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女優は、なぜ懐かしいのか

どんな女優が人気を集めるのか、という条件は、時代によって変化する。しかし、変わらないのは、はじめて会うのにどこかで会ったことがあるような懐かしさを秘めている女優が、いつの時代にもドラマや映画、CMで輝きを見せてきたことだ。

数年前に、平成生まれなのに懐かしい雰囲気を持った女優たちが「昭和顔」と呼ばれて注目を集めたことがある。それは、単なる一時的な現象ではなく、「新しさ」と「懐かしさ」が共存している女優が人気を集める傾向は今も変わりない。いつの日か、「平成顔」の女優が注目を集めるようになるかもしれない。

現在活躍している20代の女優では、伊藤沙莉、上白石萌音、小松菜奈、白石聖、杉咲花、奈緒、古川琴音、山田杏奈らが強い懐かしさの魅力を持っている。30代の女優では、門脇麦、岸井ゆきの、黒木華、多部未華子、深川麻衣らが挙げられる。

いや、それだけではない。新垣結衣、有村架純、綾瀬はるか、飯豊まりえ、今田美桜、岡崎紗絵、川口春奈、清原果耶、黒島結菜、小芝風花、広瀬すず、中田青渚、鳴海唯、生見愛瑠、橋本環奈、波瑠、福原遥、堀田真由、吉岡里帆、吉高由里子といった女優たちも、同じように「懐かしさ」成分を秘めている(ここに挙げた女優の中にはタイムトラベルを描いた映画やドラマに起用された人が多い)。

映画は、テレビドラマは、そしてCMも、「懐かしさの物語」を数多く描いてきた。たとえば、タイムスリップする物語。いくつかの時代を描く大河的な物語。初恋や幼馴染をテーマにした物語。地方で生まれ育った女性が、上京して新しい世界に飛ぼこむ物語。そういう設定の物語が多いからこそ、懐かしさを秘めた女優が求められてきた。

既視感と、幼馴染のような優しくて切ない親しみやすさは、映画やドラマの主演で活躍する女優に求められる時代を越えた本質であり、それは同時に、若い世代から実際に体験している世代まで幅広い世代に広がっているレトロブームの本質にもつながるものだと思う。

しかし、懐かしい感じがする女優が多くの人たちに愛されているのには、もっと別の理由もあるのではないだろうかと、ふと、そんな気がしてきた。

懐かしさの先にある、心を落ち着けてくれるもの、どこか違う時代に飛ばしてくれる現実逃避の効果を必要としている、そういう時代がずっと続いているのだとしたら、それは、はたして幸福な時代と呼べるのだろうか?

ある日の午後、街角の懐かしい風景をながめながら、そんなことを考えていた。

■付録
☆女優たちの懐かしい存在感が光っていた日本のタイムトラベル/タイムリープ映画15選
1 星空のむこうの国 有森也実
2 ジュブナイル 鈴木杏
3 時をかける少女 原田知世
4 サクラダリセット 黒島結菜
5 時をかける少女 仲里依紗
6 いま、会いにゆきます 竹内結子
7 きみにしか聞こえない 成海璃子
8 ぼくは明日、昨日の君とデートする 小松菜奈
9 神回 坂ノ上茜
10 コーヒーが冷めないうちに 有村架純
11 東京少女 夏帆
12 サマーフィルムにのって 伊藤万理華
13 あの花が咲く丘で、君とまた出会えたら。 福原遥
14 サマータイムマシン・ブルース 上野樹里
15 夏への扉ーキミのいる未来へ- 清原果耶
※アニメーション映画を除く

写真=昭島市・旧市民図書館つつじが丘公園分室(著者撮影)




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