『男はつらいよ42 ぼくの伯父さん』と『ルパン三世』1-16「宝石横取り作戦」/世文見聞録42
今週も川口世文と木暮林太郎が、彼らの大好物の「ビッグストーリー」である『男はつらいよ』シリーズと『ルパン三世シリーズ』について語ります。
○第42作『男はつらいよ ぼくの伯父さん』(前半部)
川口世文:彼自身のナレーションでいよいよ「満男シリーズ」がはじまった。
木暮林太郎:寅さんが冒頭で帰ってこないことにはずいぶん慣れてきていたし、「あけみシリーズ」もあったからさほど違和感がない。ただ、寅さんが“矢切の渡し”でやってきたのは面白かった──真打ち登場って感じで。
川口:観客だけでなく、くるまやの面々も「待ってました!」って感じになるんだよな。
木暮:タコ社長だけが他人事で何とも呑気なのがいい。
川口:「どぜう屋」で満男と酒を酌み交わす寅の感慨深い表情が、渥美清自身の気持ちの表れのような気がして、ほぼ一年間付き合ってきたおれたちでも共感できる。
木暮:この時点でシリーズ開始20年か。第1作から見続けてきた観客の気持ちも少しは想像できるな。それにしてもだ、“初代満男”があのままつづいていたら「満男シリーズ」はどうなっていたのかな?
川口:そもそも「満男シリーズ」があったかどうかも怪しいだろうな。それこそ40作目あたりで完結させていたんじゃないだろうか?
木暮:後藤久美子とのバランスが成立しないもんな。でも、“初代満男”だったら、こんなにナイーブな満男にはならず、初期のバカバカしさが復活したかもしれない。
川口:それは神のみぞ知る、だな(笑)。
木暮:寅が満男にお土産として持ってきて、それを源公が1000円で買った「エジソンバンド」なんて本当にバカバカしかったんだけどなぁ。
川口:今回は寅と満男がへべれけになって帰ってくるまで約30分。寅が満男をしっかり“評価”してやっていたのが周囲には伝わらなかったのが残念だ。
木暮:仕方ないよ。未成年なのに、あんなに酒を飲ませちゃったんだから、話が丸く収まるわけがない(笑)。
○『ルパン三世パート1』第16話
川口世文:オープニングが変わって「Aプロダクション演出グループ」がついに最前面に出てきた。
木暮林太郎:実際、中盤の展開、不二子の赤い飛行艇やルパンの折り畳み式モーターハングライダーのシーンはいかにもって感じの演出だったからな。
川口:ただ、前半はかなりキャラクターがブレている。ビーバーの手下30人にも囲まれて、次元はまったく気づかずに決行しようとするし、密輸現場で30億円のダイヤ強奪を諦めたのはルパンの作戦かと思いきや、不二子に焚きつけられるまで、次の手を打つ気にならない。
木暮:キャラがブレていないのは不二子だけか(笑)。金庫の中身だけじゃなく、店の宝石も全部盗めと焚きつけて13分も遅れが生じる。不二子の貪欲さだけはブレていないんだ。それにしてもバキュームカーが何なのか、今じゃ知らない人が多いだろうな?
川口:そのくせルパンのフィアットは自動車電話を完備していて、いったいいつの時代なのかよくわからない。
木暮:折り畳み式モーターハングライダーは『エメラルドの秘密』で出てきたものの改良版なのかな?
川口:次元が一人で背負えるサイズっていうのが凄い。おまけにロープを発射する銛《もり》までついているんだから、魔法のリュックだよ。
木暮:これっきり出てこないんだろうか?
川口:さあ、記憶にないな。便利すぎてNGなのかも。
木暮:終盤で小屋に籠るというのはこれまでにもあったパターンだけど、今回がいちばん豪快な脱出方法だな。
川口:銭形が一人だけになっても執念深く追いかけてきて、結局、最後はルパンたちに逆転される展開も典型的なパターンだ。
木暮:『ロード・ランナー』とか『トムとジェリー』っぽい。完全に「大隅ルパン」は払拭されたな。
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