじいさんは話し続けた。
「そして後輩共にもワシの経験を話すものの、信用してもらえず、日々『フシギドライバー』と言われるのじゃよ、ウッウッ」
泣きながら話すおじいさんを眺めながら、私はこう思った。
「素晴らしいよ後輩。ナイスネーミング」と。
(了)(417文字)
この作品はフィクションです。
実在する人物・地名・団体等とは、一切関係ありません。
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(参加企画)
トマさん劇場、最終回まであと4回です。
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