「はじめてのおでかけ」は、大冒険のはじまりだ。
こんにちは!東京おでかけプロジェクトです。
今年度は、福祉医療機構様の社会福祉振興助成事業に採択していただき、これまでは不定期開催していたおでかけイベントを定期的に開催しよう!と走り出しました。
そんな初夏を感じさせる5月20日、3年ぶりに神保町にあるブックハウスカフェをお借りして「本屋へおでかけプロジェクト」を開催しました。
スペシャルニーズがある子どもと家族のおでかけは、不安がいっぱい
病気や障害、医療的ケアなど、スペシャルニーズがある子どもたちは、病気や障害があるとわかると、数年間、病状が安定するまで病院で過ごすこともあります。
病院に通って子どもと付き添う時間を捻出するために、母親の多くは仕事を辞めてキャリアを諦めたり、きょうだいは親戚に預けられて寂しい思いをしたり。
そんなご家族の中には、「退院できても感染症が心配で、また入院したらと思うと、病院や近くのコンビニしかおでかけはしたことがありません」だったり、
「医療機器のアラーム音やたんの吸引の音が迷惑だろうなと、人の目が気になっておでかけしづらいです」という方々がおられます。
さらに、呼吸器を付けていて酸素ボンベが欠かせないお子さんや、いつ発作が起こるかわからないお子さんは、ご家族も医療者と同様の医療ケアをすることに慣れていない中、何かあったら不安でおでかけなんてできない、なんていうご家族も。
そこで、東京おでかけプロジェクトでは、「ご家族がどんどんおでかけするきっかけをつくりたい」という想いから、ご家族のはじめてのおでかけ体験をサポートする、「本屋へおでかけプロジェクト」を企画しました。
「いくら楽しそうなイベントでも会場へ行くまでが不安だし、大変」という声にも応え、希望されたご家族にはご自宅と会場の往復を一緒に付き添ってくれる学生サポーターも派遣しました。
どの学生サポーターも、将来は医師や看護師、教師、福祉の専門家として、病院や福祉施設、児童養護施設などで子どもたちに関わる仕事に就きたい!と、ご家族の暮らしをもっと知りたい、学びたい、と思ってくれている方たちばかり。
なかなかご家族の暮らしを理解しながら専門的なケアにあたっている専門職は少ないのが現状だと思いますが、そんな専門職が増えてくれたらという願いも込めて、東京おでかけプロジェクトでは学生サポーターの募集も随時行っています。
ゆったりと「お気に入りの1冊」を探す
今回お借りした神保町にあるこどもの本専門店「ブックハウスカフェ」は、その名の通り、本だけでなく、お店の奥には素敵なカフェカウンターがあります。
そして乳幼児から大人まで楽しめる本が、1万冊も!
お店に入ると、子どもたちもご家族も「わあ!」と目を輝かせました。
「大きなバギーだと、なかなかゆっくりと店内を見て回れないだろう」そんなお店側からのご提案もあり、開店前の1時間、特別にお店を完全に貸し切らせていただきました。
「ゆっくりと、お気に入りの1冊を見つけてほしい」
学生や医療的ケアができる医師・看護師らが1家族に1人、サポーターとしてご家族に付き添いながら、さらにこの日はブックハウスカフェの皆さんが「絵本案内人」となり、お子さんたちのために本を一緒に選びました。
遠方の参加者のためにも、ゆっくりと集合してもらいながら冒険マップを片手に本を探したり、なかなか家族写真を撮る機会がないご家族のためにプロのカメラマンが記念撮影をしたり、思い思いに店内を楽しみました。
雨も吹き飛ばす「声のプロ」によるおはなし会
「ブックハウスカフェ」が開店する11時になると、一般のお客さんも続々とお店の中へ。中央のカフェスペースは貸切ったまま、いよいよイベントがはじまりました。
今回参加してくれたのは、6組のご家族。お子さんがまだ乳幼児で同じようなご家族と繋がれていない方や、ふだんは訪問籍でお友達との交流が少ないお子さん、大きな音が苦手なお子さんなど。
まずは、自己紹介を兼ねてみんなが見つけた「お気に入りの1冊」を紹介してもらいました。
そして、皆さんお待ちかねの「おはなし会」がはじまりました。
普段は有名映画の吹き替えや、人気番組のナレーションを担当している声優さんたちで構成されている「おはなしグループyomitano!」さんにお願いして、もうすぐ雨の季節がやってくることから、雨を好きになってもらえるような「おはなし会」をお願いしました。
「おはなし会」がはじまると、子どもたちの表情はみるみる変わっていって…どの子も集中して本と雨の音に耳を傾けます。
参考)スペシャルニーズがある子ども向けのおもちゃ一覧
神保町といえばカレーの街
あ~びっくりした!ふつうの「おはなし会」とは違う、遊びも取り入れたダイナミックな演出にみんなドキドキしたあとは、おいしいカレーパンタイム。
摂食嚥下障害やアレルギーがある子どもたちにも楽しんでもらえるように、柔らかい食事を用意するか?
事前の打合せではスタッフも迷いましたが、「神保町のカレーパンをそのまま味わってほしい」、そんな想いから今回はあえて少し辛いカレーパンを用意しました。
その街やその場所、その食べ物をそのまま楽しんでほしいというスタッフの願い通り、
「カレーが大好きで、前は神保町によくカレーを食べにきていたのに、子どもが生まれてからなかなか食べに来れていなかったので嬉しいです!」
と、ある参加者から嬉しい声が。
インクルーシブな公園や、誰でも使えるトイレ。
そう謳っていても現実には使えない人がいたり、使い勝手が悪かったり。
どんなにがんばって、みんながHAPPYになるような場づくりやイベントを企画してみても、なかなかそうはいかないことがある。
でも、「少しの柔軟性と声がけ」があれば、そこにはHAPPYな空間が広がるんじゃないか。
そんなことを考えながらほおばるカレーパンは、スパイシーだけどおいしくて、ほくほく満たされるのでした。
「はじめてのおでかけ」を終えてみて
3年ぶりに開催した「本屋へおでかけプロジェクト」
久しぶりの開催ということもあり、東京おでかけプロジェクトのアンバサダーを引き受けてくれているご家族やコアメンバー、ブックハウスカフェの皆さんとは、何度も下見や打合せを重ねました。
一番大切にしたかったのは「お子さんとはご家族を介して会話するのではなく、お子さん本人とお話しすること」
「病気や障害のことを聞いてもいいけれど、それよりも、本屋さんを冒険したり、カレーパンを食べたり、この瞬間を友のように一緒に楽しむこと」
イベントを終えてみて、サポートスタッフからは「本選びに夢中になっていて、そういえばどんな病気や障害があるのか知らないままだった」
「もっともっと色んな本や遊びを紹介したかった」
そんな声が聞こえてきました。
ご家族からは、
「ふだんは医療者と子どもの治療の話をすることが多いので、サポーターの皆さんとの雑談が楽しかったです。おはなし会もすっかり引き込まれました!」であったり、
「とにかくハートフルな空間でした。スタッフのみなさんが常に笑顔で、こちらに変に気を遣うこともなく、ありのままを受け入れて接してくれていると感じました。ふだん外に出る時は人目が気になったり、隠れて吸引したりと気疲れすることが多いのですが、今回はとても居心地の良い空間で親子共にのびのびと過ごすことができました。」
と、そんなあたたかいコメントが寄せられました。
世界はたまにいじわるで、誰も味方なんかいないような気がして、下を向いてしまう日もあるかもしれない。
でも、「世界はこんなにあったかくて、Welcomeされているんだ」ともしこの日のことを思い出してもらえたら。
このおでかけ体験が、次のおでかけや家族旅行、冒険のきっかけになったら、うれしく思います。
泣いても、走っても、アラーム音が鳴っても大丈夫。
「行ける場所」より「行きたい場所」へどんどんおでかけしよう。
どんどん街の人の目を変えていこう。
これからも、東京おでかけプロジェクトでは、「親子のはじめてのおでかけ体験」を企画していきます。
■イベントの様子をおさめた動画はこちら
さいごに
今後も継続的に活動を運営するため、東京おでかけプロジェクトでは、年間を通して寄付を募集しております。
活動には会場利用料や、医師/看護師/ヘルパーと いった専門的なケアにあたってくれるスタッフ、 物品などの費用が必要です。
ご寄付いただける方は、いずれかの方法でぜひお願い致します。
◆振込み口座
三井住友銀行 中野支店 普通4994025
◆クレジットカード決済・グッズ購入による寄付
◆「WeWard」アプリで歩いて寄付する
※紹介コード「YUM+-iygPQ」をぜひご利用ください
Special Thanks
本屋へおでかけプロジェクト SUPPOTERS
助成:令和5年度 独立行政法人福祉医療機構 社会福祉振興助成事業
写真撮影:吉澤健太
動画撮影:山田圭司郎
ブックハウスカフェ:今本義子、茅野由紀
学生サポーター:田羅理美、増山遊斗、戸塚遥、齋藤亜咲
医療サポーター:小西由香、山本智愛、熊谷綾
おはなし会:おはなしグループyomitano!
受付:鈴木純子
ご寄付・ご協力いただいた皆様
武山絵里子/大久保夏樹/大槻佐和子/松村吉章/中野富美子/高木萌子/滑川伶奈/村林瑠美/朝比奈志津子/福井篤/小島希美/中島 明/小原聖子/田羅理美/丸山美智子/葉恵理子/小柴優子/高尾洋之/サクちゃん/MONA MUSICの皆様/三井三奈子
企画にご協力いただいた皆様
嵯峨麻衣子/峯尾志穂/滑川伶奈/竹内和香菜/mogmogengine
助成
令和5年度 独立行政法人福祉医療機構 社会福祉振興助成事業
(順不同・敬称略)
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