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映画「ビューティフル・マインド」レビュー:あなたはきっと、いま想像できる以上に良くなります!

こんにちは!
谺(コダマ)ッチャンこと、児玉朋己です。

お元気してますか? 私はゆっくりくつろいでいます。

  • 統合失調症になって数年間闘病してきたけど、なかなか良くならない。

  • この打ちひしがれたようなしんどさはいつまで続くのか?

  • 本当に自分は良くなるのだろうか?

と思っている方はいませんか?

そんな方々に向けて、
今日は、
映画「ビューティフル・マインド」
のレビューをお届けします。

あなたはきっと、
いま想像できる以上に良くなります!

ビューティフル・マインド

この映画は、
天才数学者ジョン・ナッシュが統合失調症を発症し、
一時はかなり重篤になりつつも寛解・回復し、
ノーベル経済学賞を受賞したその半生を描いたものです。

監督:ロン・ハワード
主演:ラッセル・クロウ

以下、
ネタバレ含みます。

統合失調症はここまで回復しうる

この映画であなたにぜひ受け止めてほしいことは、
「統合失調症でもここまで良くなる人もいるんだ」
ということです。

ちょっと唐突ですみません、
いきなりエンディングについてですが、
この物語は、
主人公ジョンが受賞したノーベル経済学賞の授与式を描いて終わります。
まさに、
ハッピーエンディングです。

ノーベル賞受賞なんて、
一般の人でもまず受けられない名誉なことです。
ましてや、
病気のせいでたいへん苦しい思いをしてきたジョンの人生での晴れ舞台ですから、
このシーンはたしかに締めくくりに相応しいでしょう。

ただ、
闘病中のあなたにぜひ注目してほしい場面は、
そのエンディングの少し前にあります。

「プリンストン大 1978年10月」
というキャプションが入るシーン。

この頃から、
ジョンは母校のプリンストン大学で一日の大半を過ごすようになります。
構内を気ままに散策し、
図書館で自分の研究をします。

そうやって何年間も過ぎ、
そして、
学生に講義をするようになります。

そしてさらに時間が経過して、
「プリンストン大 1994年3月」
というキャプションが入ります。

およそ15年半の月日が流れたのです。

その場面では、
講義を終えて教室を出たジョンに、

「ありがとう先生」
「じゃ、」
「また来週」

と、
学生が親しみを込め笑顔で挨拶をしていきます。

ジョンは、
学生に尊敬され信頼され、
かつ、
慕われるようになっていたのです。

これは、
病気で苦しんでいた時期のジョンはもちろん、
発病前のとっつきにくかったジョンと比べても予想しがたいことです。

ジョンは大きく回復したのです。

映画の中で、
この回復したジョンを描写する場面はほんの少しで、
サラッと流すだけなので、
うっかり見落としてしまうかもしれません。

私としては、
この奇跡の回復を果たしたジョンをもっと見たかった。

そして、
あなたにもぜひこの回復ぶりに注目してほしいのです。

統合失調症でも、
ここまで回復しうるのだと。

ジョン・ナッシュを苦しめたさまざまな症状

そのような奇跡的といっても良い回復を果たしたジョンですが、
病気の症状で苦しんできた時期も長くありました。

映画で主に描かれたのは、
幻視と妄想でした。

「国家機密に携わっている」
という妄想が症状の中心にありました。

それに関連して、
「腕にラジウムダイオードの基盤を埋め込まれた」
という妄想もありました。

統合失調症の症状の一つとして、
「脳にマイクロチップを埋め込まれた」
等の妄想がありますが、
ジョンにもそういった症状があったのです。

回復を支えた妻アリシア

発症が明確になる前にジョンは結婚していました。
アリシアです。

アリシアは懸命にジョンを支えました。
時にその困難に負けそうになりながらも辛抱強く。

この闘病の時期に描かれているのは、
薬を飲むとどうしても思考が鈍くなるのを嫌い、
ジョンが自分の判断で薬を飲まなくなってしまうことです。

飲まなくなると、
症状が再発します。

そういった、
症状が良くなったり悪くなったりを繰り返す過程で、
アリシアとぶつかったことも描かれています。

試行錯誤の結果として、
ジョンとアリシアは、
「社会の一員として、良く知った場所で良く知った人と定期的に接する環境にすることで、頭の中にいる架空の人物を追い出すことができるかもしれない」
と考えました。

そして、
現在は責任ある立場になっていたかつての友人マーティン・ハンセンに、
「プリンストン大学をうろついていてもいい」
という許可をもらうのです。

当初は学内で笑い者にもなりました。
でも、
それに耐え、
やがて十数年以上かけて回復へとつなげていったのでした。

ジョン・ナッシュが語る回復のコツ

ジョンは、
映画の中でどうやって症状と付き合ってきたかを語っています。

マーティンに、
「例のあの友だちはもう消えたのか?」
と聞かれます。

  • 「いや、消えてない。一生消えないだろう。でもずっと彼らを無視しているし、その結果彼らも僕を諦めた」

  • 「夢でも悪夢でも、それを生かし続ける人は、必ずエサを与え続けているのだ」

  • 「彼らは過去だ。誰も過去からは逃れられない」

これがジョンの答えです。

また、
ノーベル賞の選考委員会からジョンの状態を確認しに来たトーマス・キングに対して言います。

  • 「私は病気だ。新しい薬も試しているが、未だにないものが見えてしまう。ただ無視しているだけだ」

  • 「頭のダイエットだな。陥りがちな思考への欲求を抑えている。パターン認識への欲求や、自由に想像し夢を見る欲求を」

映画の物語の中ではこのように語っていましたが、
実在のジョン・ナッシュもノーベル賞受賞記念エッセーのなかで次のように書いているそうです。

わたしは少しずつ、妄想に縛られた一連の思考を理性的に拒否するようになった。その思考は、それまでわたしが、自分の態度を決定する際の基準としていたものだ。基本的に無益な知的浪費でしかなかった政治的思考を退けたときに、こうした解放が始まったと見ることができる。

新潮文庫『ビューティフル・マインド~天才数学者の絶望と奇跡~』p.840

私たちが妄想等の症状に振り回されるのは、
症状による思考(ジョンの言う政治的思考)に基づいて自分の態度や意志を決めてしまうからです。

自分で症状による思考が始まったと気づいたら、
もうそれ以上は考えないことにする、
とジョンは言っているのです。

これは大いに参考になりますね!!

回復には長い時間がかかる。だけど、、

一般に、
統合失調症の回復には長い時間がかかります。

これはジョンにとっても同じで、
生まれたのが1928年。
初めて受診し統合失調症の診断を受けたのが1959年。
ノーベル賞受賞が1994年です。

受賞時の回復レベルまで達するのに35年かかっています。

この年月には耐えられないと思う人もいるかもしれません。
けれど、
時間さえかければ、
かなり回復しうるのだと捉えることもできます。

統合失調症の予後を長期的に調べた研究によると、発病後早い時期から適切な治療を受ければ、約6割の人は、60~70代には全快か、全快に近い状態にまで回復することが明らかとなっています。

高橋書店『統合失調症 正しい理解とケア』p.57

だそうです。

すべての人が全快できるわけではありません。
けれど、
ひどく重篤なままでいる人の方が割合としては少ないのです。

より良い回復のためには、
適切な治療を受け、
ジョンが心掛けたように自分を律することが必要なのでしょう。

まとめ

この映画には原作があります。

さきほど引用した、

映画と同名タイトルのノンフィクションです。

映画と原作との間には設定やストーリーなど、
多くの点で違いがあります。

原作はかなり長いもので、
ジョンの数学者としての活躍や、
私生活でのさまざまな浮き沈みについて詳しく書かれています。

おそらく、
ジョン・ナッシュの半生のエッセンスを、
映画という形式で最も効果的に伝えやすい設定とストーリーに変更したのだと思います。

本が好きで長編小説も苦ではないという方には、
原作もおすすめです。

いま、
症状が苦しくて光が見えないと感じている方に、
希望を与えてくれる映画だと思います。

きっと、
あなたも良くなります!!



生命って何だろう? 生きるって何だろう?
谺(こだま)


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