遠藤龍之介フジテレビ社長について考える② ―現代日本のトップリーダーについての考察―

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 若かった頃にやっていたこと

 前回の記事(遠藤龍之介フジテレビ社長について考える ―現代日本のトップリーダーについて考える―)に続いて遠藤フジテレビ社長について考察する。前回の記事に挙げた20項目の中で、今回は6の「学生時代に将棋部(慶応大学将棋研究会)で、将棋が強い」という部分について考えてみる。
 学生時代に部活等で何をやっていたかということは、有名人等の人物論で何かと話題になりやすい。重視している人が多いようでネットとか週刊誌などの記事でも新任の社長とか大臣とか次官等々が生まれると「学生時代に○○をやっていた」という記事が出ることが多い。「若かった頃、何に打ち込んでいたのか」ということになんとなく注目したくなるのが大方の感性なのだろう。
 もちろん学生の本分は勉強することだし、勉強と部活以外にもアルバイトとかボランティアとか実家の手伝いとか学生運動等々学生が成長する機会はいろいろあるのだが、部活というのはかなりわかりやすいブランドである。
 例えば、いわゆる偉くなった人の学生時代の部活というと、ラグビー部やボート部が有名である。早慶のラグビー部は有名だし、東大のボート部は大蔵事務次官(現在の財務事務次官)を複数輩出している名門である。また、慶應のボート部も一昔前の三越という会社があったころは、「三越の取締役は慶應のボート部出身者が多数を占めている」と言われていた時代があった。

 体育会だった人が多い 

 フジテレビ以外のテレビ局の社長についてみていくと、TBSの佐々木卓氏は早稲田大学のラグビー部、テレビ朝日の亀山慶二氏も早稲田出身だが部活は何をやっていたかネット情報等では不明、日本テレビの小杉義信氏は一橋大学出身でややはり学生時代の部活については不明である。
 ついでに映画・演劇についても見ていくと、まず大手映画会社3社では、東宝の島谷能成氏は京大出身で部活は不明、松竹の迫本淳一社長は慶應出身で、大学では部活をやらなかったが高校時代はハンドボール部、東映の多田憲之社長は中央大学出身で部活は不明。演劇では、劇団四季の吉田智誉樹社長が慶應出身で部活は演劇研究会、宝塚の小川友次理事長も慶應出身で部活は野球部。歌舞伎は興行面でのトップは松竹の迫本社長なのだが、梨園のトップは4代目坂田藤十郎俳優協会会長で、当然と言っては失礼かもしれないが大学などという場所には行っていない。
 こうしてみると、テレビ・映画・演劇界では早稲田・慶應出身の社長が非常に多く、特に慶應出身者が多い。そして、東大は一人もいない。やはり、現在社長でいるような人たちの年代では、東大を出たら中央官庁などに勤める人が多かったのだろうか。
 部活については、ネットで調べてもわからない人がかなりいたが、「不明」以外では体育会系の部活に入っていた人が多かった

 「手順前後」がキーワード

 そういった中で遠藤氏の慶応大学将棋研究会というのは、ラグビーとかボートなどの定番のものに比べるとユニークだし、吉田氏の演劇研究会のように直接就職してからの仕事に関係がありそうな部活でもない。でも、将棋という競技の性質や競技を通して養われる力に注目してみると意外と会社経営者にとって役に立ちそうなところがありそうだ。
 まず、将棋というのは試合中は孤独で、自分一人でどんな手を指すか考え決断しなければならない。会社のトップも孤独で、最終的には自分一人で決断しなければならない場面がある。
 それと、将棋は静止画的なモデルよりも「こっちがこういくと相手がこうきて、次にこういくと相手はこうきて…」という動的なストーリーが重要だ。会社経営においては、もちろん静止画的なビジネスモデルも重要だが動的なストーリーが求められることが多い。
 将棋には、「手順前後」という非常に有名かつ重要かつゲームの本質を言い表しているキーワードがあり、指す手の組み合わせも大事だが順番が大切である。これは、モデルよりもストーリーを重視することに通ずる
 また、将棋では手損して相手に指させることで局面を優位に導いたり、駒損してもそれ以外のことで得することでうまく局面をリードしたりする場合がある。これは、「全体の合理性と部分の合理性のギャップ」とか「短期と長期でアクションに対する評価が異なる」といったビジネスではよく出てくる話に通ずる。
 そういった面でも、熱心に将棋をやっていたという経験は経営者としてかなり役に立ちそうだ。
 ラグビーやボートなどと違って将棋の場合遠藤氏の他に有名経営者がほとんどいないので、なかなか傾向を探ったり実績を評価したりするのが難しい。早く他にも将棋部出身の有名経営者が出てきて欲しいと思う。
 かなりいい仕事をするのではないか、というのが自分の予測である。

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