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『男はつらいよ41 寅次郎心の旅路』と『ルパン三世』1-15「ルパンを捕まえてヨーロッパへ行こう」/世文見聞録41

今週も川口世文と木暮林太郎が、彼らの大好物の「ビッグストーリー」である『男はつらいよ』シリーズと『ルパン三世シリーズ』について語ります。

○第41作『男はつらいよ 寅次郎心の旅路』(前半部)

木暮林太郎:寅さんが海外に行くっていうのは、ジェームズ・ボンドが宇宙に行くようなものなんだろうね──ある意味、究極の旅。

川口世文:確かにそうだな。ジェームズ・ボンドは11作目の『ムーンレイカー』で宇宙に行くけど、こちらは実に41作目。とはいえシリーズ開始からの年月でいうと意外と差がない。

木暮:タイトル前のシーンで、宿屋で雨に降りこめられて風邪を引いた寅さんがさくらから届いた手紙を読んでいるのが妙に現実的で、シリーズの初期を思わせるのは、今回の作品は後半こそが“夢”だったからかもなぁ。

川口:観客は宣伝や予告編で寅さんがウィーンに“行く”ことがわかって観ているのに、わざわざていねいに伏線を張っているのが面白いんだ。

木暮:例えば?

川口:博に「ヨーロッパでも行くか?」といわせたり、鉄道自殺未遂のシーンで「ヨーロッパ家具輸入フェア」の街宣車を走らせたり、旅館で柄本明がダンスをしたり。何の事前情報もなく見たという、うらやましい人には、それからはアッと驚く展開だっただろうけど……。

木暮:そういう人は本当に“湯布院《ゆふいん》”に行くと思って観ていたのかもな(笑)。さくらが寅さんが本当にウィーンに行ったのかわからずにヤキモキするのも、“ていねいな”描写のうちに入るな。

川口:トイレットペーパーの“手紙”を受け取ってようやく納得する。すでに答えを知っている観客に、わざとそういうシーンを見せる“ズレ”の面白さは確実にある。

木暮:それと“地球儀”の登場には驚いた。あれはいつか寅さんが満男のお祝いに贈ったものだよな?

川口:そうそう。競輪で「万車券」を当ててパスポートを作った話もこれまたありそうな設定で面白かった。

○『ルパン三世パート1』第15話

川口世文:冒頭で銭形が警視総監から「世界警察会議ヨーロッパ大会」への出席を勧められる。ルパンの「予告」に対応中の彼は、ルパンを逮捕したのち会議にも行くと宣言をする。その会話をルパン自身が読唇術で読み取っている──ここまではいい。

木暮林太郎:「金満《きんまん》」という男の黄金の胸像は実にセンスが悪いな──時価三億円だったとしても。

川口:冒頭の会話を聞いた上で、ルパンがあえてその胸像を狙う予告を出したのだとしたら、もっと筋が通っていた気がするんだけど。

木暮:どういうこと?

川口:つまり、最初から胸像はルパンが“捕まる”ためだけ獲物で、大して欲しいものでなかった──そういう設定のほうが納得できた。

木暮:ルパンが捕まれば銭形がヨーロッパに行って都合がいいといい出したのは不二子だけど、それをルパン自身が発案していたほうが面白かったってことだな?

川口:不二子がいい出すのもそれはそれで二人の関係を考えると皮肉で面白いんだけど、それからあと、ルパンが味方まで騙している理由がよくわからないんだ。

木暮:あれは味方というより、視聴者をミスディレクションしているからだろ?

川口:まあ、それはそうだろう。一方で一回目の作戦に比べて、二回目はかなり緻密なチームプレイを考えて、防空壕の通路を使って、本気で盗もうとしていたように見える。ところがその前に酔っ払いに化けて、留置場に“七つ道具”を仕掛けるシーンも見せているから、彼の真意がわからない。

木暮:きっとルパンも防空壕が本当に罠かどうかわからなかったから、あくまであれは“保険”だったんだよ。

川口:その解釈が妥当だな。でもしっくりこない(笑)。

作中のテキスト:日付は1971年12月20日
これも「キービジュアル」的なシーン


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