大丈夫、SNSは本気で向き合う場所じゃない
TBSドラマ『不適切にもほどがある』が面白い。
令和の常識についていけない昭和からタイムスリップした主人公・小川さん(阿部サダヲ)の奮闘ぶりに時に笑い、時に考えさせられる。
第4回の終盤ではこんなミュージカル調の歌が流れた。
言いにくいけどある種真実味があることを、ミュージカルに乗せて言いきってしまう痛快さがある。
先日、僕自身、このミュージカルに救われることがあった。
ドラマの録画を見て何かしら刺激を受けたのかFacebookを開いてみた。自分のプロフィール写真が昨年の夏頃に撮影した浴衣の写真であることに気づいた。
特に頻繁に投稿するタイプでもないのだが、ふと季節はずれの写真を変えたいと思った。唯一気をつけたかったのはプロフ写真を変更すると、その変更したことがFacebookに投稿されることだ。
いつも思う。あの機能は一体、誰の何のためにあるのだと。別にいいじゃないか、アイコン写真変えるくらいで、いちいちみんなに知らせなくたって。
変更する前に「画像変更したことをみんなに知らせますか?」みたいに一言訊ねてくれたら間違わないのに、非公開のまま画像変更する方法が非常にわかりづらく、気がついたらいつの間にか投稿されてしまうことが過去にあった。
フーっと深呼吸を1つ入れる。
針の穴に糸を通す時のように、静かに、そして慎重深く、プロフィール画像を変更する。
大丈夫だ、手応えあり。どこにも「公開」とか「投稿」みたいなところのチェックボックスは踏まなかった。これで安心だ。
それから普通に仕事に向かった。SNSの通知は設定していない。5、6時間くらい経っただろうか。
再び何の気なしにFacebookを開くと友人からのコメントが届いていた。
コメントを見た瞬間、冷や汗が出た。
あかん・・・あかんで・・・。
おそるおそる画面を開く。
No way!
I’m shocked!
This is unbelievable!
僕の中の偽アメリカ人が久しぶりに暴れ出す。
思い切り投稿されとるじゃないか・・・。
勝手に投稿するなんて不適切にもほどがある・・・。いや、落ち度はおそらく僕にある。かといって、今更削除するのもリアクションしてくれた人に申し訳ない。変更した後になぜチェックしなかったのか後悔の念に襲われる。
すると、どこからともなくあの歌が流れ始めた。
そうか、そうだよな。
誰も気にしてないし、自分も気にしなきゃいいのだ。
いちいち投稿したことを後悔してたら疲れちゃう。
僕は一旦、Facebookを閉じた。
普段、行くこともなかった広尾の銭湯に入る。湯に浸かりながら、そもそもプロフ画像が変更されることを気にしているのは自意識過剰だからじゃないかと思い至る。
中年男性の自意識過剰ほど見苦しいものはない。
自分で自分にツッコミを入れる。
そしてプロフ画像変更に自らコメントを残した。
風呂上がりに珈琲牛乳を飲む時くらいさっぱりした気持ちだった。
これでいいのだ。
急に僕のなかの赤塚不二夫がささやいた。
ユルさを許容してこそSNSは楽しめる。
大丈夫、SNSは本気で向き合う場所じゃない。