『男はつらいよ33 夜霧にむせぶ寅次郎』と『ルパン三世』1-8「全員集合トランプ作戦」/世文見聞録34
今週も川口世文と木暮林太郎が、彼らの大好物の「ビッグストーリー」である『男はつらいよ』シリーズと『ルパン三世シリーズ』について語ります。
○第33作『男はつらいよ 夜霧にむせぶ寅次郎』(前半部)
木暮林太郎:夢のシーンに渡瀬恒彦が出てきた時点で、かなり異色作といってよさそうだな?
川口世文:松竹と東映の面子《メンツ》で日活の無国籍アクションをやっているのがおかしい。さくらが登場しないのがちょっと寂しかったけど。
木暮:今回もなかなか“帰ってこない”パターン。柴又じゃ、タコ社長の娘の“あけみ”の結納・結婚で大騒ぎ。
川口:中学生になった満男がブラスバンドに入ったことと合わせて、一種の“強化策”といっていいんじゃないかな? 一方でかつての舎弟の“登”が出てきて、今度こそ最後のお別れ。前作と似たようなことをしている。
木暮:そういう意味では“ヤクザな兄貴”の側面を最後にもう一度だけ描いておこうと思った可能性はあるな。
川口:確かに、そう考えると今回のマドンナ“フーテンの風子《ふうこ》”は適役だったかもしれない。
木暮:以前、岸本加世子が演じた“愛子”のその後みたいなキャラクターでもあるし。
川口:穿《うが》った見方をすれば、ここでもう一度“リリー”を再登場させたかったのかもな。だけど、そうすると今度こそ決着をつけなきゃいけなくなる。だから、二の足を踏んだ──そんな気もする。
木暮:代わりに“登”との関係を決着させた? それは穿ちすぎだと思うけど(笑)、“リリー”を巡る三角関係はちょっと観てみたかった。
川口:話の前半はリリーの2作目『寅次郎相合い傘』によく似ているんだ。北海道を舞台にサラリーマンの男を一人加えた三人旅──。
木暮:船越英二から佐藤B作にバトンタッチか? 時代が変わったなぁ。
川口:でも、佐藤B作が演じた“福田栄作的な神経質キャラは次回作では結構重要なモチーフになるんだよ。
○『ルパン三世パート1』第8話
木暮林太郎:8話目にしてようやく“全員集合”か!
川口世文:ルパンが犯行を予告して、その時刻が迫る黄金パターンだけど、実際今回は全部ルパン一人で盗んじゃうから、どちらかというと“怪人二十面相”っぽい。
木暮:チームワークが発揮されるのは盗んでからだな。ミスター・ゴールドの誕生パーティに四人が隠れていると思って見ていたら、ずいぶん怪しい顔が並んでいた。
川口:ルパンが化けたブルーのドレスの女性は、最初に女性三人で話していたうちの一人ってことだよな?
木暮:そうじゃないかと思うけど、断言しにくいなぁ。最初はあれは不二子だと勘違いしていたくらいだから。
川口:まあ、そこまで視聴者を真剣に騙そうとしていたわけじゃないんだろう。
木暮:後半の逃走劇では、五エ門が斬鉄剣でトレーラーを斬ったりするんだけど、次元はなぜか銃を抜かない。
川口:まだ五エ門も「またつまらぬものを」なんてことはいわない(笑)。
木暮:その代わり背中にルパンが脱走方法を書いたメモを貼りつけて、不二子と次元のところにやってくる。
川口:ラストの脱出方法は原作にもあるけど、最初に観たときはビックリした。子供にもわかる“華麗さ”というのかな? 自分もいつかやってみたくなるような……。
木暮:そういう意味ではモンキー・パンチと高畑・宮崎コンビの相性がうまく合った話だったのかもしれない。
川口:あと面白かったのはトランプに仕込まれた発信器だな。あんな薄くて小さなもの、当時は荒唐無稽だったかもしれないけど、今じゃ薄めのICタグだ。
木暮:前回、ルパンが五エ門に仕掛けた“てんとう虫”型の超小型ドローンも時間の問題だろうな。
川口:ナポレオンのトランプのジョーカーもいい“キャラ”だったな。もう一回ぐらい出てきてほしかったよ。
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