『男はつらいよ39 寅次郎物語』と『ルパン三世』1-13「タイムマシンに気をつけろ!」/世文見聞録39
今週も川口世文と木暮林太郎が、彼らの大好物の「ビッグストーリー」である『男はつらいよ』シリーズと『ルパン三世シリーズ』について語ります。
※BSテレ東の放送順に合わせているので、第38作は後日取り上げます。
○第39作『男はつらいよ 寅次郎物語』(前半部)
川口世文:今回の夢のシーンは「過去の記憶」で、のちに小説やドラマになった『少年寅次郎』を描いている。
木暮林太郎:今回も冒頭では“帰ってこない”。寅さんの“柴又滞在率”がどんどん下がっているんだよな。完全にロードムービー、あるいは“観光映画”の雰囲気。
川口:自分が「名付け親」であり、「過去の自分」っぽくもある“秀吉”との旅を描いて、サブタイトルが『寅次郎物語』というのも意味が深い。
木暮:話はほぼノンストップで、秀吉が郡山から上京してきて、みんなが寅さんの帰りを待ち望むパターンだ。
川口:「蛇《じゃ》の道はヘビ」で“小岩のポンシュウ”に相談に行く。これはあけみを探したときと同じだな。
木暮:これまでだったら、行き先もわからずに飛び出すはずが、きちんと段取りを踏んでいる。この件に限らず今回の寅さんは最後まであまりドタバタしないんだよ。終始“男気《おとこぎ》”に溢れている。
川口:御前様にも「仏様は愚者を愛する」なんていわれるしな。だからなのか、旅先で出会ったマドンナと一晩で“疑似家族”を作ってしまうことが妙に納得できた。
木暮:あれはなかなかスピード感のある展開だった──まあ、別れ別れになるスピードも速かったけど。
川口:五月みどりだって十分にマドンナになりうる存在感だから、“二兎”を追う展開もありだったと思うけど、寅の“男気”を描くことを優先させたってことだな。
木暮:“二兎”を追ったら“二部作”になっちゃうし(笑)。ところで、今さら気づいたのは、ずいぶん前から誰かの“死”が物語の発端になるパターンが多いってことだ。そのことが全体のトーンにかなり影響していないか?
川口:なるほど。テキヤ仲間が死んだり、マドンナの家族が死んだり、シリーズ後半の裏テーマかもしれない。それを一気に若返らせたのが満男の存在だったのかな?
○『ルパン三世パート1』第13話
川口世文:“タイムパラドックス”について突っ込むのはやめよう。今回の話はそれ以外で十分語れる気がする。
木暮林太郎:そういいたい気持ちはよくわかる。むしろ“極限状態”に置かれたルパンファミリーの描き方に目を向けるべきってことだろ?
川口:そういう意味でいちばん意外だったのは“水槽”の使い方だった。やけに目立つ描き方をしているなと思ったら、ルパンがその後ろに隠れて消えたように見せかけて、次元と五エ門の気持ちを“試す”シーンになる。
木暮:確かにそういう使い方が決まっていなかったら、あの作画は相当な無駄だったもんな(笑)。おれは魔毛が不二子を消したシーンが面白かった。
川口:不二子とルパンの結婚式そのものじゃなくて?
木暮:一瞬、不二子の祖先を殺したんじゃないかと思わせて、実は過去の時代にさらっただけだった。そして、彼女を殺さなかったことが魔毛の致命的なミスになる。
川口:確かにそのことがルパンの作戦に逆に利用されるんだよな、「江戸時代」というキーワードといっしょに。
木暮:とはいえ、アルセーヌ・ルパンの祖父さんがミレーヌ・ルパンと結婚した“川向こうの次郎吉”だったというのはちょっとやりすぎだったけどな。あれに関してルパンは魔毛にウソをつけなかったはずだろ?
川口:最初からああいう作戦だったんだから、全部でっち上げだと思うよ。
木暮:だとしたら魔毛はかなり脇が甘い(笑)、どの時代の先祖を殺すか詳しく調査をしていなかったのか……。
川口:SF作家で“ヒューゴー賞”獲っているのにな。
木暮:それ以外で気になったのは、次元の“コート姿”。
川口:ルパンは相変わらず“防寒着”を着ないのに。一方「黄金像」を盗む仕事では、真っ赤なセーター(?)を着ているシーンが珍しかったな。
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