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人生で大切なたったひとつのこと

そんなストレートすぎるタイトルの本を見かけたのは、
六本木ヒルズのライブラリ(アカデミーヒルズ)だった。

ふと受付近くのボードを見ると、ライブラリがおすすめする本の紹介文が目に飛び込んできた。

最後の最後に伝えたいことー。

冒頭の一文は胸に迫るものがあった。実はこのライブラリは今月末で閉館するのだ。

この言葉が、高齢となった本の著者が若者に向けて最後に伝えたかったことなのか、ライブラリの人が最後に僕らに伝えたかったのかは分からないが、その両方の可能性を兼ねて届けたい気持ちが伝わってきた。

草花の素敵なイラストにも引かれて、思わず本を手に取ってみた。

15分で読めるけれど一生、心に残る本。

「そんな都合のいい話があるわけない」と斜に構えつつも、名著『思考の整理学』という本で有名な外山滋比古さんがオススメしているのであれば一読の価値はある。僕は文字どおり15分ほど本に目を通した。

いかにもあざといタイトルで読者を釣っておいて、「さて、何が書かれているのか」と息巻いて読んでみたが、見事に打ちのめされてしまった。

正直にいえば、思わず声に出して笑い、思わず涙が込み上げてしまった。

「人生で大切なたったひとつのこと」なので、そのひとつを僕がここに書いてしまってはネタバレになってしまうから、もし興味のある方はぜひ読んでみてほしい。少なくとも僕は読み終えてもなお購入してまった。

話は変わるが、最近、「ヘラルボニー」という会社を知った。皆さんはこの会社をご存知ですか?

僕が知ったきっかけはこのニュースだった。SNSで流れてきたのだ。

なんだかオシャレで先進的な企業の紹介かと思って中身を見たら驚いた。

なんとそれは岩手県盛岡市にある小さなアパレル企業で、知的障害をもった人たちのアートの可能性を追求しながら「障害」のイメージを根底から変えるべく、社会に働きかける強い志をもつ会社だった。

松田崇弥氏と松田文登氏という双子の兄弟によって設立された会社であるが、起業のきっかけとなったのは、自閉症で重度の知的障害を持つ、4歳上の兄・翔太さんの存在だった。

小さい頃からずっと抱えていた、世間の「障害者」に対するイメージに異和感を抱えながら、学生時代から小山薫堂氏にも影響を受け、企画力、デザイン力、人間力の強さをもって事業を展開している印象を受けた。

思わず、すぐに彼らの著書を読んだ。

そこに、こんな一文が書かれてあった。

「大切なのは、得意なことがあってもなくても、その人がその人のままでいて、幸せに暮らせることだ。」

(『異彩を、放て。「ヘラルボニー」が福祉×アートで世界を変える)より

「人生で大切なたったひとつのこと」の本に書かれていたメッセージとリンクした気がした。

「社会に順応させるのではなく、彼らが彼らのままでいられるよう、社会のほうを順応させていく。そのためには「福祉」という領域を拡張し、イノベーションを起こすことで、社会全体を変えていかなければならない」

(『異彩を、放て。―「ヘラルボニー」が福祉×アートで世界を変える―』より

大衆に迎合する感じではない。「強い信念」に裏付けられた「強烈なアート」と「強固なビジネスセンス」が融合して、社会変革を起こそうとする会社があることになぜか「悔しいくらい嬉しい」という謎の感情が湧き起こった。

さらに嬉しかったのは僕の周りの多くの人が「へラルボニー」という会社をすでに知っていたことだ。

僕は映像をつくる会社で経営者をしているが、本質にあるものはその表現手段ではなく、自分がこの社会に対してどうありたいか、どう関わっていきたいかという想いのようなものだ。

「障害のある人にしか見えない世界もあるし、僕らにしか見えないものもある。そこにはただ、違いがあるだけで、(中略)その「違い」を「価値」に変えることが、僕らの役割なんだ。」

(『異彩を、放て。―「ヘラルボニー」が福祉×アートで世界を変える―』より

違いを価値に変えるー。

これは何も障害者に限った話ではない。20代、30代の頃、人と違うことで悩むことが僕自身も多かったからこそ、自分なりに違いを価値に変えることの大切さを痛切に感じてきた。

今はまだ朝霧の中にいるような感じで視界が開けているわけではないが、いろいろな偶然の出会いから何か次の新しいステージへ向かう萌芽のようなものを見つけていきたい。

追伸

アカデミーヒルズの事務局のみなさん、これまで素敵なご縁やチャンスをくださって本当にありがとうございました。

(きっとアカデミーヒルズが)最後の最後に伝えたかったバトンををしっかり受け止めて、また新しい場所を探したいと思います。

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