見出し画像

『男はつらいよ36 柴又より愛をこめて』と『ルパン三世』1-11「7番目の橋が落ちるとき」/世文見聞録37

今週も川口世文と木暮林太郎が、彼らの大好物の「ビッグストーリー」である『男はつらいよ』シリーズと『ルパン三世シリーズ』について語ります。

○第36作『男はつらいよ 柴又より愛をこめて』(前半部)

木暮林太郎:今回の夢のシーン。日本人初の宇宙飛行士としてロケットに乗っているショットはかなりリアルに撮影されていた。今回ばかりは、このまま本編が『寅次郎宇宙へ行く』でもよかったぐらいだ(笑)。

川口世文:今回も“帰ってこない”パターンだったな。その間あけみの家出があって、社長がTBSの「テレビ伝言板」に出演する。

木暮:みんなが寅さんの帰りを“切実に待っている”というのは大きな変化かもしれない。

川口:あけみの夫も「これじゃ家出しても仕方がない」感じで描かれているし、寅に会いたがっている彼女の気持ちがわかると“満男”にいわせているのも意味深だ。当時はそんなこと考えなかっただろうけど、のちに満男の存在が大きくなるときの“予行演習”を、あけみがやっていたのかもしれないな。

木暮:下田の“長八”の存在もよかったね。寅さんの裏ネットワークの凄さを感じさせた。

川口:演じた笹野高史はこれが初登場。これもまた“援護策”の一環だったのかもしれない。うっかりあけみが式根島に渡ろうといったのが運の尽き。島につくとガラッと展開が変わる。ここまでで大体30分。ここで早くもマドンナの“先生”と出会って、中盤の展開になる。

木暮:寅さんにおいてけぼりにされたあけみも意外な展開になるけど、途中露天風呂での“入浴シーン”は必要だったのか?

川口:ほんの一瞬だけど、山田洋次作品としてはかなり大胆な“サービスカット”だったな。

木暮:そういういい方自体、時代遅れだけどな。

川口:寅が「シカト」って言葉を使ったのも驚いた。一方で『二十四の瞳』のモチーフを使ったりして、時代と物語を適合させるのに苦心していたように感じられる。

○『ルパン三世パート1』第11話

「7」は算用数字

木暮林太郎:『ルパン三世』という作品が“一皮むけた”エピソードだったと思うな。

川口世文:そんな気がするね。前半はどちらかというと“優れた探偵”としてのルパンが描かれる。橋に仕掛けられた爆弾をわざと残して、それを犯人たちが回収しにきたところを追いかける。

木暮:敵のほうが上手であっさり捕まるけどな。

川口:無関係の娘を“人質”にするというのがうまい。“義賊”であるルパンが描ける。

木暮:リーサは一瞬、変装した不二子じゃないかと思わせるんだけど、今回は不二子じゃダメだったんだよな。

川口:あんなに無垢な感じじゃなくてもよかった気がするけど、“裏”を感じさせる女性じゃダメだったんだ。

木暮:橋を七つ落とす理由──現金輸送車を“ゴースト街”に誘い込みたい作戦が実にわかりやすくジオラマを使って説明される。でも、あの町は日本なのか?

川口:ニュースの背景にあるのが明らかにイギリスの地図だから、ひょっとすると先週のコワルスキー王国からの帰りに立ち寄った可能性もある。

木暮:さて、いよいよ作戦実行。「イキにやろうぜ、イキによ」といってルパン流を貫くシーンはここだったか?

川口:「書き割り」を使うトリックはアニメ的なウソでもあるけど、とにかく“イキ”だった。

木暮:さらにそこで話が終わらない。ボートに引きずられる“桟橋”からワルサーで狙う名シーンが出てくる。

川口:敵が本当にワルだからルパンも遠慮なく“正義の鉄槌”を下す。これまでの殺しとは一線を画している。

木暮:“探偵”であり“義賊”であり“イキ”であり“殺し”もやる。ここに“ルパン三世”誕生す!

川口:この後もそれぞれの側面を描いた話はあるけど、それを全部描いた話はそうそうないんじゃないか?

アナウンサーは日本人っぽいが、後ろの地図はイギリスとフランス?


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?