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STARS展:現代美術のスターたち―日本から世界へ@森美(1月3日まで)に行ってきました。(奈良美智レビュー少し多め)

日本拠点で、現代アートを牽引する6人の作品がさくっと俯瞰できるグループ展。現代アニメアートに影響を与える村上隆。ものの素材にフィーチャーした李禹煥。水玉アート、模様アートなどキャラクターアートの草間彌生。デジタル数字をアート化した宮島達男。総合演出的アートの杉本博司。ロックな女子の奈良美智。大好きな奈良美智を多めにつらつらと感想を書いていきます。時間無い方は、目次機能で他の作家を飛ばして、奈良美智だけでも読んで帰ってもらえると筆者は喜びます。

▼館長による紹介動画(16分)

作品リスト

村上 隆

アーティストというより、総監督的な立ち位置で分業で作品を仕上げるイメージです。巨大なオブジェだったり、巨大な壁画だったり、分業無くしては、この巨大な現代アートは成り立たないのかなと。作品は、キャラクター絵画だったり、立体化されたフィギュアだったり、森美術館とは非常に相性がいい作家さんです。また、六本木ヒルズの前に、「お花の親子」というオブジェ(2021年5月末ごろまで)が見られます。

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李禹煥(リ・ウファン)

「もの派」と言われる石やガラス、鉄材、綿、紙などを使ったものの素材を生かした1960年代から始まったひとつの芸術の流れ。その流れを牽引したのがこの李禹煥。今回もガラスの上に落とした石など、「もの」の作品が並びます。「和」か「洋」といったら、「和」を。「静」か「動」と言ったら「静」を。韓国生まれの李禹煥なので、やはり東洋人の血が作り出す空気感。日本庭園の石庭をリマインドさせます。

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草間彌生

彌生ちゃんの感性はすごいですね。水玉や模様アート。主張が少なく場所を選ばないアートかと思います。水玉のかぼちゃと言えばと、共通言語としてわかると言えばわかるのですが、個々の作品というより、キャラクターが一人歩きしていくところが、現代アートの特徴かもしれません。今回、《Infinity Mirrored Room ー 信濃の灯》という作品があるのですが、単純な万華鏡の効果を使っていてよかったです。必見です。

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宮島達男

原美術館や、現代美術館の常設で見られるような数字アート。よくもまあ数字をモチーフに、これだけバリエーションを作れるなといつも関心します。数字だけに可能性は無限大なんでしょうか。今回も、その例に漏れずそういった作品が並びます。《「時の海—東北」プロジェクト(2020 東京)》という作品では、継続的に続けられている東日本大震災犠牲者の鎮魂のための最新作も展示されています。宮島達男が気になった方は千葉で12月13日まで大規模な個展も行われています。

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杉本博司

写真が有名のようですが、やはりトータル芸術というか。演出芸術とか、ですね。その集大成が、自身が2017年設立した「江之浦測候所」ではないかと思っています。今回も圧巻は、その「江之浦測候所」の動画《時間の庭のひとりごと》です。この動画を見るためにだけもう1回言ってもいいくらいです。下の動画はその動画ではありませんが、参考までに乗っけておきます。

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奈良美智

好きなアーティストは誰?って聞かれたら奈良美智って答えるようにするほど、大好きな作家。今回もロックで、癒される作品がたくさん展示されてました。せっかくのグループ展なので、今回の他のアーティストと比べてみましょう。

対 村上隆:キャラクターが今どきという点では一緒ですが、キャラがたってるという点ではやっぱ奈良美智ですかね。

対 草間弥生:模様アートやキャラと比べると。セリフがフィーチャーされ、メッセージ性があります。その内容もいちいちロックです。

対 李禹煥:セリフがない絵と対峙させてみます。普段ロックなキャラクターが黙っているというのも、むしろその無言の裏に隠されているものを勘繰ってしまいます。「和」の静けさより、「洋」を感じます。

対 宮島達男:数字を時に置き換えて、時間軸という見方をしてみます。1980年代の初期と比べても、画風的には今のところ、大きくは変わっていないと思います。ここのあたりは、宮島達男の作風、モチーフが変わらないのといい勝負かもしれません。

対 杉本博司:総合芸術的な観点からもみてみました。今回のアトリエが再現されている《Voyage of the Moon(Resting Moon) / Voyage of the Moon》のアトリエの中の空間デザインは、品川の原美術館の例の小部屋(時々、本人が動かしに来ているらしい)同様、現実のアトリエがそうであるように、永続的に変化があるアトリエの再現につながっているのかなと思いました。作品の周りを巡っている結界線も、「はいらないでねこ」とファンの心を鷲掴みにする気の配りようが心憎い演出でした。

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まとめ

STARS展の展覧会名の通り、アート界の巨星が集まりました。個人の回顧展ほど、ぐさっと刺さる展覧会ではないのですが、日本発の現代アートの流れの一部がさくっとわかる展覧会にはなってると思います。これ以上、作家を増やすと、個性が薄まってきてしまいますし、作家を減らして、作品を増やすと作家のバリエーションに欠けてしまったかもしれませし、バランス的にはちょうどいいのかなも思いました。また、こんな感じのSTARS展はまた違う作家でやってもいいもらいたいなと思いました。

皆さまのお気持ちは、チケット代、図録代とさせていただきます。