見出し画像

kyodo 20_30のきろく #ここから展

2月26日(土)、2月27日(日)に、東京で(国)境をこえるのメインプログラム、kyodo 20_30の成果発表会「ここから展」を開催しました。

ここから展では、kyodo 20_30の参加者が共同制作した作品を発表しました。

kyodo 20_30は、「(国)境」というテーマに関心を持って集まった参加者が、共同制作をするというプログラムです。作品が出来上がるまでの過程には、さまざまな協働がありました。(これまでの活動のレポートはこちら!)

このレポートでは、ここから展の様子と、展示された作品について書きます。

5つの作品とチームの紹介

まず、ここから展で発表された5つの作品について紹介します。
5つの作品はそれぞれチームで作られていて、作品プランを考えた人と、その作品に興味がある人が協力して制作しました。

作品1 像

胡雪寧さんを中心とするチームで制作しました。雪寧さんは中国・上海出身で、現代美術の領域で作品を制作しています。
雪寧さんが考えた作品プランに、kyodo 20_30の参加者や参加者の皆さんの知人が参加して、《像》という作品を作りました。

画像1
作品の制作に協力してくれた「くろねこドーナツ」の前で。

《像》は、知らない人同士が似顔絵を書き合い、その様子を記録した映像と出来上がった似顔絵を展示するという作品です。
経堂の街中で似顔絵を描ける場所が必要だったので、その場所を探しました。チームメンバーの知り合いで、似顔絵を書いてくれる参加者も協力して探しました。また、どうしたら雪寧さんの作品がもっと良くなるかをみんなで話し合いました。

作品2 だから、ここにいる

柴田早理さんを中心とするチームで制作しました。早理さんは資本主義や多文化共生、環境問題に興味を持って作品を制作しています。
早理さんが考えた作品プランにkyodo 20_30の参加者が参加して、一般財団法人東北多文化アカデミーの学生さんや先生にも協力してもらって《だから、ここにいる》という作品を制作しました。

仙台にいる「東北多文化アカデミー」の学生さんとオンラインで話している様子

《だから、ここにいる》は、早理さんが日本語や日本の文化を学んでいる最中の留学生の方々と話して、他の人にももっと知ってほしいと思ったことを紹介するという作品です。写真や対話の記録、早理さんが制作したグラフィックを展示しました。
早理さん以外のメンバーは、作品をより良くするための話し合いや東北多文化アカデミーの皆さんとの対話に参加しました。

作品3 新大久保お散歩学派

この作品は、綾田將一さんとお散歩をした人たちで作った作品です。
綾田さんは俳優として、自分の身体は、誰かと誰かの間や文化と文化の間をつなぐものになるだろうと考えました。そこで、たくさんの文化が混在している「新大久保」を散歩して、その経験を他の人につなぐことに挑戦しました。

kyodo 20_30参加者の桐葉恵さん、胡雪寧さんとの新大久保散歩の様子。
新大久保在住のライター、室橋裕和さんとの新大久保散歩の様子。

たとえば、新大久保に住んでいるライターの室橋裕和さんや、参加者の胡雪寧さん、柴田早理さん、RoyTaroさんを誘って新大久保をお散歩しました。一緒に歩く人と散歩の計画を立てて、実際に歩いて、その記録を公開しました。
(室橋裕和さんとのお散歩の記録はこちら

ここから展ではお散歩の記録を展示しました。自分の展示場所だけではなく、SARIさんや雪寧さん、RoyTaroさんの作品のそばに相手とのお散歩の記録を展示しました。

作品4 意味をこえる身体へ ショットムービー1+2

この作品は、蔣雯さんを中心とするチームで制作しました。「意味をこえる身体へ」は昨年度のkyodo 20_30から続いている企画で、「ショットムービー」を撮影するという企画です。
(「ショットムービー」についてはこちらで説明しています。)

「ショットムービー」の制作方法は、通常の映画製作と異なります。たとえば、この作品には監督はいません。プロットはありますが、台本はありません。俳優自身がキャラクターの設定を作ります。脱中心化をめざして、チームの編成や作る手順を見直し、新たな制作法での作品制作をめざしていてます。

経堂アトリエの屋上で撮影をしている様子。

制作チームには、kyodo 20_30の参加者や、kyodo 20_30の参加者の知り合いが参加して、俳優や撮影、編集、ディレクションなどの業務を分担しました。

作品5 共鳴するもの

Roy Taroさんとオガワジョージさんを中心とするチームで制作しました。Roy Taroさんは画家で、ジョージさんは俳優です。二人がチームになった時には、作品のプランは決まっていませんでした。

話し合いの様子。左から川渕優子さん(東京で(国)境をこえる事務局)、RoyTaroさん、オガワジョージさん

kyodo 20_30の参加者やゲスト、事務局の川渕優子さんが作品プランについて相談に乗りながら、RoyTaroさんとジョージさんが二人で取り組む作品を考えました。
話し合いの末に、RoyTaroさんとジョージさんがお互いに向き合うことをテーマにして、ライブボディペインティングを行うことになりました。

ここから展、当日の様子

二つの会場に分かれて、5つの作品を展示しました。

一つ目の会場は「経堂アトリエ」です。経堂アトリエは世田谷区経堂の天祖神社の近くにある2階建てのレンタルスペースです。「東京で(国)境をこえる」がはじまった2019年から、2022年のここから展まで、kyodo 20_30の活動に欠かせない居場所を提供してくれました。
二つ目の会場は「マホラ食堂」です。経堂アトリエからは歩いて15分ほどの場所にあります。ダッチオーブン料理の美味しいお店で、お店の2階には映像作品を鑑賞できる設備があります。

まずは経堂アトリエから見ていきましょう。天祖神社の向かいにある、黄色いおうちです。

経堂アトリエ外観


一階では《像》の展示と、《共鳴するもの》の上映を行いました。

《像》展示風景 お互いのことを知らない2人が似顔絵を描き合っている様子の記録映像が投影されている。
《像》展示風景 窓に貼られている絵は、像の中で描かれていた似顔絵。手前のテーブルで似顔絵を描くこともできる。
《共鳴するもの》より 上演のために、床も壁も真っ白に覆い尽くされています。撮影:奧田隼平
《共鳴するもの》より 定員8名までの少人数で上演し、鑑賞者は2人のパフォーマンスをとても近くで見守りました。撮影:奧田隼平
《共鳴するもの》より   左が画家のRoyTaro、右が俳優のオガワジョージ。撮影:奧田隼平

2階では、《だからここにいる》、《新大久保お散歩学派》が展示を行いました。
《新大久保お散歩学派》のワークショップでは、経堂の街に出て、マホラ食堂までの道のりをお散歩しました。

2階の入り口
《だから、ここにいる》展示風景。企画者のSARIさんが、東北多文化アカデミーの方々から話を聞いて知ったことを、話してくれます。
《だから、ここにいる》展示風景 「東北多文化アカデミー」の先生方とSARIさんたちの対話をまとめた冊子。
《だから、ここにいる》展示風景 対話の記録やグラフィックが、和室の空間に散りばめられている。
《新大久保お散歩学派》展示風景 モニターにはお散歩中に撮影した自撮り映像が流れている。
《新大久保お散歩学派》展示風景。《像》など、他の参加者の作品のそばに、その相手とのお散歩の記録を展示した。
ワークショップ《お散歩学入門》の様子。実際に歩く前に、マホラ食堂までのお散歩で達成したいことをみんなで書き出す。
ワークショップ《お散歩学入門》の様子。

つぎに、マホラ食堂です。

マホラ食堂では、《意味をこえる身体へ: ショットムービー1+2》として、ショットムービープログラムで作られた2本の映画を上映しました。
2021年の8月にリモートで撮影された《八月対談録》と、2021年10月から12月に対面で撮影した《変奏》の2本です。

「マホラ食堂」外観。定例会の会場としても使いました。
上映の様子。上映後のトークで言及されることが多かったカフェのシーン。
《八月対談録》より
《変奏》より


ここから展をふりかえって

「ここから展」と一緒に、2021年度の「kyodo 20_30」の活動も終了しました。

この1年間、kyodo 20_30に集まった皆さんが向き合おうとしていた「(国)境」をめぐる問題は、常に変化を続けていました。ここから展が終わったひと月前と今を比べるだけでも、その様子は大きく変化しています。ですが、(国)境をめぐる問題が社会にあり続けることは変わりません。

kyodo 20_30で集まって、話し合って、一緒になにかをつくってわかったことが、「kyodo 20_30」に関わった皆さんにとって、これからも(国)境をめぐる問題と向き合うための糧になることを願っています。


東京で国境をこえるの活動状況はこちら↓
Twitter:https://twitter.com/tokyokokkyo
Facebook:https://m.facebook.com/tokyokokkyo.tokyo/
note:https://note.com/tokyokokkyo


書いた人:阿部七海(東京で(国)境をこえる事務局)