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勉強と多様性について

サドベリーの子は勉強しないと思われているようですが、それは違います。

「勉強をしようと思ったらする」

が正解です。

ですので、している生徒もいますよ。

もちろんここでいう勉強はいわゆる、国語算数理科社会英語のような、教科的なもの。


でもそもそも、人生において興味関心や必要なものが、教科的な勉強とは限らないわけです。

パティシエになりたいからお菓子作りをするし、人前で話す機会があるから練習する。

自分たちのコミュニティーを存続させたい、もっと良くしたいと思うから話し合う、決める。

それらと同じように、いわゆる教科的な勉強が必要だと思ったら、します。

「やりたい」「必要」な時こそ学ぶとき。


ではなぜ、一般的な学校に通っている子は教科を勉強しているのかというと、それはそこの学校が教科を勉強するところだからです。だから、その学校では教科を勉強しないといけないでしょう。

だってそれをするところなのですから。

バレエ学校に入学したのに、「なんでバレエしないといけないの?」

文章塾に入ったのに「なんで文章ばかり書かされるのか?」

と言っていたら、ちょっとへんてこな感じがしませんか?

車をつくる会社に入って「なんでこんなに毎日車をつくらされなきゃいけないんだ」なんて大人が言っていたらおかしい。


ですから、いわゆる教科的なことがしたい、必要だと思うなら、今の学校教育は合っているのです。今の時代はそのような環境を国がサポートする社会で、そうではない時代もあったわけですから、ほぼ無料でその学校に通えて運がいいともいえます。

問題はそういう教育、そういう学校に自分で選んで行っていないことなのです。


でも、日本の子ども全員が教科勉強をしたいと言っていたら、それも怖い感じがしませんか?

だって全員の子が同じ趣味嗜好だったら、もう個性も何もないわけです。全ての子が薔薇が好きと言っているようなもの(薔薇はたしかに美しいですけどね、全員が言っていたらという意味で)。

大人もそれぞれが違う人間ですね。

スポーツが好き。家で過ごすのが好き。人前で話すことが好き。文章を書くのが好き。お城の石垣が好きな人もいれば、コンピューターが好きな人もいる。伝統的なものを大切にしている人もいれば、最新に目がない人もいる。薔薇が好きな人もいれば、カスミソウが好きな人もいる。それぞれが咲き誇ってこそ美しい。子どもだってそうではありませんか。

でも同時に、多くの人はこういう傾向があるというのもある。

みんながみんな、起業したいわけではありませんし、子どもの教育のために引っ越すことはできない。やはり学歴が大事だと思う人もたくさんいる。薔薇が好きな人が多いのも事実です。

ですから、多くの子が教科的な勉強をする学校に行くのもおかしいとも思いません。


平成28年の総務省統計局の調査では、事業所数557万8975事業所に対し、従業者数5687万3千人とのこと。日本の人口は令和2年で1億2580万9千人。

つまり人口の約22人に1人、働いている人の約10人に1人は、社長もしくは所長といったリーダー層となります。

サドベリー教育は特にリーダーを育てたいというわけではありませんが、でもそういう方にたくさん会ってきて、やはりちょっと変わっていて面白くて、自分の好きなこと、得意なことを追及しています。

そして、実は社会性もちゃんとあったりする(当たり前ですが)。他責も少ない(他責していても解決はしないから)。

全ての子がサドベリー教育や一般的ではない教育を選ぶ必要もないけれど、でも10人に1人くらいは、そういう道を選べるのもいいんじゃないでしょうか?


もし、たまたま選びたいものが少数派だっただけで、自分に合う教育を選べないのだとしたらそれは差別であり、「他に行き場がないから」「かわいそうだから」ではなく、人生の選択肢として自由に教育を選べる社会にしていかなければなりません。

自分で決断できる大人に育てたいのなら、この教育がいい、この育ち方がいい、この学校がいいということを大事にできる制度や文化にする必要がある。

そして、数学したいなら、料理したいなら、石を削りたいなら、ずっとしていていいよと言えるような学校も必要だと思うのです。

そういう子を大事にできないことは、大きな社会損失でもあると思うのですけどね。だってそういう一途な人が何かを成すことも多いのですから。


『薔薇は決してひまわりになれないし、ひまわりは決して薔薇にはなれない。全ての花は自分なりに美しい。/ミランダ・カー』

薔薇にもひまわりにも、カスミソウにも咲く場所がある。そして、

『もし全ての小さな花が薔薇になりたがれば、春はその愛らしさを失ってしまう。/聖テレーズ』

花は1つじゃなく、色々あっていい。むしろ多様性は素晴らしい。


先週、立春を迎えましたね。

これからの社会を、色々な花が咲き誇る社会にしていきませんか?

そのための一助となれればと願っています。


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