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リニューアル後の変化は?|Tokyo Art Research Lab ウェブサイト 2023年度 活用レポート

Tokyo Art Research Lab(TARL)のウェブサイト(https://tarl.jp/)は、「東京アートポイント計画」が運営する、アートプロジェクトに関連する資料やプロジェクト、担い手となる人々の情報が集まったプラットフォームです。

TARLウェブサイトは2022年から2023年にかけて大幅なリニューアルを行い、ユーザーが直感的に各コンテンツを活用できる構成を目指し運用しています。

本記事では、TARLウェブサイトへのアクセス数について2023年度の傾向を紹介します。主にGoogle Analytics4(GA4)の分析をもと2022年度(2022年4月~2023年3月)と2023年度(2023年4月~2024年3月)の実績を比較しながら振り返ります。どんな記事に人気があったのか、どのような活用方法が多いのか、ウェブサイトをめぐる参考にしてみてください。


1.アクセス数:リニューアルを経て増加傾向に

はじめに、TARLウェブサイトへのアクセス数を比較してみました。

  • ユーザー数(1秒以上画面を表示したユーザーの合計数)
    [2022]51,209件 → [2023]100,923件 [前年比]197.0%

  • ページビュー数(表示された回数の合計)
    [2022]161,664件 → [2023]218,165件 [前年比]134.9%

  • 平均セッション時間(ユーザーが訪問してから離脱するまでの時間)
    [2022]1分32秒 → [2023]1分43秒 [前年比]117.0%

2023年度の特徴として、ユーザー数とページビュー数が大幅に増加したことが挙げられます。セッション時間も増加していることから、ウェブサイトを訪れた後に内容を丁寧にご覧いただいたり、さまざまなページを回遊したユーザーが増えているようです。訪問したページからそのまま離脱したユーザーの割合を示す直帰率も、71.78%[2022]から58.03%[2023]に減少していました。

*備考:各数値には、クロール(自動で行われる調査・情報収集のボット)などの影響も含むため、あくまで目安として検証しています。

リニューアルの反響が徐々に数値として現れてきたことや、後述する人気コンテンツの存在が、今回のアクセス数増加に繋がっているようです。
詳しいTARLウェブサイトの使い方、リニューアルのプロセスやコラムをまとめたコンセプトブックも公開しているので、ぜひご覧ください。

2.活用方法の特徴:Google検索から「ひとびと」へのアクセスが上位に

総務省の「情報通信白書令和4年版」によると、「個人」における端末別のインターネット利用率は、スマートフォンが68.5%、パソコンが48.1%と、スマホの方が多い割合になっています。

一方で、TARLウェブサイトのユーザーが閲覧に用いているデバイスを比べると、デスクトップ(パソコン)が約57.6%、スマートフォンが約42.0%となっており、パソコンからのアクセスが多いようです。

ユーザーの表示環境の割合や頻度を示したグラフと表
ユーザー環境の詳細:デバイスカテゴリ(Google Analytics4より)

また、Google検索によってユーザーが流入したページを上位25件まで見てみると、手話やろう文化にまつわるアートプロジェクト「めとてラボ」や「アートプロジェクトの担い手のための手話講座」の関係者が多く、近年の手話やろう文化への関心の高さが浮かび上がる結果となりました。

Google検索で流入したクリック数の割合や頻度を示したグラフと表
Googleのオーガニック検索のクリック数(Google Analytics4より)
クリック数上位25件の割合を示したグラフ。ひとびと関連ページが85%(21件)、アートプロジェクト関連ページが7%(2件)、TARLが6%(1件)、東京アートポイント計画関連が2%(1件)
Googleのオーガニック検索のクリック数:上位25件の割合(筆者作成)

他にも、全体を通して「ひとびと」に掲載したページへのアクセスが多く、さまざまな専門性をもつ方々のポートフォリオサイトとしての機能が大きいことがわかります。さらには、「アートプロジェクト」「アートプロジェクトとは」の検索も多く、アートプロジェクトそのものの関心からTARLウェブサイトを訪れるユーザーも多いようです。

3.ページビュー数のランキング:手話講座が人気

各ページのビュー数やユーザー数について、アクセス数上位25ページを挙げると、「ろう者の感覚を知る、手話を体験する2023」の参加者募集ページへの流入が2023年8月25日前後に急増しています。

各ページの表示回数の割合や頻度を示したグラフと表
表示回数の推移:ページタイトルとスクリーンクラス(Google Analytics4より)
ページの表示回数上位25件の割合を示したグラフ。TARLトップページが12%(1件)、手話講座の参加募集ページが8%(1件)、ひとびとのトップページが8%(1件)、資料室のトップページが7%(1件)、プロジェクトのトップページが5%(1件)、東京アートポイント計画の日英ページが4%(2件)、そのほか個別コンテンツが30%(16件)、TARLについてのページが2%(1件)、解析不明ページが24%(1件)
表示回数:上位25件の割合(筆者作成)

この手話講座は例年人気を博しており、情報公開から時間を空けずに定員に達することが多い企画です。2023年度も、8月23日に参加者募集を開始し、8月25日には定員に達したため募集を締め切っていますが、この短期間に5000以上にのぼるビュー数が記録されており、その注目度が表れた結果となりました。

ほかにも「ひとびと」「資料室」「プロジェクト」の表示回数はいずれも高いほか、「東京アートポイント計画について」へのアクセスも高い割合を占めています。TARLウェブサイトが掲げる「3つの軸」の活用や、その運営母体である東京アートポイント計画への関心の高さが浮かび上がりました。

4.資料のダウンロード数:研究・現場からのニーズの高まり

資料のダウンロード数を比較すると、最も多いのは2022年度末に発行した『しゃべりながら観る』へのアクセスでした。続いて、先述の手話講座に関連して発行した『相手から見たときの指文字/自分から見たときの指文字』の表、ウェブサイトをつくるためのガイドブック『アートプロジェクトのためのウェブサイト制作 コ・クリエイションの手引き』へのアクセス数が続いています。

ダウンロード数のカウントの推移:ページタイトルとスクリーンクラス(Google Analytics4より)

さらには、アートプロジェクトの歴史をまとめた冊子『日本型アートプロジェクトの歴史と現在』や、アートプロジェクトの評価にまつわる『アートプロジェクトがつむぐ縁のはなし』、ノウハウや基礎知識をまとめた『アートプロジェクトの現場で使える27の技術』などのアクセス数も多く、アートプロジェクトをめぐる言説や評価への研究・現場それぞれのニーズが高いようでした。

5.これからのウェブサイト運用について

今後も、さまざまなニーズやユーザビリティを検証しながら、TARLウェブサイトの更新を続けていきます。新規企画のみならず、これまでに「東京アートポイント計画」などで実施してきたプログラムのアーカイブにも力を入れ、より多くの方が活用できるプラットフォームとして機能を拡充します。ぜひ、今後もご注目ください。

2024年5月現在の公開数を表した図。プロジェクトが133、ひとびとが369、資料室が328
2024年5月現在の各カテゴリー登録数

執筆:櫻井駿介(アーツカウンシル東京 プログラムオフィサー)