見出し画像

一般社団法人サービスデザイン推進協議会とは何者か。「持続化給付金」事務局の謎めいた正体を考える。

はじめに

2兆3,176億円という壮大な予算額を計上し、2020年5月1日より受付が開始された政府の「持続化給付金」。所管は経済産業省(正確にはその外局たる中小企業庁)ですが、経産省はその執行にあたって「民間団体等に委託する」旨を、当初から明らかにしてきました(画像1)。

画像1

経済産業省関係令和2年度補正予算の事業概要(PR資料)p.13より引用。

民間団体への委託規模としては、類例を見ないほどに巨額のお金(しかも国費)が動く、今回の持続化給付金。しかも委託先にはその事務費(手間賃)として約769億円が支給されます(記事の⑤をご覧ください)。政府による布マスク配布事業の2倍近いお金が、一団体に流れ込むというのです。

令和2年補正予算案のもう一方の目玉であった10万円の一律給付(特例定額給付金/総務省所管)については市区町村を介しての給付となりましたので、民間委託はこちらのみ。委託先はどこが選定されるのか、(わたくしどもの)注目を集めておりました。

明けて2020年5月1日。

持続化給付金 公式ページがオープン。申請方法の案内・電子申請のガイダンス等などの情報を見つつ、トップページをスクロールしていくと、一番末尾に委託先の表示がありました(画像2)。

スクリーンショット 2020-05-01 21.35.43

そこに表示された持続化給付金の政府委託先の名は「一般社団法人 サービスデザイン推進協議会」。経産省肝いりの「おもてなし規格認証」の元締め(認定団体)として知られる民間団体です。これまた経産省肝いりの「IT導入補助金」の事務局として、過去数年間にのべ数十万社の中小企業を相手としてきた経験があり、数百万の中小企業および個人事業主を相手とするであろう、今回の事業については打って付けの選定とも思われます。

ただ、この団体は不思議な組織で、これだけ大規模な委託事業を手がけながら、団体自身の公式HPを持っておりません。service-design.jpの名でURLを見てみると、そこにあるのは上述の「おもてなし規格認証」の公式ページ。軽く調べてみても、組織自体が一体どういう構造なのかが全く判然とせず、狐につままれた様な思いでした。

この記事では、謎めいた政府委託先「一般社団法人 サービスデザイン推進協議会」について、その正体を考えていこうと思います。

※5月10日、<第二弾>「資金の流れから一般社団法人サービスデザイン推進協議会の実態を考える」を公開しました。

※5月16日、<第三弾>「一般社団法人サービスデザイン推進協議会の裏側に潜むもの」を公開しました。

※6月13日、<第四弾>「遍在する『補助金執行一般社団法人』/サービスデザイン推進協議会と環境共創イニシアチブの正体を考えるを公開しました。

①公開情報から見る一般社団法人サービスデザイン推進協議会

まずは公開情報から見て参りましょう。社団法人、財団法人、営利法人(株式会社など)の別を問わず、最も頼りになる公開情報は会社/法人登記簿です。法務省の法務局(登記所)へ行けば無料で見られますが、このご時世に三密きわまる法務局へ行くのは避けたいところ。民事法務協会の登記情報提供サービスで有料閲覧をすることにしました。

・・・さぁて、理事の欄は誰かなぁ?

本当は設立時社員(設立者。普通の会社でいう発起人)の項目が見られれば良いのですが、残念ながら登記簿には記載されません。そこで理事(普通の会社でいう取締役)の構成から、出資者を想像していくことになります。

「株式会社電通(東京都港区)」は複数人、「トランス・コスモス株式会社(東京都渋谷区)」や「日本生産性本部(東京都千代田区)」の出身者も見受けられ、これだけで既に理事の過半数を占めています。・・・やぁみなさん。雁首を揃えていらっしゃいますねぇ。

つまり、一般社団法人サービスデザイン推進協議会とは、各社の共同によって設立されたJV(ジョイント・ベンチャー)であると言うことが出来そうです。公共事業その他の建設業ではよく見かけるJV方式ですが、純然たる公共政策分野でもJVが存在するとは、新鮮な驚きでした。

たしかに「サービスデザイン推進協議会」で検索してみると、代表理事こそ笠原英一博士(アジア太平洋マーケティング研究所)ですが、一般の企業におけるCOOに当たる業務執行理事には電通の平川健司氏が就いており、そのことは経産省×事務局のインタビュー記事(画像3)や電通報(画像4)からも確認できます。

スクリーンショット 2020-05-02 13.31.43

※IT経営マガジン COMPASS「IT導入補助金 意図と展開 経済産業省×事務局 特別対談」より引用。

スクリーンショット 2020-05-02 13.32.16

※株式会社電通 広報局「ウェブ電通報」のピープルページより引用。

また、サービスデザイン推進協議会の職員について調べてみますと、グループ長として「株式会社パソナ(東京都千代田区)」の吉田達志氏の名前を見ることが出来ます(画像5)。

スクリーンショット 2020-05-02 13.51.55

※グーグル検索結果より引用。

そしてインターネットにおける「.jp」アドレス(JPドメイン)の管理団体であるJPRSのWhoisページで「service-design.jp」のドメイン情報を照会してみると、またしても、見たことのある企業名が出てきます。

ドメイン名や管理者情報をそのまま貼るのは望ましくないため、画像は貼りませんが、検索タイプを「ドメイン名情報」、検索キーワードを「service-design.jp」として、検索いただければ一発です。

表示されるサーバー名、何とは申しませんが、www.dentsu-em1.co.jpが公式HPアドレスであった「電通イーマーケティングワン(現:電通デジタル)」を強烈に想起させるお名前ですね。委託もしくは再委託でもお受けになったのでしょうか。

なるほど各社は社員(普通の会社における株主)としての活動のみならず、その構成員を派遣したり、再委託を受けたりするなど、運営にもしっかりと関わっている模様です。

では、ちょっと深掘りしてみましょう。

②過去の情報から見る一般社団法人サービスデザイン推進協議会

人物や法人について調べる際、ポイントとなるのは対象者の来歴を遡ることです。出来うる限り古いデータ、最古の情報を見つけ出し、これを起点として現在に至る経緯を見ていくことが重要になります。

サービスデザイン推進協議会の様な法人の場合、最古の情報となるのは、人間で言う生年月日に当たる「設立年月日」です。そして、それは平成28年(2016年)5月16日のことでした。国税庁の法人番号公表サイトによると、その二日後、平成28年5月18日には法人番号が指定されている様です。

それでは2016年の設立当時の情報がどこかに残っていないか、探してみましょう。ここで頼りになるのはアメリカのNPO「インターネットアーカイブ」が全世界に提供しているサービス WayBack Machineです。ウェイバックマシーンの中には、実に4,000億を超えるウェブページの履歴(スナップショット)が収集保存されています。

これでサービスデザイン推進協議会を見てみると・・・(画像6)。

スクリーンショット 2020-05-02 14.23.23

ビンゴ!2016年の設立当時の情報が出てきました。

これによると「本サイトは、平成27年度サービス産業海外展開基盤整備事業費補助金(おもてなし規格認証に係る認定機関及び認証機関立ち上げ・運営支援)を受けて一般社団法人 サービスデザイン推進協議会が運営しています。」との注意書きがあります。

フムン。「平成27年度サービス産業海外展開基盤整備事業費補助金」ですか・・・。

この事業について調べてみると、経済産業省の平成27年度補正予算案の概要の中にその名前があるため、間違いなく経産省の事業であることが分かります。そして「平成27年度サービス産業海外展開基盤整備事業費補助金」については(海外情報発信事業)など他の種別については現在も経産省のサイト内に掲載データが残っている一方で、種別(おもてなし規格認証に係る認定機関及び認証機関立ち上げ・運営支援)については、創業手帳のサイトなどに公募情報のログがあるにもかかわらず経産省のサイトからは削除されています。

何か後ろ暗いことでもあるのかしらん・・・と下衆の勘繰りをしつつ、再びウェイバックマシーンの出番です。時間を2016年5月まで巻き戻し、経産省のサイトを見てみると・・・・ありました(画像7)。

スクリーンショット 2020-05-02 16.43.47

平成28年5月16日付公募情報「平成27年度補正予算「サービス産業海外展開基盤整備事業(おもてなし規格認証に係る認定機関及び認証機関の立ち上げ・運用支援等)」の公募について」です。

これによると、その公募期間は「平成28年5月16日(月曜日)~平成28年6月14日(火曜日)」とされており、「募集要領で定める条件を満たす者」から選考されるということでした(画像8)。取り立てて言うことのない、一般的な公募の様式と言えそうです。

スクリーンショット 2020-05-02 16.46.59

しかし、その公募期間の始期を見て、一瞬、情報をクロールする手が止まりました。「平成28年5月16日」ですって!? 元号を西暦に置きなおすと、つまりは「2016年5月16日」。それは他ならぬ、サービスデザイン推進協議会の設立年月日です(画像9)。

スクリーンショット 2020-05-02 16.58.02

※2020年5月1日現在のおもてなし規格認証(service-design)公式HP内「運営者情報」のページより引用。

その日に生まれたばかりの法人が、国家官庁の公募に応募し、見事一発合格。しかも、その公募の開始日は設立年月日と同一。公募終了の翌日には補助金の交付も受けないうちに、早々とドメインを取得しています。

中央省庁の入札に参加したことがある方ならお分かりでしょうが、応札や応募には、ばく大な書類と計画の立案が必要です。三菱総合研究所や野村総合研究所といった第一線級のシンクタンクなら別段として、生まれてゼロ日の法人が、1ヶ月も無い公募期間のうちにすべての書類を備え、しかも公募を勝ち抜くことなど、到底考えられないことです。

しかし、その考えられないことが現実に起きました。もしかしたら応募者全員合格的なユルユルの公募だったのでしょうか?・・・さにあらず。補助金の交付先については、情報公開を行うことが求められていますが、経産省の場合、予算執行に関する情報開示のページで情報公開を行っています(画像10)。

スクリーンショット 2020-05-02 17.18.04

この内、(おもてなし規格認証に係る認定機関及び認証機関立ち上げ・運営支援)の予算が執行されるのは、公募期間終了後の平成28年7月ですから、開示されている「平成28年度4月〜9月」のエクセルファイルを見てみると以下の通り(画像11)です。

スクリーンショット 2020-05-02 17.25.21

(おもてなし規格認証に係る認定機関及び認証機関立ち上げ・運営支援)事業には「サービスデザイン推進協議会」ただ一者のみが選定され、4,680万円に及ぶ補助金が交付されています。図の上に、福島第一原発事故で警戒区域に指定され、避難を余儀なくされた「福島県広野町」や「福島県楢葉町」への交付金が載っていますが、広野町が1,314万円、楢葉町が2,628万円であることに比べると交付金額は雲泥の差です。

額のことは兎も角、公募初日に設立された団体が、みごと補助金を獲得するという奇妙な現象が生じていることは明らかになりました。一体全体、そんな偶然があるものでしょうか?

これについて参考となるのが、おもてなし規格認証がはじまる以前、その助走として経済産業省部内で開かれていた「おもてなし規格認証(仮称)に関する検討会」(平成27年11月〜平成28年3月)です。その議事要旨や配布資料は、経済産業省の審議会・研究会のページ「ものづくり/情報/流通・サービス」にて見ることが出来ます(画像12)。

スクリーンショット 2020-05-02 17.37.01

最終回となった第4回の配布資料を見てみましょう。資料4 事務局説明資料では、この規格が民間規格として運用されるべきこと(p.7)、その規格の管理者兼認定機関は複数の機関ではなく1機関が担うべきこと(p.8)、今後認証の手引きを準備すること(p.9)に続いて、p.10には「認定機関に求められる要件」を設定することが書かれています(画像13)。

スクリーンショット 2020-05-02 17.53.14

「認定機関に求められる要件」とは、この2ヶ月後、平成28年5月に公募され、サービスデザイン推進協議会が選定されることになる(おもてなし規格認証に係る認定機関及び認証機関立ち上げ・運営支援)の審査基準のことですが、さて、この審査基準や検討会の資料を準備していくのは一体誰でしょうか?

霞が関における人手不足は深刻で、何らかの政策を立ち上げ、いざ実行しようとしても官僚だけでは(国会対応その他に追われて)賄い切れないのが現状です。恨むべきは行財政改革であったり、それを支持した国民なのかもしれませんが、それはともかく、慢性的な人手不足を補うために、各省庁はシンクタンクその他の機関へ委託を出し、政策立案に当たっての調査や資料作りを手伝ってもらうことが常態化しています。

その現状は長年ブラックボックスの中でしたが、谷垣禎一財相時代に発出された財務省通達「公共調達の適正化について(平成18年8月25日付財計第2017号)」により、調達過程の透明化や公表が図られるようになりました。経済産業省の場合は「入札結果・契約結果」のページから、誰が、どんな金額で請け負っているのかを見ることが出来ます。

例えば「落札情報」のページを開いていただき、「物品役務等」の様目や「契約の相手方」の項目をご覧ください。この現状をご存じない方におかれては、想像以上に多くの調査や事業が国からアウトソーシングされており、名だたる企業がそれにぶら下がっている状況に驚かれることでしょう。

そして見知った企業の名前が、よりにもよって「おもてなし規格」に直結する事業の委託先として登場することに気づいた時、「あっ!」と声を上げてしまうかも知れません(画像14)。

スクリーンショット 2020-05-02 19.01.45

「平成27年度補正サービス産業海外展開基盤整備事業(おもてなし規格認証(仮称)に係る普及促進及び当該規格認証に関する実態調査等)」。契約日は「2016年3月24日」。受託者は「株式会社電通」。認定機関の公募開始よりも50日以上前のことです。

この時点で電通は、おもてなし規格認証(仮称)について知り得る立場にありました。

おもてなし規格認証の淵源は、日本生産性本部の60周年記念パーティにおける安倍首相の発言「サービスの質を「見える化」する仕組みも広げていきます。」(首相官邸の首相動向ページ)に求めることが出来ますが、日本生産性本部が他ならぬ経産省の所管団体であったことに鑑みると、当然ながら経産省の政策が考慮されていると解釈するのが自然です。

経産省と電通の委託契約から約100日後。そんな"国策"の推進機関として、電通出身者が理事の大分を占める一般社団法人が選定されました(画像15)。

スクリーンショット 2020-05-02 19.18.44

これは限りなく「出来レース」に近いと言う他無い事態であり、公募という形態を取る趣旨や、補助金の公正な使用を求めた補助金適正化法第3条第1項に反するとも捉えられかねない事態ですが、仮に「出来レース」であった場合、それを主導したのは誰か。

電通をはじめとした各社か、それとも経産省主導による「官製談合」まがいの行為なのか。首謀者は誰であるのか、気になるところです。

そこに登場するのが、一般社団法人サービスデザイン推進協議会の定款でした。

③定款は語る

定款とは、法人の設立時に必ず必要となる、その法人の基本プログラムの様なものです。株式会社の場合は会社法第26条以下、合名会社、合同会社、合資会社の場合は会社法第575条以下、一般社団法人の場合は社団財団法の第10条以下、一般財団法人の場合は社団財団法の第152条以下に定めがあります。

一般社団法人サービスデザイン推進協議会の場合、親切なことにおもてなし規格認証の運営者情報のページで定款を公開してくれておりました(画像16)。

スクリーンショット 2020-05-02 19.48.51

そのリンクには「定款(平成28年12月13日制定)」と書いてあります。しかし設立は「平成28年5月16日」だったはず。これは如何に?と思われるかも知れませんが、その疑問を解く鍵は国税庁にあります(画像17)。

スクリーンショット 2020-05-02 19.53.25

上記は国税庁法人番号公表サイトにおける一般財団法人サービスデザイン推進協議会の公表ページです。これによると、平成28年12月22日に「本店又は主たる事務所の所在地の変更」を行っており、東新橋(港区)から築地(中央区)へと移転しています。確かに設立当初の記載(画像6)と上記画像17を見比べていただくと、その通りに移転しているのです。

定款には主たる事務所の所在地の記録が必要(社団財団法第11条3号)ですので、リンクにある「平成28年12月」の制定日とは、事務所の移転に先立って定款を改めたもの、と言うことができそうです。

実際、定款を開いてみると第3条に「当法人は、主たる事務所を東京都中央区に置く。」との記載があるのでした。

本題はここからです。

もし、この記事をご覧の方が、スマートフォンではなくPCで閲覧中の場合、ブラウザによっては、ダウンロードによらず、ブラウザ上で定款のPDFを見ることが可能なはずです。もし貴方がWindows10のPCをお使いで、ブラウザがChromeである場合には、こう見えることでしょう(画像18)。

画像18

そう、「補助金執行一般社団法人(仮称) 定款(案)」というタイトルが・・・・。

※(2020年5月6日追記)上記PDFが差し替えられ、タイトルも作成者名も全てのデータが削除されました。でも、もう遅いんだよなぁ・・。ウェイバックマシーン上に保存されている2018年当時の運営者情報ページへのリンクを張りおきます。定款のPDFデータも生きているため、データ改ざん前の情報をご覧いただけるはずです。

④補助金執行一般社団法人のインパクト

補助金執行一般社団法人(仮称)定款(案)。当たり前の話ですが、一般社団法人とは単なる民間団体に過ぎず、公共分野が国民の税金を元に支出する補助金(それは紛れもなく血税の塊です)を執行する権限など持ち得てはいません。それにもかかわらず。

にもかかわらず、です。「定款(案)」を作る段階、つまり法人の設立準備段階において、自らを補助金執行団体と言い放つ傲慢さに半ば呆れつつも、慄然とする思いでした。

「小泉改革」以来、その政策を主導した竹中平蔵を会長に迎えたパソナグループや電通が「政商」と揶揄されるようになって久しいですが、しかし、これほどまでに傍若無人な定款を作るようになるとは・・・・。呆れたり、怒ったりしつつも、基本的には「欲望に正直すぎるが、でも、それは営利企業の性(さが)だしな・・・」と失笑混じりにそのタイトルを見ておりました。

しかし、その笑いは直に凍りつくことになります(画像19)。

スクリーンショット 2020-05-01 21.15.45

もしPCのブラウザから定款をご覧の場合には、右端か左端のタブを押して「文書の情報」か「プロパティ」を。ブラウザでPDFを開けない場合には、一旦、定款のpdfをダウンロードしてファイルを右クリックし「詳細情報」か「プロパティ」を見てみて下さい。スマホからは見れないかも知れませんが、PCやMacからであれば、上記の様な情報が表示されているはずです。

※(2020年5月6日追記)定款のPDFデータが差し替えられたため、現在はタイトル・作成者名などの情報を確認することが出来ません。しかしウェイバックマシーン上に当時の定款PDFデータが残っておりました。これをブラウザ上、またはダウンロード後に確認いただくことで、上記と同じ情報が確認いただけます。

タイトルは従前通り「補助金執行一般社団法人(仮称)定款(案)」。そして作成者には「情報システム厚生課」という記載があります。わたしが衝撃を受けたのは、定款の作成者の名前でした。これこそが首謀者と目される存在です。

「情報システム厚生課」でググっていただければ一目瞭然ですが、情報システム厚生課とは、経済産業省大臣官房に属する純然たる内局組織です(画像20)。その内局、官庁の中の官庁が、なにをどうしたことか民間団体の定款を作成している。しかも自らが所管を有する所の「補助金」について、本来は公募による厳正な審査が行われなければならないにも関わらず、その審査も公平性も何もかもをすっ飛ばして、好き勝手に「補助金執行団体」と位置づけている。

スクリーンショット 2020-05-01 21.22.52

行政の公平性だとか透明性(行政手続法第1条第1項)、公僕(パブリック・サーヴァント)といった謳い文句が何の意味も持たず、むしろ行政自体がそれを蹂躙する現実に、言葉にならない程のショックを受けたのでした。

これが意味する事実はただ一つ。つまり、サービスデザイン推進協議会の設立とは、電通をはじめとした企業群による思惑である以上に、経済産業省による思惑が強いということです。官製談合、談合という言葉が不適切であれば、官製の隠れた「外郭団体」の創設にほかならないということでした。まさか21世紀に入って20年も経ってから、こんな古典的な「悪」に相まみえるとは思わず、驚きのあまり目を白黒させてしまいました。

しかも「巨悪」にはなれない「小悪党」らしい杜撰さと言うべきか、おそらくマイクロソフト・オフィスの仕様を知らなかったのでしょう。WordなどのOfficeソフトから書き出したPDFには、PDFのファイル名を変えたとしても、元ファイル(Wordであればdocまたはdocxファイル)のタイトル名や作成者が保存されることを知らず、委託先にファイルを渡してしまったのです。

そして委託先もまた、それに気づかず、PDFのファイル名(SDEC_AOI_20161213)、つまり2016年12月13日分のSDEC(Service Design Engineering Council/サービスデザイン推進協議会)のAOI(Articles of Incorporation/基本定款)をつけただけで、タイトルと作成者情報をそのままにして、ワードからPDFを書き出してしまいました。

なお、画像19に作成日・更新日として記録されている「2018/1/25, 16:34:56」はPDFの書き出し日であると考えられます。

そのおかげで、と言うべきか、公表された定款を見れば一目瞭然。真の作成者が経産省の内局であることも、元のタイトル名が「補助金執行一般社団法人」の定款案であることも分かってしまいます。なんというか、IT導入補助金の執行団体とは思えぬデジタルリテラシーの無さです。

愚かといえば愚かなのですが、その愚かさ故に事態の全容が把握できました。これは煽り抜きで言うのですが、経産省の担当者およびサービスデザイン推進協議会の担当者には御礼申し上げたい気持ちすらあります。

⑤持続化給付金にかかる事務費

経済産業省は4月8日に「令和2年度補正持続化給付金事務事業」の一般競争入札を公示し、これに複数社が応札。そしてご承知おきの通り、サービスデザイン推進協議会が落札者となりました(画像21)。

スクリーンショット 2020-05-03 9.18.32

入札情報の閲覧や結果、落札額の確認は、政府電子調達(GEPS)システムの調達ポータルから可能ですが、こちらは認証とセットアップが必要なため、誰もがアクセス可能なNJSS(入札情報速報サービス)の画面を引用いたします。引用元へのリンクはこちらです。

後に経産省の「入札結果・契約結果」のページで公開されるはずですが、現時点では令和2年2月分までしか公表されていないため、その内容を予め述べてしまうと、経産省が今回の持続化給付金事業に関する事務費として計上した額は約700億円。パソナの昨年度売上高(1,513億円、2019年度)の半分に迫る額です。

もちろん競争入札ですので、入札額はこれより低いのですが、それでも約695億円。ほとんど遜色ない価格がサービスデザイン推進協議会へと流れています。なお、実際の支給時には、これに消費税等が加算されます。

※(2020年5月6日追記)中小企業庁のサイトで入札結果が公表されました。契約金額は769億208万4807円。落札価格(契約金額)では入札価格に消費税等が加算されますので、まさしく上記のとおりです。

公表前ではありますが、これらの落札情報は元より財務省通達のもとで省庁側に公表義務があるものですし、既に川内博史衆議院議員(鹿児島1区)がTwitter上で明らかにされているため(画像22)、公知かつ既知の情報と考えてよろしいでしょう。

スクリーンショット 2020-05-03 10.09.59

そして、その事業費は非課税です。これは事業会社ならぬ、社団法人ならではの節税テクニックと申せます。定款をご覧ください(画像23)。

スクリーンショット 2020-05-03 10.13.50

公表された定款によれば、サービスデザイン推進協議会は剰余金を分配せず(第43条)、残余財産は国または公益法人に帰属させる(第44条)ため、法人税法第2条第9号の2のイの「非営利型法人」、国税庁のお知らせp.2でいうところの「非営利性が徹底された法人」として税制優遇(非収益事業への非課税)を受けることが出来ます(画像24)。

スクリーンショット 2020-05-03 10.22.02

剰余金、つまり利益が分配されないのであれば、社団法人の社員(出資企業)も利益を受けられないのではないかと思われそうですが、さにあらず。確かに、事業会社の株主のように直接利益が受けられることはありません。しかし、間接的に利益を与える形での委託は可能です。

事業の実施において再委託が禁止されていないのであれば、人材の調達やコールセンターの設置は例えばパソナに、ITシステムの設計運用は例えばトランス・コスモスに、広報やUI、運用のマネジメントは例えば電通その他の営利企業に再委託することが出来、再委託を受けた側は、その利益に預かることが可能なのです。

つまり、国→民間団体(補助金執行一般社団法人)→民間企業、というお金の流れが完成されます。しかも非課税なので民間団体を受け皿として、お金をプールできる。国が直接の規律を及ぼせるのは民間団体までですので、国にやる気があったとしても再委託を行う先まで監視し切ることは困難です。だから上記の再委託先が公開されることはなく、あくまで「例えば」なのですが、とはいえ、電通社員が理事を務める団体が博報堂に広告を依頼するかというと、実際どうなのだろう、という思いがあります。

どの程度に配分がなされるのか。あとは関係各位の良心に期待する他ありません。

⑥現代に蘇る「外郭団体」

プライバシーマーク(Pマーク)などが代表例ですが、経産省の手法には一種独特の癖があります。それは「①一旦、民間規格を立ち上げ、②その規格の取得を国や地方公共団体における補助金交付や入札参加の条件等に設定し、③規格を半ば強制的に取得させることで、④当該規格の参加者(とりわけ管理者兼認定機関)に経済的なインセンティブを与えつつ、⑤政策目的をも達成する」という手法です。

当然ながらこの「民間規格」とは純然たる民間規格ではなく、省庁の意向が大いに反映された規格です。それは、おもてなし規格の策定運用が経産省と受託者の間で行われたことからも明らかでしょう。そして、その「民間規格」の管理者兼認定機関もまた、純然たる民間団体というには無理がある程度に、省庁の影響が入っていました。例えば、Pマークの元締めである一般財団法人 日本情報経済社会推進協会(JIPDEC)の代表理事は杉山秀二氏元経済産業省事務次官です。ワァ、スゴイグウゼンダナァ・・・。

もちろん、いわゆる「天下り先」の確保ということが唯一の目的とは言えません。「民間規格」という名目のもとで他省庁(Pマークであれば総務省、おもてなし規格であれば国交省・観光庁)の所管に堂々と進出できるため、経産省が得意とする領海侵犯的な行為の橋頭堡にできるという省益的な利点がありました。

こうした「外郭団体」方式はてっきり減少傾向にあると思っていたのですが、民間企業のコンソーシアム(一般社団法人)という形で、新たな「外郭団体」と目される「補助金執行一般財団法人」を作り出す方法があるとは。その知恵の冴え渡りぶり自体には驚かされました。悪知恵かも知れませんが・・・。

ともかくも同じ官製(らしき)団体とはいっても、今回の「補助金執行一般財団法人」には、これまでの「外郭団体」とは異なる性質があることにも留意の必要があります。かつての「外郭団体」が曲がりなりにも官公庁OBによって構成されていた(いる)こととは異なり、今回の「補助金執行一般財団法人」は特定企業のコンソーシアム(共同事業体)として誕生しました。

つまり、特定企業との癒着や利益誘導に当たらないか、これまで以上に注意が必要なのです。

⑦想定される問題点

政府のマンパワーが深刻な不足をきたしている以上、その業務の一部を外部へ委託することそのものは致し方ありません。問題は、その設定方法と資金の流れにあると言えます。

省庁が決め打ち的な形で「補助金執行一般財団法人」を作り出し(あるいは作り出すように仕向け)、名ばかり(としか思えない様子)の公募を行って、そこへ(特定企業群に)お金を流し込むのは果たして適切でしょうか。公平と平等を旨とする全体の奉仕者(憲法第15条第1項)であるはずの公務員が取るべき手法と言えるでしょうか。

しかも、今回流し込まれた金額は税抜で約700億円という巨額に上っています。持続化給付金の対象とされる中小企業は約300万社。個人事業主を含めればもっと増えますが、仮にその三分の一が「収入半減」要件を満たし、その要件を満たした全ての会社から申請があるとして、一社あたり7万円のマージンが得られることになります。

膨大な事務作業が待ち構えていることから、当然ながら人件費を要し、マージンがかかることは仕方ないにしても、それが実際に審査に当たる方々や相談を受け付けるコールセンターの方々の給与にどこまで反映されるのか。ブラックボックスであることを良い事に中間搾取はされないのか。福島第一原子力発電所の廃炉作業で起きた事例(労働問題)が思い起こされます。

福島第一原発の事故においては、除染が環境省の所管となった一方で、イチエフの廃炉等の対策事業は経産省の所管となりました。それは当初、事故を起こした東京電力への管理監督という形で作用していましたが、徐々に直接関与に切り替わっていきました。2012年7月の東電の実質的国有化以降は、「原子力損害賠償・廃炉等支援機構」による資金供給にシフトし、その融資額は国有化当時の1兆円を遥かに超える9兆円超の額が当てられています。その調達には国債のほか、国民の税金等を元手とした政府の債務保証付債権が当てられているのが現状です。

つまり廃炉作業に当たっては、国→機構→東電→委託事業者という形でお金が流れている訳ですが、所管庁(経産省)の監督不足か、東電の見過ごしか、日当10万円(危険手当込み)のはずが実支給(手取り)はわずかに8千円となるような、凄まじい中抜きが行われたことが報告されています(日弁連「原発労働問題シンポジウム」)。それと同様の事態が、今回生じたとしてもおかしくはないのです。

一案件あたり7万円の費用そのものは仕方がないかもしれません(高すぎる気もしますが・・・)。しかし、その費用の是非の検証と同じくらい、その費用の配分にも気を使う必要があります。その原資が国費であれば、なおさらです。

もしこの事務費が中抜きされた上、特定企業群の帳簿へと垂れ流しされてしまったり、まったく必要性の無さそうな広告費に費消されてしまったとしたら。それは悲劇であると同時に惨劇であるのです。

厚生労働省が丹精込めて作り上げた同一労働・同一賃金制度が今年4月から稼働し始めた以上、サービスデザイン推進協議会から仕事を受ける派遣会社や委託事業者各位におかれても、どうかそれを守ってほしいところですが・・・。

⑧まとめ

まとめに入りましょう。

官庁が自ら定款案までつくり、出来レースを疑われかねない状況で補助金を与えた一般財団法人が、いまや国民生活の最後の砦である「持続化給付金」の執行団体になっている。

彼らは民間団体でありつつも官製団体に近い性質を持ち、かつての「外郭団体」にも似ているが、かつての「外郭団体」とは異なり、特定企業の共同事業体と思料される形で誕生している。そのため、これまでの「外郭団体」以上に、特定企業との癒着や利益誘導について注視しなければならない。

彼ら、一般財団法人サービスデザイン推進協議会は「持続化給付金」の交付事業に関し、2兆3,176億円の執行権を実質的に有するに至り、税抜で700億円に迫る委託料を得ました。消費税等を加算した実際の支給額(契約価格)は769億円を越えています。まさに「補助金執行一般財団法人」の面目躍如です。

「持続化給付金」が事業者に対するライフラインとして機能しはじめた以上、機関車を止める訳にも行かないのですが、関わった人間への事実確認など、後の検証は必要となりましょう。その参考資料としてこの記事を書き置きます。

追記: 持続化給付金 公式ページのドメインについて

(2020年5月6日追記:)持続化給付金の公式ホームページのURLはhttps://www.jizokuka-kyufu.jp/ですが、例によってJPRSのWhoisで照会をかけてみました。検索タイプを「ドメイン名情報」、検索キーワードを「jizokuka-kyufu.jp」でご検索下さい。

AWS(アマゾンウェブサービス)を使っていることはともかく、ネームサーバーが「.com(商業用)」や「.co.uk(イギリス)」になっていることにもドン引きする(※ただし、AWSのRoute53を使用している場合、自動的にそうなってしまう)のですが、ご注目いただきたいのは、その「登録年月日」です。

持続化給付金サイトのドメイン登録日は「2020年4月6日」。持続化給付金事務事業の公示日よりも前の話です。てっきり経済産業省か中小企業庁が事業の開設を見越して(予め)取得していたのかと思って、その登録者名を見ると、ドメイン登録者は「 一般社団法人サービスデザイン推進協議会」と表示されています。

これが何を意味するかは、もう、言う必要はないでしょう。

この記事で論じてきた事柄は、過去完了形のお話ではなく、現在進行形のお話なのです・・・。

<第二弾の記事>【続報】資金の流れから一般社団法人サービスデザイン推進協議会の実態を考える。/「持続化給付金」事務局の謎めいた正体を考える(その2)

<第三弾の記事>一般社団法人サービスデザイン推進協議会の裏側に潜むもの/「持続化給付金」事務局の謎めいた正体を考える(その3)

<第四弾の記事>遍在する「補助金執行一般社団法人」/サービスデザイン推進協議会と環境共創イニシアチブの正体を考える

この記事が気に入ったら、サポートをしてみませんか?
気軽にクリエイターの支援と、記事のオススメができます!
4,868
都心の片隅で密やかに作られる文章をお届けするアカウントです。