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Story of Kanoso#56「バイリンガル餃子~別にいいじゃん~」/毎週ショートショートnote

 そのキッチンカーは、大らかな気持ちで海を渡る。

 新零県彼礎かのそ市湾岸区、都市高速14号空港線。
「餃子専門店焼き正宗」のキッチンカー「正宗号」は、彼礎湾上の彼礎空港でのイベントに出動するべく、海上の連絡橋を快走していた。

 「大丈夫なんですか?『バイリンガル餃子・おう』は」助手席の相棒、野崎奏のざきそうは運転席の店主、堀添正宗ほりぞえまさむねに問いかける。
「大丈夫だって。絶対に」視線を前方に向けたまま、堀添はそう呟いた。

 「しかし…流行らなかったらどうします?いつも思ってるんですけど……」左手の彼礎湾を見つめながら野崎は呟き返す。
 「さぁね。別にいいじゃん、と俺は思うよ」
堀添は笑いながら話す。
「え?」
「世界にあるあまたの選択肢の一つって事で。俺が生姜をパセリちゃんと呼んでいた事も同じく」
「なるほど」野崎は納得したように呟いた。

 そのキッチンカーが提供するのは、あくまでもあまたの選択肢の一つらしい。

(了)(417文字)


あとがき

 今回はタイトル見にくいな…反省します。
後半は前回、堀添さんが生姜の事を「パセリちゃん」と呼んでいた事をネタにしています。

 今回は情景を楽しんでいただければ幸いです。
海上に架かる橋を渡るキッチンカーの姿を想像すると、ときめくんです。

 次回はもっと「バイリンガル餃子」を意識した回にします。
ここの所展開がずれ気味なので気を付けます。


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