突然ショートショート「三日月ファストパス」/毎週ショートショートnote
夜の住宅地、街灯によって力無く照らされる市道を歩く人影があった。
サラリーマンの遠藤。年齢31歳。職業は不動産会社営業マン。
毎日遅くまで忙しく働き、夜はあっという間に寝てしまう…という流れが繰り返される中を生きている。
彼は、一度でいいから楽になりたいとよく思っていた。
一方その願いが叶うことはないことを悟りつつ、今日も家へ続く道を歩いていた。
歩いていると、何かを踏んづけてしまったような感触がした。
拾い上げてみると、そこには『三日月ファストパス・持参人一名に限り有効』の文字。
何だこれは、と怪しみつつそのカードを手にとって観察していると、上空から光と共に何かが降りてきた。
「どうされます?今すぐあの三日月へお連れすることができますが」
「え…え?」
「夜明けの辺りまで月で過ごして、そしてこの場所へ再び戻るんです」
「…?」
「ファストパスです。所要時間5分程です」
彼は怪しみつつも、目の前にやってきた宇宙船へと乗り込んでいった。
(完)(417文字)
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