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変形性関節症(変形性股関節症、変形性膝関節症、棚障害)の鍼灸治療

疫学:関節部に慢性の退行性変化および増殖性変化が同時に起こり、関節が変形する病態。関節軟骨の摩耗・欠損・肥大・増殖のち骨棘形成に至る。また、滑膜の増生、関節包の肥厚、委縮、関節部の腫脹などが出現し、関節のこわばり、運動時痛、可動域制限、疼痛、軋轢音が見られる。X線像では骨棘形成、関節裂隙の狭小化・消失、嚢胞形成などが認められる。

原因:老化、過度な力学的ストレス、外傷、形態異常、代謝異常など。

一般的な治療法:理学療法、赤外線などの温熱療法、筋力強化、運動療法、装具療法、薬物療法(非ステロイド性消炎鎮痛剤など)などの保存療法が中心となる。著しい変形、機能障害を来す場合は関節固定術、関節形成術、骨切り術、人工関節置換術などが行われる。

当院の治療法:関節部の変形が激しい場合は手術が優先となります。しかし、変形が軽微で、医師から経過観察と告知された場合は、鍼灸が有効です。また、手術後に肩の痛みやこわばりが取れない場合や、予防的に筋肉をゆるめたい場合なども針治療は有効です。肩関節の場合は、肩関節を構成する筋肉のうち、最もコリが強い部分を中心に刺鍼します。痛む部位が漠然としていて、肩の奥が痛むようなケースは肩甲下筋が悪いことが多いです。肩の前中部表面が傷む場合は三角筋、肩後部表面が痛む場合は小円筋、大円筋、三角筋後部が悪いことが多いです。整形学的には棘上筋損傷が多いとされますが、実際には肩甲下筋と三角筋の損傷が多いようです。三角筋は収縮力が強いため、刺鍼時の痛みも強いです。股関節の場合は殿筋中心に刺鍼しますが、腸腰筋のコリが影響しているケースが多いため、罹患部が両側にある場合は、伏臥位と仰臥位の2コマ1セットか、側臥位2コマ1セットが必要です。しかし、股関節は重症であればあるほど、刺鍼後のダメージが大きいため、初診時は基本的に片側だけの刺鍼で様子を見ます。一般的には、施術後30分~24時間程度は、びっこを引いて歩く感じになりますので、心配な方は杖を持参されるか、誰かに迎えに来てもらうのがベストです。膝関節も主として関節を構成している筋肉へ刺鍼しますが、膝痛が長期にわたっている場合は、腰部や臀部の筋肉が強く委縮していることが多いため、下半身全体の治療が必要になる可能性があります。腸骨筋刺鍼は腰痛や股関節痛に劇的な変化をもたらす反面、刺鍼時の痛みが激烈であるため、耐えがたい場合は、ゆるめの刺激で回数を分けて治療するしかありません。この場合、ある程度症状が改善するまで半年~1年近くかかることもあります。特に、太っている患者の場合、体重を落とさない限り関節への負荷が減少しないため、完治しないことがあります。この場合、針治療はあくまで対症療法になります。リハビリとしての筋力トレーニングは、ある程度鍼治療で痛みが減ってから開始します。股関節痛や膝関節痛の場合は、リハビリとして、転倒しにくく、水圧が適度にかかる温水プールでの歩行や、トレッドミルなどの自動歩行器を自宅に導入し、ゆっくりと歩くことをお勧めします。

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