3月CPIに対するTom Leeの反応
イントロ
皆さん、こんにちは。
4月に入ってからの米国株は一部セクター(エネルギー等)を除けば、総じて年初からの勢いを失っているように見受けられますが、今週発表された3月のCPIレポートを受け、Tom Leeが彼のスタンスを表明しています。
3月のCPIを受けて
それでは本日のTom Leeの発言を見ていきましょう。
和訳(意訳含む)「3月のCPIが予想以上だったので、我々が当初想定していたシナリオではありませんでした。ただし、予想以上のインフレ値は、いわゆる粘着性のセクター、例えば、住宅や自動車保険などによって引き起こされています。コアセクターのインフレ値を集計すれば、前年比で+1.7%が中央値となります。ですから、インフレは正常化しつつありますが、ただそれがCPIのヘッドライン値からは読み取りにくい、という状況です。」
私なりの理解としては、住宅(家賃)や自動車保険料は基本、一年に一度の更新ですから、これらの価格下落が仮に直近にあったとしても、統計上あまり効かないはずです。また、CPIはその性質上、これらのセクター寄与度が非常に大きいため、結果としてインフレ値が下がりにくくなっているものと思われます。
ただ、Tom Leeは今年の1月、2月のCPI値が季節調整の不備によって実際よりも高く見積もられている可能性を指摘していましたが、今回の3月のCPIが予想以上だったので、そのような理屈でここ3か月のCPIデータを軽視することはできなくなったはずです。
和訳(意訳含む)「この先の話ですが、4月と5月のCPIを見る必要があります。これらのCPIがインフレの抑制を示せばいいのですが、もしそうでなければ、Fedが利上げを検討するかもしれません。それが株式市場が見たくないシナリオです。ただ、Fedが年内に一度でも利下げを実施する場合は、株式市場にとっては良い環境と言えるでしょう。」
和訳(意訳含む)「結局のところ、CPIがグダグダしていても、PCEはCPIよりもFedに”好意的”ですし、真のインフレはCPIが示唆するよりもかなり緩やかだと示しています。ミシガン大学の期待インフレ率調査結果も低かったですし、CPIデータの方が異常なのではないかと考えても不思議ではないのです。」
PCEとCPIの比較
よく知られているように、FedのインフレターゲットはCPIではなく、PCE=2%(もしくはコアPCE=2%)のはずです。ですから、Tom Leeが言うようにFedの利下げ、もしくは利上げを見通したいならば、PCEの推移をみる方がCPIと同等かそれ以上に重要となります。
というわけで、1990年から直近までの前年同月比CPIとPCEをプロットしてみました。
基本的に、PCEはCPIよりも変動幅が小さく、平均で0.5%ほど低めにインフレ値が出ています。昨年後半から現在までのインフレの下降トレンドを見ても、CPIは明確な下降トレンドは見られませんが、PCEは直近でもわずかに下落しています。
とはいえ、目標値の2%はまだまだ遠いなぁという印象。
3月のPCEデータの発表は4月26日ですね。
最後に
今回はPCEとCPIの過去データを振り返りつつ、これらの指標の違いや性質などについて知見を深めることができました。Tom Leeが当初想定していたようなディスインフレの経路にはなっていないようにも見えますが、とりあえずは次回のPCEを注視したいと思います。
それでは。
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