遠藤龍之介フジテレビ社長について考える ー現代日本のトップリーダーについての考察ー

※ 作者の自己紹介等:自己紹介とnoteの主な記事
※ 関連記事:慶應幼稚舎出身の3人の社長(遠藤龍之介氏・迫本淳一氏・玉塚元一氏)について考える ー現代日本のトップリーダーについて考えるー 
※ 関連書籍:『フジテレビはなぜ凋落したのか』(新潮新書)
       『フジテレビ凋落の全内幕』(宝島社)
                         

 組織はトップの力量以上には伸びないのか?

 「組織はトップの力量以上には伸びない」という言葉がある。
 亡くなった野球の野村克也さんが語っていた言葉なのだけれど、他にもこれと似たことを言っている人やこういうことを言いそうな人は多い。
 非常に端的で一見明快なフレーズである。ちょっと聞いただけであんまり深く考えないと、なんとなく「そんなもんだろうな」と思うのだが、落ち着いて真面目に考えてみると「組織というのは、どういう組織のことなのか。あらゆる組織のことなのか。民間企業にも政府部門などの公的部門にも同じようにあてはまるのか」「誰がトップなのかわからないような集団指導体制の組織はどうなるのか」「人間ではなく空気が支配しているような組織はどう考えたらいいのか」「力量というのはどのように図るのか。トップの力量とはどのようなものを言うのか」「伸びるというのはどういう意味なのか。価値観の問題を含んでしまって人によって違う意味で使ったり、概念があいまいになったりすることはないのか」「そもそもこの文言はどの程度正しいと言えるのか。これについて検証する方法はあるのか」等々いろいろと疑問とか論点がわいてくる。
 こういった疑問・論点について一般論として抽象的に考えるのは難しい。
 また、組織の種類とか、組織の置かれている時代・環境等とか、その中にいるメンバーの資質・おかれている状況等々によっても見方や結論等は変わってくるだろう。
 そこで、具体的な現代日本の組織のトップと及び組織のあり方について考えて、この言葉について何か検証できることはないか探ってみる。
 と言っても、自分は一流の経営学者とかトップコンサルタントあるいは一流新聞の記者等企業のトップに直接会えるようなジャーナリスト等々ではないので、ただ単にネットとか書籍などで手に入るような情報をできるだけわかりやすく並べてみて、自分ができる範囲内で、どんなことが言えそうなのか可能な限り常識的かつ多面的に考察してみるだけである。

 遠藤社長の経歴等について考える

 自分は、テレビ・映画・演劇などにたぶん人並みには興味があるように思うので、このシリーズではこういった業界の会社等の社長などのトップについて考えていくことが多くなりそうである。
 まず、第1回目はフジテレビ社長の遠藤龍之介氏について考えてみる。
 最近フジテレビの社長になって話題になった人だし、自分にとっては大学時代の将棋部の先輩で実際に直接会ったことがあるので、遠藤氏を最初に持ってきた。
 遠藤氏の経歴等について自分が思いつくことで意味がありそうなことは、たぶん次の20個くらいになるだろう。「~くらい」という言葉をつけたのは、一つにまとめることもできそうだが二つ以上に分けて書いていることとか、一つの項目に二つ以上の要素が含まれていることがあるからである。

1 作家の故遠藤周作氏の息子。
2 慶應幼稚舎出身。
3 慶応高校出身。受験勉強をしないで大学に入った。
4 慶應大学出身。
5 大学時代の専攻が文学部フランス文学科。
6 学生時代に将棋部(慶応大学将棋研究会)で、将棋が強い。
7 プロデューサーとしてはそれほどヒット作に恵まれていない。
8 大映ドラマ(『スタア誕生』『ヤヌスの鏡』)のフジテレビ側のプロデューサーをやっていた。
9 プロデューサーとしての代表作は「銭形平次」。
10 編成局長(正確には編成統括局長・編成制作局長など)を経験していない。
11 ライブドア事件の時の広報部長。
12 広報局長経験者である。
13 制作・編成・広報の3部門を経験している。
14 日本将棋連盟理事である。
15 温厚な性格として知られている。
16 長身・イケメンである。
17 配偶者や子息の情報は非公表。
18 ツイッターやフェイスブックはやっていない。
19 遠藤氏についての本が出版されたことはない。自分で本を書いたこともない。
20 長期的な海外留学・海外勤務の経験はない。

 思いついたことを挙げていったら上記のような20項目になった。他にも重要なことがあるかもしれないが、ネットや週刊誌で取り上げられることはだいたい上記の内容が中心だと思う。
 どれが重要なのかは、人によって変わってくるだろう。
 よくマスコミで取り上げられるのは、1と6と11である。
 特に有名なのは、1の作家の遠藤周作氏の息子ということである。でも、だからと言って文学作品にめちゃくちゃ詳しくて、小説を原作としたテレビ番組をたくさん作ってことごとくヒットさせた、とかそういうわけではない。
 6の学生時代に将棋部(将棋研究会)だったというのは、たぶん大企業の社長としては珍しいことではないだろうか。大企業の社長だとラグビー・ボート・野球など体育会系でチームスポーツを行う部活の出身者が多い。でも、麻生財務大臣が射撃、安倍首相はアーチェリーをやっていたというし、試合中は誰も助けてくれない個人種目をやっていた人もトップになるような時代になってきたのだろうか。
 業界的な見方では、10が重視されることが多いようだ。編成局長とかそれに類するポストについたことがない生え抜きのテレビ局社長というのは、確かに珍しい。現在の日本テレビ社長の小杉善信氏とテレビ朝日の亀山慶二社長は編成局長(正確に書くと、小杉氏は取締役執行役員兼任、亀山氏は編成制作局長)の経験がある。
 1~20まで見ていくと、全体的には、すごい実績があるわけではないがバランスのとれた好人物という雰囲気である。強烈・個性的な強いリーダーシップがあるタイプではないと考える人が多く、今のような変化の激しい時代に合っているかどうかわからないが、社員からは歓迎されているようだ。
 「経営はセンスだ」という言葉があるが、有名作家がいる家庭・慶應幼稚舎・慶応大学将棋研究会・大映テレビとの折衝・ライブドア事件などで養ったセンスが、どのように現在のフジテレビ社長という立場で発揮されるのだろうか。

 遠藤社長の発言・座右の銘

 1~4が対談やインタビューの中での発言、5が座右の銘である。

1 社員には「おもしろいことのそばにいてほしい」と言ったんです。おもしろいことのそばにい続けるには、時流を読む気持ちとか好奇心がないといけない。
2 番組に関しては、うちは伝統的に社長が決めるんじゃなくて、編成部長とか編成局長が決めてます。僕はそれでいいと思いますね。社長が番組を決裁するなんておかしいと思う。 
3 愛されるための技術。これは慶應義塾メソッドだと思います。
4 テレビ局と言っていますが、テレビだけをやっているわけではない、言うならばコンテンツ局だと思って欲しいのです。
5 『凧(たこ)が一番高く揚がるのは、風に向かっているとき。風に流されるときではない』

 1と2は2019年10月の週刊朝日に載った林真理子氏との対談の中での発言。
 3は、「慶應義塾の教育・研究・医療」というホームページの卒業生リレーインタビューで「慶應義塾で学ばれたことは、ご活躍の助けになりましたか?」という質問に対して答えた内容。
 4も、3と同じホームページの中で「放送業界を目指そうという塾生の皆さんに対してメッセージをお願いします」という質問に答えて発言した内容。
 5は、2019年8月に、「サンスポ」に取材された時に話した座右の銘。
 全体的に比較的常識的な内容、かつ前向きで元気が出る言葉が多い。
 その中では、2は部外者が聞くと「そうなのか」と思う内容で、3はこの中では一番本質を言い当てている言葉だと思う。 
 一般人が使うようなやさしい言葉ばかりで、経営コンサルタントや経営学者が使うような、戦略とかモデルとかストーリーとかマネジメントとかイノベーションとかポジショニング等々の言葉がなく、一般視聴者や若い学生などに対してやさしい言葉でわかりやすく発信する力が優れている。
 一言で言えば、わかりやすさが光っていると思う。

※ 次の記事→遠藤龍之介フジテレビ社長について考える② ―現代日本のトップリーダーについての考察―

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