学校警備員をしていた頃 その43

 以前、学校警備の仕事をしてた頃のことについて振り返って思い出せることを書いています。
※ 最初から読みたい方は、学校警備員をしていた頃から読むことをおすすめします。
※ ひとつ前の話→学校警備員をしていた頃 その42

 主税と福祉、どちらが大変か?   
 ある時、O小学校の勤務が終わり、副校長が職員室にいないので、事務室に日報のハンコをもらいに行った。12時過ぎだったと思う。
 事務の林さんは私の姿を見ると、「あれ、今日も副校長いない。やられましたな。また、校内でどっかほっつき歩いてるんだな」なんていいながらハンコと朱肉を出して、「自分で押していいよ」と言った。
 私は、日報を机の上に置き、自分で押した。
「最近、帰りの電車で会わないけど、田村さんは元気」
 と聞くので「ええ、元気な様子です。こないだ少し話をしたら、『福祉局から学校に移ってきて、5時に帰れるようになって天国だ』なんて言ってました」と答えた。
 田村さんというのは、自分が行く別の学校の事務職の人である。
「福祉局は大変だからね」
「そうですか、私は主税が大変だと、誰かから聞いたんですが」
「うーん、僕は福祉の方が大変だと思うな。懺悔しちゃうらしいからね」
「そうですか」
 主税局が大変だという話は、以前学校に勤めていた時、20代の男性の事務の人から聞いた。「なんと言っても、主税局が大変だ。ノルマがあってお金をとって来ないといけない。滞納税債権というんだけど、民間の営業みたいに具体的な金額でノルマがあるところなんて都庁の他の部局にはない」という話をしていた。
 それを聞いたとき私は、「確かにそうかもしれない」と思った。が林さんは違うことを言っている。 
 どうしてこういう違いが出てくるのだろうか。と考えさせられる。
 主税が大変と言っていた人は20代の人で、林さんはたぶん40代後半か50代だ。そこを重視して考えるのも、この場合は一つの有力な視点かもしれない。
 年をとったからと言って、必ず物の見方が深くなるとは言えないが、この場合は、20代の人の見方は表面的なのかもしれない。とも思う。
 主税の方が「税金をちゃんと払わないお前が悪い」ということで、「自分が正しくて、相手が間違っている」というすっきりした考えで仕事ができるので、多少労働時間が長かったりノルマがあったりしても、気持ちは疲れにくい。が、福祉の場合は、「こういう場合は、生活保護は受けられないんです」などと言う場面が多く、弱者に対して「申し訳ない」という気持ちを引きずって仕事をすることが多いようだ。福祉の方が気持ち的に疲れそうだと思う。
 常に若い人の方が表面的・一面的な物の見方をするとは限らないが、この場合は、林さんの言っていたこと方が通常の人間の心理に合った、納得できる人が多そうな考え方だと思った。

※ 次の話→学校警備員をしていた頃 その44

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