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『男はつらいよ44 寅次郎の告白』と『ルパン三世』1-18「美人コンテストをマークせよ」/世文見聞録44

今週も川口世文と木暮林太郎が、彼らの大好物の「ビッグストーリー」である『男はつらいよ』シリーズと『ルパン三世シリーズ』について語ります。

○第44作『男はつらいよ 寅次郎の告白』(前半部)

木暮林太郎:夢のシーンがまたなくなって、寅さんのナレーションではじまる。相変わらず江戸川は出てこないけど、川のシーンがあるだけで何となく落ち着くな。

川口世文:
今回は最初の約30分での“区切り”が最近珍しいほどすっきりしている。

木暮:泉が上京して“山野楽器”への就職活動がうまく行かず、名古屋に帰るまで?

川口:寅も帰ってくるし、商売の“さくら”を探して三平を口説いたり、社長とケンカしたり、いろいろ展開はあるけれど、妙に穏やかな30分になっている。

木暮:高卒での就活は大変だけど、のちに家出するほどの泉の切迫さはそこでは描かれていないってことだな。

川口:母親の新しい恋人“北野のおじさん”が登場するのはそのあとだしね。それはかなり意図的で、最初の30分は独立した短い話にしたかったのかもな。

木暮:それはそれで、初期の“まくら”の話があったころの構成に似ている。

川口:そうなんだよ。かつてのパターンを彷彿とさせるんだ。しかも昔は明確に寅が主役の“二本立て”だったのが、ここでは完全に後藤久美子演じる及川泉が主役になっている。

木暮:「泉はつらいよ」になっちゃった(笑)。

川口:そうそう。大学生になった満男よりも寅よりも、「泉がつらい」(笑)。

木暮:マドンナ側の話をどんどん掘り下げていくと結局そういうことになるわけだ。

川口:そうなのかもしれないな。『男はつらいよ』がどんどん『女がつらいよ』に変質してしまう。だから、一部の例外を除いて、それは意図的に避けられてきたんじゃないだろうか?

木暮:その例外がリリーと泉だったというわけか──。

○『ルパン三世パート1』第18話

木暮林太郎:この話はルパンファミリーによる強奪作戦として最高の成功例といっていいんじゃないか?

川口世文:いつになくルパンが冷静なのがいいな。わざわざ「ミスグローバルコンテスト」を隠れ蓑にして、盗まれた名画のオークションを実施する意味まできちんと解説してくれる。

木暮:ネットオークションがない時代だからなぁ。

川口:ただし、名画泥棒スミスのほうも細かいところまではルパンに探らせない。

木暮:そこでテレビの「宇宙中継」クルーに化けるっていうわけね。五エ門が大暴れした最中に撮ったビデオを検証するシーンもなかなか知能犯っぽくてよかった。

川口:五エ門の使い方を、ようやく作り手もルパンもつかんだって気がするんだよな。飛行機から飛び降りて、あのままパラシュートも使わずに着地するんじゃないかとハラハラしたりもしたけど(笑)。

木暮:警察官に変装してうまく銭形を船から遠ざけたりもするしな。

川口:つまり、五エ門は派手に立ち回ることで“ミスディレクション”を起こす名手なんだよ。チームにおける基本スタンスは“遊撃手”なんだ。

木暮:なるほどね。それに加えて不二子も今回ばかりは「ルパンの裏をかかない方がいい」と学んだんじゃないかな? その分、活躍が大人しくはなっちゃったけど。

川口:不二子も不二子で別の“遊撃手”キャラだからな。

木暮:今回は五エ門の見せ場を作ったわけだから、次回以降は不二子の見せ場が見たいな。

川口:残り5話でそんな話あったかな? 乞うご期待!

木暮:もっとも当の不二子が大事な“教訓”をすっかり忘れてしまう可能性もありそうだけどな。

川口:むしろその可能性のほうが高そうだ(笑)。

珍しくシトロエンに乗る
センスのない予告状
五エ門大活躍
珍しく大収穫


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