刺青と温泉
温泉にタトゥーや刺青が入っている人が入るのはOKか?この問題には様々な意見があると思うが、僕個人としては大賛成だ。
極端な話、仮に反社会的な活動をしている人で刺青が体中に入っている人が温泉に入ってきたとしても、いきなり喧嘩を始めるわけじゃない。むしろ僕にはそういう人の方が人目を気にして静かに入っている印象がある。実際に自分が被害を受けた人が反対するなら話は分かるが、見た目やイメージだけで物事を判断するのはナンセンスだ。
僕自身も隠せる程度の大きさではあるけれど、タトゥーが入っている。別府以外で温泉に入る時は隠さなければ入れない場合も多々あり、別府で温泉に入る時の周りの目を気にしなくてもいい環境というのは大変ありがたい。
日本ではやはり刺青やタトゥーには「反社会」のイメージが強く、ヨーロッパのサッカー選手などが入れているタトゥーとは明らかに意味合いが違う。歴史や文化を学ばないと分からない背景があるだろうし、手放しで全てOKというわけにはいかないことにも納得がいく。
そういう意味でも別府という街は本当に特殊な街だとも言える。市営(市が運営している温泉施設)の温泉はタトゥー刺青全てOKで、公衆浴場もほぼOKだ。受け入れる文化が脈々と受け継がれてきているこの街では、タトゥーも刺青も障がいもLGBTQも国籍もマイノリティーにはならない。少なくともそこに壁を作らず生活をしている人が多い。
ヤクザを引退したお爺ちゃんが温泉に入りに来ていて、背中には大きな般若の顔が彫られている。昔は相手を威嚇出来るほど恐ろしい般若だったのだろう。けれど、歳の経過と共に皮膚が下がって、その般若が今は笑って見えるという話は別府では有名な話だ。(と、うちの母が言っていた)
温泉では肩書きや見た目や趣味趣向など全く関係ない。それぞれが文字通り裸の付き合いが出来る場所だ。そして温泉のように全ての人を受け入れようとしているのが別府という街で、その結果多種多様な人が集まるニューヨークのような面白い街になってきている。
今回撮影したミカさんも全身に刺青が入っている。色々と苦労はあるそうだが、自分のやりたいことを突き通すことに後悔はないと言う。彼女が見た別府の街、別府の温泉はどんな景色だろうか?是非一読して欲しい。
今後は男性や家族で刺青が入ってる人も撮影したいと思っている。モデルも随時募集中です。
2019.12.3 東京神父
亀陽泉「亀と蛙と刺青と」
東京神父 写真家。1978年4月20日生まれ。 別府出身、自由が丘在住。