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『男はつらいよ34 寅次郎真実一路』と『ルパン三世』1-9「殺し屋はブルースを歌う」/世文見聞録35

今週も川口世文と木暮林太郎が、彼らの大好物の「ビッグストーリー」である『男はつらいよ』シリーズと『ルパン三世シリーズ』について語ります。

○第34作『男はつらいよ 寅次郎真実一路』(前半部)

木暮林太郎:今回の夢のシーン、『宇宙大怪獣ギララ』とは驚いたな。以前に『ジョーズ』の例があったけど、寅さんはかつて『ギララ』も観ていたってことか?

川口:昼寝するために映画館に入ったのかもしれない。

木暮:それにしても前作につづいて、今回もかなりの変化球だった気がする。大原麗子の役柄も“前回とよく似た別人”という不思議な雰囲気だし、米倉斉加年のサラリーマンも前作の佐藤B作を描き直したものだろ?

川口:どちらも牛久沼にマイホームを買っていてね。ご近所さんだったのかもなぁ。明らかに前作のモチーフをもっと膨らませようとした感じだな。

木暮:しかもこれ、まだバブルがはじまる前だったんだぜ。その後“スタンダード証券”がどうなったのか気掛かりでしょうがないよ。無事に生き残ったんだろうか?

川口:寅さんの差し入れたバナナを会議中のメンバーで食べているシーンがよかった。

木暮:同じ女優に別の役柄のマドンナを演じさせた理由は何かあったのかな?

川口:どうなんだろう? おまえがいうように大原麗子の演じた役は第22作『噂の寅次郎』の延長戦上にある感じだから適任だと考えたのかもな。役柄は違うけど、描きたいモチーフはつづいているというような……。

木暮:過去作をビデオで観直す時代でもないから、それもありだったのか。

川口:東京通勤圏にある牛久沼をどう考えるかにもよるけど、今回は寅さんがなかなか柴又から“出られない”。

木暮:柴又に“帰ってこない”パターンがつづいていたから新鮮だった。そのせいか“ケンカ”も多いし(笑)。

川口:寅さんやとらやの外側に広がる当時の日本社会がどんどん殺伐としていく印象も強かったな。

木暮:価値観の大きな変化が描かれている感じがする。

○『ルパン三世パート1』第9話

ルパンはゴーゴーを踊る

木暮林太郎:殺し屋プーンという男も、もうちょっとましな名前だったら、あのパイカルと並び称されたかもしれないな(笑)。

川口世文:とはいえパイカルに比べると“終わった人”感が強いぞ。ルックスからして当時でも古臭そうだ。高倉健とか渡哲也っぽい感じ。そもそも『ルパン三世』の世界観にそぐわない。

木暮:3年間も不二子を探していたっていうだけで古いタイプか。それにしてもどこを探していたんだ?(笑)

川口:不二子と殺し屋チームを組んで“黄金のコンビ”と呼ばれていた時期を1話使って描いてほしかったな。

木暮:その不二子が“ルパンに化けている”というのが面白い。その化けの皮を剥いだところでプーンと再会するわけだろ? 結構インパクトのある再会シーンだぞ。

川口:確かに、そのことがプーンをさらに頑《かたく》なにさせたのかもしれない。

木暮:そして、今回も“山小屋”に立て籠もる展開──これはあえてそうしたのかな?

川口:前回の派手な展開と対照的だよな。即席の武器を作るところは同じなんだけど。原作だとプーンの仲間のキャップは竹槍で串刺しにされるんだ。

木暮:石をぶつけられるんじゃなくて?

川口:そうそう。そういう意味で、モンキー・パンチと高畑・宮崎コンビの相性が“限界を超えた”瞬間だったのかもしれない。

木暮:なるほど。と同時に不二子とルパンの関係の深化もここが限界だったのかもしれないな。

川口:ゴーゴークラブ──これも古いなぁ──で踊った後はいつもの展開だもんね。

木暮:つまり、この二人の関係性が永遠に固定した瞬間だったんじゃないかな?

作中のテキスト:とても電子頭脳の機密書類には見えない


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