突然ショートショート「半笑いのポッキーゲーム」/毎週ショートショートnote
私は、小さな不動産会社の社員だ。最近、とあるビルに行ってくれと指示を受けた。
そこは、コロナ禍の影響で前のテナントが全社つぶれ、前の不動産会社もそのあたりで廃業した結果、3年間廃墟状態になっていたという。
今回はリノベーションの準備をするという。
3年も廃墟状態で大丈夫だったのかと思いつつ、私はそのビルに向かい、事前に渡された鍵を使って中に入った。
オフィスビルだったようで、「会議室」と書かれた扉を開けてみた。
するとそこは、ホワイトボードに「半笑いのポッキーゲーム」と書いてあるだけの空間だった。
私は考え込んだ。「半笑いのポッキーゲーム」とは。3年前、ここで何があったのか。
考え込むうちに、私も半笑いの表情になってきた。
ついてきた同僚が不気味がって逃げた。
ポッキーゲームとは。半笑いがわかっても、ポッキーゲームがわからない。
考え込むうちに、どこからか私の噂が広まっていたらしい。
「考え込む半笑いの女」と。
思わず恥ずかしくなって、体が火照った。
(了)(419文字)
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