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人は無気力状態でマフィンを焼くと、犬の毛に気づかないんだなぁ。

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おそらく年齢による不調である「無気力」状態が続く中、米粉のマフィンを焼いた。それも、朝、起き抜けにだ。

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私は今、“米粉ナチュラルおやつアドバイザー”になろうとしている。アレルギーを持つお子さんがいる人や、お菓子教室を開きたい人が多く受ける講座だ。がしかし、私には子どももいないし目的もない。ただただ、「米粉で菓子を焼ける人」になりたいだけである。

なぜそういう気分になったのかは別で話すとして、とにかく我ながら、モチベーションのありかがわからない。もしかして、もしかして、ただ特技が欲しいだけかもしれない。

だって、唯一の特技だったエッセイ漫画は、今ではもう特技じゃないからだ。漫画家は漫画描けて当たり前である。

小学校の頃に習った和太鼓を、いまだに特技だと言える私でもだ。ほぼ全部意味がわからないアインシュタインの相対性理論を、東大生の前で「面白いよね」と言える私でもだ。見かねた夫に「そういう事は言わない方がいい」と諭される私でもだ。

特技は漫画です、とは口が裂けたって言えない。私の何万倍も得意な人が山ほどいるんだと、これほど知ってる分野はない。

石原さとみさんの前で「私は美人です」と言えという方が、まだできる。

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まぁとにかく、不調ながらも4日かけて課題のマフィンを焼いた。

1日目はレッスン動画を見た。2日目は道具と材料を並べた。3日目はそれを眺めた。4日目はついに混ぜて焼いた。オンラインレッスンなので、それを撮って先生に送れば、まずは完了である。

混ぜて焼いた過程の記憶が、ほとんどない。そりゃあそうだ。無気力だし起き抜けだしで、気分は幽霊だった。とても簡単なレシピを先生が用意して下さったおかげで、幽霊にも一応マフィンが焼けたってだけである。

出来上がりをよくよく見れば、生地を流し込んだ台紙が2枚くっついたままだった。それも、6個中4個そうだった。むしろなぜ2個は正確にはがせたんだろうか。

でもいい。別に、そんなものは焼けた後に剥がせば良いのだ。その後に写真を撮れば、先生にはバレない。私は全部をちゃんと直して、白い皿に並べて写真を撮った。

これが先生との初めてのチャットである。お手をわずらわせぬよう、明るく見やすい写真を送りたい。そして「おおがさんは話のわかる人だな。何か接客業でもやってらっしゃるのかしら?」と思われたい。

朝の眩しい光の中で、渾身の1枚を撮り送った。

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よりによって、前っつらに持ってきた2個に2個とも犬の毛がついていた事に気づいたのは、その後だ。

先生との初めてのやり取りは、「犬の毛をマフィンにくっつけたおおがさん」とのやり取りになってしまったのである。

…続く。



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