学校警備員をしていた頃 その27

 以前、学校警備の仕事をしてた頃のことについて振り返って思い出せることを書いています。
※ 最初から読みたい方は、学校警備員をしていた頃から読むことをおすすめします。
※ ひとつ前の話→学校警備員をしていた頃 その26

 マンションの前で煙草を吸っている男を発見
 ある晴れた午前中、O小学校の周りを巡回していたら、学校の隣のマンションの前で、マンションを見上げたりしながら煙草を吸っている、推定年齢25歳くらいのちょっと太り気味で中背の男性がいた。
 学校ではなく、マンションに用がありそうなので、学校警備という仕事とは関係ないと言えば関係ないのだが、少し気になったので「おはようございます」と声をかけた。
 その男性は、ちょっとうなずき、相変わらず煙草をふかしながら時々マンションを見上げたりしていた。友だちと待ち合わせをしているのだろうか。 
 なんだかよくわからない人だったが、学校ではなくマンションに用がありそうだったので、本来の仕事とは関係ないし、警備士に道で煙草を吸っているのを止める権限があるわけではない。そのままにして巡回を続けた。
 巡回中、顔見知りのクリーニング屋のおばあさんに会った。
「さっき、向こうのマンションの前で、あやしい男がいたのに気がついた」
「気がつきました」
「ちゃんと、声をかけないとだめじゃない」
 そこで、「声はかけました」と言おうとしたが、そうすると、「なんて言った」「そんな言い方じゃだめだ」等々うっとうしい話が続きそうなのでやめて、単に「すいません」と言った。
「私が学校に電話して教えてあげて、警察にも電話したわよ」
「ありがとうございます」
 それから、一回り巡回して、さっき男がいたところに戻ってみると、その男はもういなくて、クリーニングのおばさんと校長先生がいた。
「校長先生が来たらあの男は逃げたのよ、怪しいじゃありませんか。その後、警察の人が通りかかり、逃げて行くその男を捕まえて質問したら、マンションに住んでいる女の人に用があったそうよ。ストーカーみたいな人ね」
 と、クリーニングのおばさんは、後で現場を見に来た警察官が説明してくれた内容を話してくれた。
 確かに、時々マンションを見上げながら煙草を何本も吸っていて、怪しいと言えば怪しい言えなくもない男だった。
 でも、基本的に当事者はマンションに住んでいる女性なのだから、その女性が警察に通報するかどうか決めればいいのではないか。われわれは、その男が本当にストーカーなのかどうかもわからないのだし、クリーニングのおばあさんみたいに、まわりの第三者が気を使いすぎると、その女性のためにもならない。私は、そういう若い人のことは、明らかに怪しそうな人とか犯罪を犯しそうな場合などでなければ、できるだけ温かく見守っていく方がいいと思う。クリーニングのおばあさんの方が私よりもある程度年上だと思うし、そのへんは、かなり感覚が違うのだろうか。
 とは言うものの、クリーニングのおばあさんが、学校や地域のことなどを真面目に心配し、はりきって行動しているいい人であることは間違いない。こういう人がいるから、地域がうまく言っている面もあるのだと思うし、マンションの前で煙草をすっている人がいるくらいで警察に通報したりする人がいるということは、このあたりが、落ち着いたのどかないい地域である証拠でもある。
 ところで、一つ書き忘れていたことがある。
 この場合、男が煙草を吸っていたのは、学校の前ではなく学校のとなりのマンションの前だったのだから、マンションの管理人に相談するのが、有力な方法なのではないか(そのマンションは、大きさから言うと中型くらいのマンションで、午前中は管理人が常駐していた)。マンションの管理人が、そこで、直接男と話をするのか、警察に通報するのかわからないけど、マンション側の人とまったく関係なく物事を進めてしまうよりは、その方がよさそうだ。
 後から振り返ってみて、このことに気がついた。

※ 次の話→学校警備員をしていた頃 その28



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