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【FUCK②③】生活支援員が観た映画「月」評~後編~

※【前編】はこちら ※クソ長くなります FUCK①振り返りと補足~ほんとうの支援の現実を教えてやるよ~ こんばんは。東京ニトロです。知的障害者の自立に向けた支援を行う生活支援員をしています。いま仕事から帰ってきて、きのう書いたあの記事を再読し、また怒りが湧いてきている(ここで敬語をやめる)。幸い、うちの職場であの映画を観たのは施設長と自分だけで、施設長は「支援員として得るものはなにもない」と評していた。そりゃそうだ。何度もいうが、映画「月」は問題提起の形をとったドチャクソ

    • 【FUCK①】生活支援員が観た映画「月」評~前編~

      はじめに こんにちは。東京ニトロです。 趣味で(パニック)小説を書いたり漫画を描いたりしながら、現実世界では(日中生活支援と施設入所支援を行う施設で)生活支援員というお仕事をしています。生活支援員というのは、障害を持った方の自立した生活のためにお手伝いをしたり、社会復帰や参画に向けた創作や生産活動に関わるお仕事です。(ここで注意なのですが、「自立」というのは「誰」(または「何」)の手助けも借りないという意味ではありません)ちょうどコロナ禍が始まる頃に入職したので、勤続4年に

      • "感想"に対するすべて

        ひらめきマンガ教室6期聴講生のもち鎧さんが、御本人が書かれた同教室制作コースの、これまでの作品感想をすべて削除した件について、無関係ではない、というか、ほぼ原因はじぶんにあるだろうという憶測に基づいて、じぶんが関わった部分について書こうと思う。 これまでもち鎧さんは6期生の描いたネームすべてに感想を書いてくれていた。書いてくれていたんだけど、正直言って、おれともち鎧さんの「感想」との相性は最悪だった。腹を立てていた。おれの作品(マンガ)からわかるとおり、おれのネームは完成度

        • Lights&Motion

          マンモス団地と国道の照明灯だけが光源となる北総の深夜1時、マルスズ梨園、と書かれた白い看板の根本にスクーターが止まっていて、それにまたがったまま彼女はぼくを待っていた。そう書くとなかなかにエモいけれども実際はぜんぜん違う。これは村上春樹の小説なんかじゃない。現在、つまり2003年3月20日にはまだ「エモい」なんていう言葉はなくて、インターネットはもっと狭くて、ケータイでできることといえば16和音の着信音をダウンロードすることくらいで、それがぼくらのすべてだった。彼女は点滅を繰

        【FUCK②③】生活支援員が観た映画「月」評~後編~

          そしてわたしたちの、「わたしたちの怪獣」

          それは、2020年の夏に起きた。 渋滞している夕方の京葉道路、武石インターチェンジの長い信号待ちで、ぼくと同じようにヘトヘトになった中古のスズキ・ジムニーの狭い車内で、ノイズが走るAMラジオから聴こえる、ライムスター宇多丸が読みあげる「お便り」のなかに、その運命的なひとことはたしかに存在した。 ――これは、おれの物語だと思ったんです。 そのリスナーは、WAVES(2019年)を観た感想をそういっていた。ぼくはずっと、イナカの片隅で、クラスの誰も聴いていないような洋楽を聴

          そしてわたしたちの、「わたしたちの怪獣」

          E.Y.E.

          レイカは19時すぎに教室に入ってきた。LEDの白い灯りが反射する巨大なホワイトボードの前で立ち止まった彼女の、赤いシミが広がるブラウスを見て、ぼくたちはその視線をいっせいに彼女へと向けた。窓ガラスに貼られた「東大2名合格!」のステッカーは、寒冷前線がもたらす激しい雷光によって瞬間的な影を落としつづける。来年の春には、彼女の合格実績がステッカーとなってそこに貼り付けられるだろうと誰もが信じていたのに、いま、その彼女は雨と血液でぐちゃぐちゃになって立ちすくんでいる。 ――おかあ

          きっとぼくたちは戦争をはじめる。

          ぼくたちは戦争をはじめる。 14時間働いたあとで飲む度数の高いアルコール飲料によって、極端に速度が遅いMVNO回線で見るSNSによって、紫と漆黒の中間にある空の下で白い無機質なひかりを放つセブン-イレブンによって、自炊しないといけないと思いながら選んだカップラーメンによって、ぼくたちは戦争をはじめる。 「きっとまだできることがある」 アルコールと乳酸とストレスによって歪んだ思考回路できみは思う。きっとまだ努力が足りない。きっとまだ工夫できる。もっと自己研磨して、残業をして

          きっとぼくたちは戦争をはじめる。

          R/16

          ロシアがウクライナへの侵攻を開始してから4日が経過した。 創元SF短編賞1次審査の結果が発表されて、そこにぼくの名前はなかったわけだけれど、かつてインターネットが作り上げた親しみやすい国家指導者というキャラクターが結局は"キャラクター"に過ぎなくて、それでもなお#まだ面白かったころのプーチンみたいなタグを使っているような、こうした複雑極まりない現実と向き合えない人々とおなじように、ぼくもこのつらい現実と向き合うことができず、この夜をやり過ごすためだけに愛車の赤いSAAB90